20. 記憶の塔に吊るされた男に忘却という月夜の審判を 1-3
また予約忘れてたバカがいるんですってね…2話投稿です(2/2)
「効いた…精神攻撃バリ効いた…効き過ぎた…」
『怖っ、トラウマもんじゃん』
「実際トラウマ見せられてたんだけどな…!」
ダメだ…あれを見たあとだとポジティブシンキングになれない。なんならマイナス思考加速して死にたくなってきた…
「結局、解放されたと思ったらフードの人は居なくなってたしな」
『もう1回挑みに行ったらまた見せられるのかな〜、試しに行ってきてよ』
「しばらくは無理〜…久々にスパオンやろうかな」
またあの歯車だらけの綺麗な景色を見たくなってきた
『私もやろうかな〜、久々にあの橋からの景色みたい』
「……」
マリーオをスパオンの世界で見ると今なら吐くな、確実に。時間ずらそ…
「今日はもう寝る…ログインしたら綺麗な景色のスクショでも送っといてくれ…」
もちろん嘘だ、1時間後ぐらいにログインしようと思っている
『分かった~、おやすみ』
「おん、おやすみ」
通話を切って俺は寝ないように椅子に座る
「…はぁ、心做しかあいつの声を聞くだけで少しビクビクしてんな…大丈夫になったのに」
「凌?」
たった一言、声を聞いただけでアレルギーのように鳥肌が全身を埋めつくし、震えが止まらない。動こうとすると思わず椅子から飛び起きて椅子を倒しても気にすることなく俺は動けなかった
「椅子、直さんの?」
「あ、いや…その…うん、直すところ」
俺はこの人を前にすると別に怒られる訳じゃない、ただ震えだけは止まらない
「あれ、模様替えした?」
「いや…あ、母さんは初めてか。少し前にした」
「ふーん…あ、お菓子とプレゼントあげる」
「あ、そこに置いといて」
「ん」
部屋の中央に置いている小さい折り畳み式のテーブルの上にビニール袋を置いて俺に手招きをしだした
「…?なに」
「こっち来てよ」
「えぇ…」
嫌々近づくと俺を見上げる形で母さんはびっくりしたのか背伸びし始めた
「目瞑って」
「…はい」
目を瞑ると首に何か変な感触があった
「はい、お母さんとはあちゃんから」
「…ありがとうございます」
「ハハ、良いのよ。なんかある?」
「特には」
「じゃ。あ、今月分はいつもの場所に置いてるって言っといて」
「…分かった」
心底面倒臭い
自分で父さんに言ってくれ、嫌だからって息子を伝言代わりに使わないでくれ、いきなり部屋に入ってこないでくれ、俺の視界に入ってこないでくれ、帰ってくるのか来ないのかハッキリしてくれ、言葉だけで済む要件だけならチャットアプリで済ませてくれ、変な贈り物を持ってこないでくれ、父さんの稼ぎをいつも家にいない母さんが管理してる理由を…なんでその男の所にいるのか教えてくれ
「じゃあね」
「はい」
手を振る母に手を振り返すと満足したのか嵐のように去って行った
「まさかこの時間に来るとはな…」
現在時刻は22:30。なるほど、父さんは仕事の疲れから寝ている時間帯を選んで来たのか
「いらんな…これ」
イルカのネックレス、どうせ水族館にでも行ってきたんだろう。例のはあちゃんとあだ名の付いた男の人と
「…はぁ」
とは言え、俺には捨てる勇気がない。ネックレスには使ってあげられないことを許して欲しい。せめて壁に掛けて装飾になってもらおう…
「もういいや、スパオンに行こ…」
久々にログインするせいでアカウント認証からやり直しだ。めんどくさいな…
「お~…やっぱりかっこいいな…」
高身長のキャラにしているこのゲームでは俺はペストマスクを着けて全身をローブに包んでいる
「この杖も、見た目装備なのにラスボス級に強い敵のレアドロって…翌々考えるとふざけてんな」
杖を突きながらコツコツと心地よい音を鳴らしながら例の橋に行くと、このゲーム1と言われている美しい景色が一面に広がっていた
「綺麗だな…」
「月も出てるしね」
「そうだな…って、まだ居たのかマリーオ」
「って言っても私がログインして5分後ぐらいだよ?寝るんじゃなかったの?」
視線を後ろに向けると大きなハットと目元だけを隠しているマスク、そして美しいと形容するしかない瞳
否が応でも思い出される記憶、先ほどの母さんとのエンカウントにプラスして出るはずもない嘔吐物を押さえるために口に手をやってしまう
「…!!」
反射的に視線を逸らして俺はすぐにきれいな景色を見て落ち着きを取り戻そうとしたが、心臓の音はデカくなるばかりだ
「…?どうかした?」
「いや…別に…」
「あ、思い出しちゃった…?」
少し声のトーンが下がった。今こいつはどんな顔をしているのだろうか
「今日は月が綺麗ですね〜?」
「一応聞いてやろう、どういう意味で言ってんだ?」
「そりゃもちろん、リベンジマッチだよ。今日は月が綺麗ですね?」
「このゲームの月は日によって形を変えないのは常識だぞ…?この月はずっと前から綺麗だ」
「ちぇっ、うまく躱されたか…どう?元気出た?」
「少しはな、それにしても思い出した告白の記憶のダメージを軽くするのに告白ってお前皮肉効きすぎだろ。もう少し患者に優しい精神科医になりなさい」
「私の就職先はお嫁さんだから」
「オエ~」
手を左右に振りながら「ないない」と答えるとマリーオはまた少し声色が変わった
「ん~…?私だけじゃないねぇ…何かあったの?」
「え…?何が」
「いや、本田が落ち込んでる理由。まぁトラウマ旅行は確かに落ち込むだろうけど…それだけじゃない、通話した時より声色が少し低い、スパオンに来る前に何かあったでしょ」
「こっわ、ガチ勢みたいな考察すんなよ…」
「へへへ。唐揚げと本田だけは少しの声色の変化も見極められるよ~?……で?何があったの?」
「別に?…母さんが間男と選んだプレゼント持って部屋に凸ってきただけだ」
「あ~。なるほどね」
何となく察してくれる辺り流石自称お姉さんって感じだ
「お母さん、あまり家に帰ってこないんでしょ?」
「そ、月1に家に帰ってくる10分以外は間男の所に居るんだよ。最悪だろ」
「まぁ、以前にも聞いてたし…人の家のことにあれこれは言うまい」
「知ってるか?親の性格は50%ぐらい遺伝するんだってよ」
「あ~…胡散臭いサイトでちょろっと見たような…」
「俺もいつかああなると思うと恋愛とかそっち方面の感情が分からなくなってたんだよ」
当たり前だ、結婚したとしても別の人と一緒に居るなんて、許されたことではない
俺にはその血が流れているんだ。怖い、もしそうなったら。父さんのような人を増やしたくない
「へ~、勿体ないね」
「それに、この劣等遺伝子は残したくはならないだろ」
「自分と自分を産んだ親に酷い言い様だ」
「産めって頼んでねぇよ…」
「そりゃそうだけど、ちょ〜っとひねくれ過ぎかな〜」
「もう嫌なんだよ…全て」
祖父母と会う時だけ一緒に居る両親も、それを当たり前のように振舞える俺達子供組も
「まぁまぁ、家族は自分で作れば幸せが待ってるから」
「俺は…!中学までその間男から物を貰って喜んでたんだ…!最低だよ…!」
そんなやつが幸せを願っていいはずがない
「最低って自分が思うなら最低で良いんじゃない?基準は人それぞれだし」
「最低に決まってるだろ、喜んでたんだぞ!?」
「でも今は、喜んでるようには見えないんだけど?」
「それは…」
それは父さんへの罪悪感が半端じゃなかったからだ
「人は変われる生き物なんだから、自分が好きになれるように変わろうよ」
「人はそう簡単には変わらない」
「特別にお姉さんが一緒に居て見守ってあげようじゃないか」
「近くにいるだけ無駄かもしれないぞ」
「私は無駄とか損得考えるよりいかに楽しめるかの快楽主義者だから」
こいつはこういう時は意見を変えない。諦めるとしよう
「さいですか…」
「さいですよ~?……あ、一緒に踊らな〜い?」
「えぇ…話の流れ断ち切るじゃん」
「自由に好きなことを。本田がいつも言ってることだよ。それに、嫌な流れは断ち切ってなんぼ!楽しいことや話をしよう!」
「………踊れないんだよなぁ」
俺の返事は聞いてないというようにマリーオが俺の手を取ってぐるぐると回り始めた
「お前も踊れないんかいっ!」
「へへへ~、でも元気出てくるでしょ?」
それっぽい動きをしながらマリーオと踊って少し心が晴れた気がした
「ごめん、いつも色々と悩み聞いてもらって」
「「ありがとう」が正解だね。それに良いのさ~、好きだから」
「……あっそ」
頭の中である言葉が思い浮かんだが口には出さないことにした
「はぁ…もう一回挑んでくるか~?」
「お!行ってこい行ってこい!記憶ワイバーンくんなんて倒しちゃえ〜」
「よし、行ってくるわ」
ログアウトしてそのままpossibleにログインする
「よし、もう1回…!」
〜1時間後〜
「もうヤダ…まぢむり…お薬効かない…」
「ネットのキモい病み女子みたいになってるよ?」
「あの攻撃されたら戦う気力ないなるって…」
「なんか〜…あれなのかもね、トラウマ回帰中に特定行動を取れば攻撃キャンセル行けるタイプかもね」
「あ〜…その考えはなかったな」
「まぁもう遅いし、明日にしようよ」
「そうだな、おやすみ」
「おやすみ〜」
同時にスチームパンクの世界からログアウトし、ゲーム機を頭から外してそのまま夢の世界へと入った
音がする。意識が完全に覚醒しきっていないため細かいことは分からないがスマホの振動と音だけは聞こえる
「ん……?」
アラームは設定していない、設定したとしてもアラームがなり始める10分前に起きてしまうせいで意味が無いからだ
となると考えられるのは誰かからの電話
「あい…も゛し゛も゛し゛ぃ…?」
『おはよ〜、私だよ私』
「新種の詐欺なら間に合ってます…」
『あ〜!ちょいちょい!竜胆様からの電話だよ?!』
こいつマジでマリーオに似てるんだよなこのテンション感…
「多分知らない人なんで…じゃ」
『あ〜も〜!待ってってば!』
「要件を早く言え、まだ朝の五時四十分だぞ…」
『その〜…今から家に来れないかな〜…なんt「あ、嫌です」』
『即答しないでよ〜!』
「なんでわざわざお前の家に行かんといかんのや…」
『いいから来て、大体六時半ぐらいには着くでしょ?それじゃ』
「え?おいちょっと待っ…!」
行くのが面倒臭いと言いたかったがスマホから竜胆の声がすることは無かった
「めんどくせぇ…!」
嫌々ながら制服に着替え、食卓の上に先に家を出るとだけ書いて家を出た。辺りがいつもより少し暗い
ふざけた時間帯に呼び出しやがって…!
「おい、お前な…」
「あ、来た〜?制服どこだっけ…」
また服でリビングを汚している様子、そしてパジャマが少し着崩れている。そしてどこか動きに生気が無い
「待て。お前、まだ熱あるだろ」
「…ない」
「少し間があったな?」
「……学校行かないと、怒られるから」
「あっそ、さしずめ俺を呼んだのは学校に行く時の杖代わりってところだな」
「へへ、バレたか」
少し申し訳なさそうな顔をして笑っている竜胆を見ると、こちらまでなにか申し訳なくなってくる
「…杖代わりにしたいならそう言え、変な気を使うな」
「え?良いの?」
「学校に行きたくない、勉強したくない派の俺からすると、そう思えるお前は凄い。こき使ってくれて構わない」
「え?なら私と付き合って」
「分かった」
「え?!マジで?!」
「どこに付き合えばいいんだ?買い物か?映画館か?」
「うわぁ…それは無いわ〜…人としてどうかと思うのだわ〜…」
「はよ着替えろ、学校行くんだろ」
散らばった服の中から制服を引っ張り出して竜胆に投げつける
「乙女の敵〜」
「敵も味方もあるか、俺は男女平等主義者だ。例え女性でも悪いと思ったら足掛けてこかすぐらいはする」
「それほんとに平等なの?」
「男でもこかすから平等なんだよ」
「何それわっかんない」
「分かんなくていい」
自分の部屋に入っていく竜胆を見守ってリビングの服を畳んでいく
「それにしてもこいつもマリーオも、警戒心もクソもないな…」
変な人に騙されそうでこっちが心配になってくる
「じゃじゃ~ん、どう?」
「普通」
「可愛いなとかいう所じゃないの普通は」
「制服だし見慣れたやつが着てたら別に可愛いも何もないだろ」
「それもそっか」
「じゃ、学校行くぞ。朝飯は?」
「食べた!」
「昼飯は…お前購買で買ってくる派だったか」
「そうなのだ!」
学生鞄をスッと渡してきながら玄関に向かっている辺り、中々図々しい
その後、登校したは良いものの、学校で気疲れも起こしたのか、体調が悪化した竜胆は早退し、俺は竜胆と登校したことでめんどくさい質問攻めにあったが全部「竜胆に聞け」で一蹴した
何度読み直しても今回は珍しくエアプかましてるマリーオさんですね
ヒロインは時に変わるんです…!(精一杯の言い訳)
いや…まぁ、いつか。いつかおまけみたいな感じで「誰と、どうなった未来」を書いてやりますよはい。恋愛ものは全員分ルートがある方が個人的に好きなので恋愛面はヒロインキャラ全員の未来が待ってます。恋愛面は…




