5.堅物キャラは大体スポ魂大好きマン
「と、言うわけで。謝礼として1000万シグ貰った」
「初めた日に1000万シグ稼ぐやつ出てくるとか想像してないやろうな運営…」
「もうそれでほとんどの装備買えるじゃん、ちょっとしたオプション付けれるレベル」
「って言っても装備は自分で作ればいいしなぁ。素材も自分で集めたい」
「ま、プレイスタイルにどうのこうのは言わんけど早く一緒にやれるまでは頑張ってほしいなぁ」
「それはモチのロンの助」
チャットアプリでグループ通話をしながら俺は一人で鍛冶師のノウハウを教えてくれるNPC【灼熱のガンテツ】という厨二病ネームバチバチマンを探していた
「あ、居た」
武器屋、防具屋、道具屋の後ろにある工房にガンテツのおっさんは居た、今も炉の中から金属を取り出してカンカンと心地よい音を鳴らしながら金属を打っている。おぉ、the職人って感じだが流石に上裸なのはやばいぜぇ…?打った時に跳ねてる金属片とか体に当たっただけで誇張なしで死ぬだろあんなの、え?灼熱っておっさん自体も灼熱なの?それとも精神的に灼熱的なガンテツさんなの?まぁ落ち着け…ふぅ…ここはかわいいけど熱心な幼女ムーブで寡黙そうなおっさんに一つの風を起こしてやるぜ
「あの…鍛冶師になりたくて」
「なんだ?ガキが何か用か?」
は?今言ったが?耳悪いんかこの小父さまは、ちゃんと人の話を聞きなさいって小さいときに親から習わなかったのか?頭の悪い俺でもわかるぞ
って危ない危ない、脳内で言葉の暴力を使って殴り飛ばしてしまう所だった
「鍛冶師になりたくて来ました!」
俺の顔をじっくりと覗いてきたと思ったらまた自分の叩いていた金属に視線を落として打ちながら一言だけ、まるでタバコがばれた運動部の奴に顧問の先生があまりの熱量で押されるかのような雰囲気で言った
「…ハンマーを取れ」
「はい!」
寡黙なジジイはそのまま金属を打って、俺にも打たせてをずっと繰り返していた。それから十分と少し経った頃、ジジイがとうとう重たそうな腰を上げて立ち上がると俺を見下ろす。ってかこのジジイクッソ身長たけぇな、2mはあるんじゃないか?ってほどの身長の高さだ
「ダメだダメだ!お前はまだ打ち方がなっちゃいない!そこの屑鉄でも使って打つ練習をしろ!」
『職業クエスト:ガンテツからの宿題を開始しますか? はい/いいえ』
「はい!」
そりゃ初めての鍛冶だぞ、うまくできるわけないだろ。手を抜いたわけじゃないがそりゃそうだろうなって感じの結果にプラスしてブチギレ気味で思っていることを言われると腹立つもんだ。絶対に見返してやる、このクソジジイの顔にハンマーめり込ませてやる…!
「あ、今なんか一瞬出てきたのにインベントリ開いたせいで何にも見れなんだ」
ウインドウの中のヘルプ画面を出してnewと書いてある鍛冶のヘルプを開いてみる
『製作スキル:鍛冶を使うコツ!熱くなった金属をよく見ると一部だけ違う色に変色している所があるぞ!そこを叩いてみると良いことがあるかも?』
ふむ、つまりは俺が叩くときに普通なところを叩いていたせいでガンテツのおっさんにダメだと一蹴されたわけだ、クソ。初見で見破っていたらどんな感じだったんだろうな…まぁ一回だけやってみるか…
ガンテツが指を指していた屑鉄を一度インベントリの中に突っ込んでからガンテツの使っている炉の横に放置された誰も使っていなさそうな炉を借りて金属を熱していく
『タイミング良く取り出してください』
おっと、ここでミニゲームか、俺の眼球の前あたりに魔法陣が出てきて色々と視覚を補助してくれているようだ、温度が見える上に恐らくちょうどいいタイミングでタンバリンのようなシャンという感じの音がしている。この何回もなっている音に合わせて…!
「今!」
やべ、少し早かったか?
『温度が下がる前に叩いてください』
えっと…どこが色が変わってるんだ?!見づら!いや、ほんとに何処だ!?鍛冶がむず過ぎる…!
キョロキョロと熱された鉄を見てもどこも変色していないようにしか見えない。おかしいぞ?一旦炉の中に戻すか
「フー…」
よし、落ち着け。出してすぐに色が違う場所を見つけて叩く…ほぼ反射ゲーだ。行ける、俺なら大丈夫…
「今!」
『nice!温度が下がる前に叩いてください』
熱されて赤くなった鉄の一部だけ緑色に光っていた。「ここだ」と叩こうと思った瞬間、緑の光が消えたのが見えた
「危ない…」
危うく低クオリティなものを作るところだったぜ…
そう思っていると突然腕をガンテツにがっしりと掴まれてそのままガンテツは炉に金属を入れた。
「見てられねぇな、今回の精錬には熱する時間が短すぎる。あれぐらいだったら取り出した瞬間に打たないとまた屑鉄に元通りだ」
「すみません…」
「良い、上手くいかなくても諦めないその心意気に応えてるだけだ」
少しだけ嬉しそうにガンテツは掴んでいた腕を離して炉の中をじっくりと見始めた。これはしっかりとタイミングを掴むチャンスだ。炉の中をしっかり見ておこう
まだかまだかと待っていると突然ガンテツが大きな声で俺に指示を出し始めた
「今!」
「はい!」
『perfect!温度が下がる前に叩いてください』
「早く打て!」
「はい!」
今回はすぐに緑の光が見つかった、心なしか大きかった気がするな。やっぱりタイミングが良いとその分光が大きくなるとかそこら辺だろうか
「よし、良い感じだ」
「師匠…!」
はい、スポ魂漫画みたいな展開の出来上がり。好感度爆上がり確定
『職業クエスト:ガンテツからの宿題をクリアしました』
「よし、少しはマシな精錬が出来るようになったじゃねぇか」
「まだ師匠の手を借りてるようじゃダメです」
「ふん、上達への渇望は結構だがこういう時は素直に喜んでおけばいいんだ。お前みたいな子供にはな」
「はい!」
頭を優しくポンポンと叩いてまるで孫を見た時のおじいちゃんのような笑みをしている。いや、まぁ見た目が見た目だしな、孫みたいに優しくしてくれるなら結構なんだが…
「まずったな…こんなに職業クエストが長いとは…」
公式サイトによるとどうやら鍛冶師などの生産職は職業クエストが長く設定されているようでこの後も武器製作から防具作製まで、なんなら道具製作の一部まで鍛冶師は入るようで結構な長い時間の拘束が決定した
こんな時のための~?
キングクリムゾン…!
「はぁ…!はぁ…!」
「おう、こんなもんで良いだろ。それにしてもこの短時間でよく頑張ったな。本田」
「ありがとうございます…!」
はい、現在時刻2:30。職業クエストを始めてはや4時間が経った。そして初めて名前で呼んでくれたなこいつ…ふざけやがって…!
「いいか?武器も道具も防具も全部お前の魂を、熱を込めるんだ」
「はいぃ…!」
「工房の鍵は開けておく、いつでも作りに来い」
「ありがとうございます…!」
『職業クエスト:鍛冶師の始まりをクリアしました』
「あ~…どっと疲れた」
「少し休んでいけ」
「お言葉に甘えます」
ガンテツがまた金属を打つのを見ながら少し椅子の上でゆっくりとアイテム整理をする
「ふむ、このクエストで持ってたハンマーはそのまま鍛冶師の初心者装備としてもらえるわけか…」
装備…作るか
「さて…取り敢えず短剣が欲しいな…ワイバーンの件でステージによっては攻撃をほとんど食らわずに行けることが分かったし…」
「なに?ワイバーンだと?」
「師匠、どうかしたんですか?」
「いや、何もない。忘れてくれ…」
「…?はい」
なんか怪しいな…でもな~、変に聞いて地雷踏んだら怖いんだよな~…でも気になるし…ええい!姉の教訓を思い出せ!「やらないで後悔するよりやって後悔しろ」だ、やってやるぞ…なんせ俺は幼女の見た目をした師匠の弟子なんだから
「師匠、やっぱりワイバーンについて何かありますよね?」
「…ある男は鍛冶に出会い、嫁に出会い、子宝に恵まれた」
「…」
これは…クエストの予感がするな…もうこいつの顔を見るのも億劫になってきたがまぁクエストなら明日にでも進めればいいしな…取り敢えずフラグだけ建ててゆっくり探索しよう
「その男は鍛冶に必要な素材を取りに離れにある自分の家から北の、とある山に行った」
「男が欲しかった素材は無事に取れたが、その素材はワイバーンにとって大事な宝だったようでワイバーンの怒りを買った」
「男はそれに気付かずにそのまま帰宅していつものように妻と子供と話していたんだがよ。突然来客が来た」
「その来客は深くフードを被っててよ。正直怪しかった。だが妻と子供はそうは思わなかったらしい」
「結果から言うと客は妻と子供の中から俺を消した」
「…!!」
記憶を消したワイバーンをぶちのめせってことか?いや、待て早まるな。まだこいつは話す顔をしている。いっぱい息吸いこんでるもん。あ~それ以上吸ったらむせちゃうぞ、ほら言わんこっちゃない
「男はワイバーンの大切な物を奪った、だから男もワイバーンに大切な者を奪われた」
「頑張って一緒に居れば…」
「男は頑張ったさ、妻と子供に思い出してもらうために。だが記憶を失った二人から見ると「何故か自分たちのことを詳しく知っている他人」だ。男は愛する者達から異常に見られるその目に恐れて街に逃げるようにやってきたそうだ」
「その男は今何をしてるんですか?」
「どうだろうな…妻と子供の顔も忘れつつあるらしい。鍛冶は続けて、出来の良い弟子も出来たようだぞ?」
「そりゃよかった、その弟子がワイバーンをどうにかしてくれるかもしれないですね」
『ユニーククエスト:飛龍之財宝物語を開始しますか? はい/いいえ』
「その弟子ならやってくれるかもな…やってくれるか?」
「はい!任せてください!」
よし、ユニークってついてる時点でヤバいクエストなのはわかる。ってか多分だけど今の俺じゃ勝てないのは分かり切ってる、だって記憶を消す能力のあるワイバーンだぞ?明らかに上位種とかそこら辺だろ。どうしようかな、取り敢えず兄ちゃん達招集案件だろ?であとは…ギルドの野郎共にでも聞いていくか
「ワイバーンの元にはお前独りだけで行くんだぞ、奴らは警戒心が高いと聞く」
「マジですか…」
はい、失敗確定イベント来た。冷静に考えて絶対に勝てるわけないだろ、普通に無理だわ
「師匠、聞き込みがてらいろいろ準備が要るので時間がどれだけかかるかわからないです。それでもいいですか?」
「構わない。今までどれだけの年月耐えてきたと思ってる…だが、ならべく早くで頼む」
「全力を持ってやります」
取り敢えず周りのプレイヤーにでも聞き込みに行くか、先に兄弟からだけど
遊戯兄姉弟(5)
本田:記憶を消すワイバーンが存在する件について、誰か情報持ってる?無いならワイバーンの弱点
兄1:記憶を消すワイバーンとかネームド二つ名個体じゃね?ワイバーンの弱点は翼
兄2:後は喉を潰すとか?竜種はレベル差がある程度開くと叫びで体力削られるらしい
姉1:目を潰すのはNG行動って有名だよね、なんか暴れるから余計に倒しにくくなるらしいよ
兄3:記憶消去とか属性対策云々の話じゃなくない?
本田:おっけ、取り敢えず死ぬのが確定したことだけは分かった
「深くは聞いてこない辺り流石兄ちゃん達だぜ…事情を分かってくれてる気がする」
ギルドにでも行ってワイバーンについて少しだけ聞き込みをしようそうしよう
「おじさん!ワイバーンの弱点って何?」
「ん~?ワイバァ~ンン??なんだっけなぁ…ん~」
ダメだこの酔っ払い、ってか酒も飲めるのかこのゲーム。実際に酒を飲むと犯罪だがこのゲーム内だと未成年でも飲めてしまうのは中々危ない気がするがどうやって対処するつもりだ?
「嬢ちゃん、そいつに聞くのはあまりお勧めしないぜ…」
「??」
タバコを口にくわえた男が俺に話しかけてきた。これまたかっこいいアバターだことで。カウボーイイメージかな?まぁ、腰に掛けたピストルではなく背中に背負った弓矢なのが少し印象を崩しているがまぁなんというか…ださ…いややめとこう。今の俺は幼女だ。人様の外見を言える立場ではない
「ワイバーンの弱点は目だ。目を攻撃するとあいつらの動きは単調になる」
「へぇ~!でも私が目を潰して倒したときは暴れまわって大変だったんだけど…それは違うの?」
「…!嬢ちゃん、あのワイバーンを倒したのかい?」
「すもーるれっどわいばーん?って言うの倒した!」
「そりゃ凄い。ワイバーンは飛竜とも言われ、竜種だ。スモールのついた弱個体でも通常のモンスターとは格が違うんだよ?」
「ふ~ん、良く分かんないや」
「お嬢さん、あまりこいつらの言うことは信用しない方が良いよ。その男はワイバーンなんて倒したことないんだから」
どんどん話の信憑性の無さが露わになってるぞおっさん達よ。幼女相手に格好付けたいのは分かるが嘘は止めてくれ、誇張なしで死ぬ
「【マンマミア】さん!」
「少し精神年齢が下がったかい?向こうで話そうか」
「はい!」
あまりロールプレイ中にツッコむもんじゃないぜ姉御…俺が知ってる中で一番強そうでガチ勢っぽいあんたなら少しは知ってるだろうから情報料でチャラにしてやらんでもない
「で?ワイバーンはまだ早いと思うけどねぇ?」
「それが…クエストの成り行きでワイバーンと戦うことになりそうで…」
「へぇ…ユニークかい?」
ココは正直にそうですって言った方が良いか?助けてもらった恩を返すならいい気もするけど…
「いえ、お使いクエストでちょっと必要なものがあってそれの素材が必要で」
「なるほど…そうだねぇ。ドラゴニア山脈に居るのは大きく分けて三種類」
「氷結飛竜、紅飛竜、翠飛竜の三種」
「ふむ…」
「話すと長くなりそうだから要点をまとめた資料を送ってあげる」
「ありがとうございます。これ、情報料です」
まさか資料まで貰えるとは思わなかったな…一応多めに200万シグぐらいにしておいたが、少なすぎたか?
「やめな、こんな大金いらないよ。それにこれは投資でもあるんだ」
「投資?」
「【本田】、あんたはこのゲームではもう有名人だよ。このゲームではプレイヤーの知名度はNPCからの知名度にも繫がる、【本田】がこのゲームを面白くしてくれると思うんだ私は」
お洒落な銀製器に入ったワインを一気に飲み干して【マンマミア】は笑う。いや、このお姉さん馬鹿かっこいいじゃん。何そのコップ。え、明らか高いじゃんそれ。さっきのおっさん持ってた木のジョッキとはまた違う世界観の物じゃんそれ
「【本田】が起こしたことはこの世界の住民にも影響する。私はもっと楽しくて面白い世界が見たいんだ。理想の世界への投資、だからお金は要らない。その代わり私を…」
「…?」
「いや、まだ早いか」
「え、その焦らし方やばいですけど自覚あります?」
「ハハハ!ごめんね、そうだな…そのワイバーンの件から少ししたら…もしくは2週間後。答えは分かるよ」
「はぁ…?」
思わず気の抜けた声で返事してしまったが全く意味が分からん。え、意味深なこと言うNPCじゃないよなこの人…いやプレイヤーネームが頭の上に表示されてるしプレイヤーだよな。あと2週間後に何が待ってるんだ?
アルコールの入った飲み物について
ゲーム内でのアルコールの入った飲み物を飲もうとすると年齢確認がされます。そして飲んで問題を起こしても運営は責任を持ちませんと警告文が入ってしっかり二重の確認をしたうえで飲むことになる様です。何回か未成年者が飲んで問題にされかけましたが運営はしっかり年齢と問題を起こしても責任を取らないと確認していると跳ねのけてきたみたいです




