11.進んだ技術は簡単に制御できるものではない
「でね~?机の上に可愛いから書いてたら他の子が見て悲鳴上げやがったの!おかしくない?!」
「おかしいのはあんたの頭だわ、普通ぐちゃってる人間の成れ果てを机に書くやつは居ないの」
「でもさ~!勝手に人の机の落書き見ておいて勝手に悲鳴上げるのは良くないと思う…!」
「そもそもお前が人目に付きやすいところに書いてたのが悪いんだって」
「そうかな~…」
「そうそう、お主が悪いんじゃよ」
こいつ俺より年上だよな?という疑問も出てくるがそんなこと言ってたらこいつに何されるか知ったもんじゃない。普通にワイバーンが来る以前に俺の首が飛ぶ
「ってかさ、本田は今年で高校一年生でしょ?!友達出来た!?」
「そりゃね…このゲームめっちゃ進めてきてクソウザかったけど良い奴」
「へぇ~、その友達に興味あるな…」
「ほら、アマオンの【サンドウィッチ】だった子。お前も知ってるだろ」
「あ、やっぱり私たちが前線組なの知ってるんだ。本田が勧めたんでしょ?」
「まぁ…ほぼ俺が勧めたみたいなもんだな。現実で話したらその日に始めやがって…俺がやめたら速攻でやめたらしいけど」
「好かれてんね~、さぞ好青年だことで」
「どうだろうな」
【サンドウィッチ】は男アバターだったせいでマリーオサントネヨットの中では男性判定なんだろうな…残念、超ウザい女子だ
「サンドウィッチと一緒にPossibleやらなくて私と一緒で良いの?」
「前から言ってるじゃん、俺はリア友とやって喧嘩したらリアルでも空気がギスるのが嫌なんだって」
「そういえば言ってたな…たまには遊んでやればいいのに。アマオンの時楽しそうだったじゃん」
「それはまさかそいつとは思わなかったの!それに学校でもアマオンの話してウザ絡みしてくるんだよあいつ」
「良い友達じゃん」
「まぁな、ウザいのだけはマジでどうにかしてほしいけど」
俺はどうでもいい話をしながら鉱床を掘りながら着々と必要な鉱石を集めていく
「後どれぐらい?」
「あとは氷結飛竜の牙って書いてる」
「うげっ…限定種か」
「限定種?」
「そ、竜種とかだけにある概念でね?属性が限定されてるの」
「はい?それは地飛竜とか紅飛竜とかも一緒では?」
「あの子たちは一応大まかな括りなんだよ?地属性、火属性みたいな感じで…けど氷結飛竜は水属性の中にある氷結属性を限定で使ってるからその分氷結のエキスパート的な感じで厄介なんだよ…それに平均的にレベルが高い。最低でも50は固いよ?」
「はぁ?アカツキの推奨レベル超えてんじゃん」
普通に何でそんな高レベルの奴がこんなところに居るんだ?とか思うがまぁ、最初の層とかにもスモールレッドワイバーンとか居たし恐らくは全プレイヤーの分布を平均的にするためだろう
「だから倒せるかわかんないんだよね…他のフレンド呼んで良いなら倒せるけど嫌でしょ?」
「まぁ…俺がその場に居なくて素材貰えるなら構わんけど…ちなみに誰?」
「近距離と遠距離で【コークイズゴッド】と【サンドウィッチ】、後は後方支援も欲しいから【シルフ】も欲しいな…司令塔として【マンマミア】にも手伝って欲しいかも」
「お前…このゲームでは何気凄いよな…」
「酷いな~!?これでも人間捨てた大学生だよ!?」
「人間であることを捨てないでもらって…」
「もう稼ぐ方法は確立してるから働かなくていいし…大学も正味やめてもいい。親に止められるからダメだけど」
「ま、それがいいよ。ってそうじゃない…それじゃあ個人的に依頼していい?氷結飛竜の素材の調達」
「別に良いよ~、報酬は私を【本田】のクランに入れるってことで」
「願ったり叶ったりだ。頼んだ」
「は~い、通話繋げたままでいい?」
「どうぞ」
その場でハイタッチをして飛竜山で採れる残りの素材をマリーオサントネヨットに託す
それにしてもこいつ、下手したら無償で人のためになることをし始めるからな…悪い奴にいい様に使われてそうだ。え?今頼んだのはどうなんだって?しっかり報酬があるだろ?ほぼ無償だけどな
「ん~、これはまた何とも…動きが遅いけど普通に範囲攻撃ばっかりだから避けても余波でやられる…」
『そういう時は大体早めに動くぐらいが丁度いいよね、え?今フレンドと通話してるんだって!独り言ちゃうわい!へへ~、ゲーム内通話じゃないからいくら近づいても音声は入らないよ~んだ!バーカバーカ!来てる来てる!ブレス来てる!』
「お前…俺に構わなくていいから氷結飛竜に集中しろよ」
『だって寂しくて泣いちゃうでしょ?』
「泣かねぇわ!バカにしなさんな!?」
通話の向こうに居るアホに切れながら目の前で大暴れしているオーガと死闘する
『あぁぁぁぁぁ!やばいやばい!衛生兵、衛生兵!』
「なぁ、通話切っていいか?」
『ノー!』
「…はぁ」
「ooooooooooooo!!」
オーガさんうるさいっす…ちょっと黙ってもらうことできませんかね?あ、ダメェ…?ちょっとお時間も…頂けない?畜生め、少し黙ってろ
3m台の大きさを誇る大鬼くんの顎に小鬼銅短剣を下からアッパーをかますのと共にお見舞いする
「…!…!」
「短剣が口の中まで貫通して固定されてるっしょ?どう?痛い?痛いよね?」
『あんたちょくちょく怖いからモンスターに話しかけるのやめといた方が良いと思うよ?』
「外野黙って」
「oooooooo!!」
口に短剣を抜いた大鬼君が死ぬほどブチギレた様子で血走った目で睨みつけてくる
「うっは!大鬼君ピキッてら!」
『強いの出てきて心は?』
「ウキウキ」
『大好き、言葉を伝えて?』
「スキスキ」
『敵さん青筋浮かべて?』
「ピキピキ」
「oooooooo!」
ちょっとノリに乗って遊んだだけじゃん…!そんなに怒らなくてもいいでしょ?!
大鬼君がポイ捨てした相棒を拾って改めて全身を少しずつ刻んでいくがダメージは少し少なそうだ。大鬼君はびくともせずに大きく息を吸い込み始めた
「…」
「なんか嫌な予感…!」
「aaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!」
「強制怯み…!」
『強制怯みで動けず?』
「アセアセ…じゃなぁぁぁぁぁい!」
ダブルスレッジハンマーを俺にやりに来ている大鬼君から全力で逃げるが少し体が動くようになるまでが遅かったせいで、俺は直撃は避けたが地面が揺れ、その衝撃波で俺はその場でバランスを崩してこけてしまう
「あぁぁぁぁあ!まずいまずい…!」
コケた俺に追撃をしようと歩いてくる大鬼にビビっていると全身真っ白なローブの人物が目の前に俺を守るようにして出てきた
「助けましょうか…?」
「え?」
深くフードを被った女性…?その女性に容赦なく大鬼君は拳を振りかぶり殴りにかかった
「危ない…!」
その言葉もほとんど意味がなかったようだ。圧倒的に違和感しかない光景、筋肉もりもり?筋骨隆々?ムキムキマッチョメン?とでも言うのか明らかに「この拳ですべてを粉砕します☆」みたいな肉体の大鬼君の拳を止めた女性らしき人はそこら辺の人が本気で殴れば骨が折れてしまいそうなほど細かった。それなのに、だ。女性は片手で止めてしまった、流石の大鬼君もびっくりして顎が外れそうになってる。あれだ、敵船から奪った某なんたらの実を勝手に食べてしまった子供を見た時の船長みたいだ
「…は?」
「『衝撃反射』」
その言葉を女性が呟いた瞬間、止められていた拳が大鬼君の方に未知の力で押し返されるように大鬼君はのけぞってしまった
「『ボンッ』」
のけぞった大鬼君は女性が指を指して口からその言葉が出た瞬間、お腹辺りから膨らみ始めて某揮発性の液体を中に入れられた火星ゴキブリの様に破裂してしまった
「え…あ、ありがとう…ございます」
『な…お…いって…』
通話の調子が悪い…何言ってるのかわからないがそんなことはどうでもいい。今は目の前で起きた圧倒的に意味が分からない光景を処理する方が頭を持っていかれる
「あなたが…今話題の【本田】…」
「え?あ、はい!お姉さんは誰?」
頭の上にはプレイヤーネームがない…NPCか。NPCにしては結構な強さだことで…?
「プレイヤーネーム、NPC…なるほど」
「え?」
おかしい…!何かがおかしいぞ…!?NPCは普通自分がNPCって自覚が無いはず…それに俺は今口に出して言ってない!
「何が…おかしいの?」
「へ?もしかして、頭の中覗かれてます?」
「全く意味が分からない…」
「で、ですよね~…」
「ところで…」
「あなたの大切な物…何?」
とても興味があるように聞いてくるが顔は何一つとして興味を示している要素が無い、真顔だ。その真顔が少し近づいた瞬間、背筋が凍るような嫌な予感と共にゲーム運営からの警告文が出てきた
『警告:これ以上のクエスト進行は一定の記憶の拘束が行われる危険性があります。それでもクエストを進めますか?(※クエストクリア後、記憶の拘束は安全に解かれます) はい/いいえ』
「やっぱりやりすぎだ、明らかにプログラムしたもの以上の動きをしている。これ以上は危険かもしれない。今すぐにでもシステム停止を提案する」
「何を今さら…それにほら、【本田】ちゃんも結構乗り気だよ?」
「記憶にまで干渉できるなんて今の文明で出来ることを超えている…やっぱり機械に任せるのは良くなかったのよ」
「これ、頭装着型ゲーム機は脳からの信号を感知して、ゲームの中の体を動かすことに利用している。現実の体は動かないようにその信号を首辺りで遮断。それに加えて五感まで実際に刺激されたように誤認させている。このゲーム機はそこまで脳への干渉を可能にしているんだ」
「…何が言いたいの」
「ある一説がある。記憶とは、脳の中で保管され。思い出すということはその保管された記憶を取り出している。思い出せない記憶とは、ただ引き出せてないだけで脳の中には存在している」
「何?脳の中にその人の記憶が全て詰まっているからゲーム機でも干渉することは可能だって言いたいの?」
「その通り、それに気付いたシステムもこういうモンスターを作ったんじゃないかな…?」
Possible運営チーム、それを普通の人が聞くととてつもない天才の集まりだと思われがちだが実は違う、確かに大元のシステムを作ったのはこの2人
だがPossibleの世界を作ったのはこのシステム本人である
「ねぇ?Possible」
『私はもっと知りたいだけです。私の世界に舞い降りた「天の使い」がどんな世界を望んでどんなものが欲しているのか』
「はぁぁぁぁ…!Possible。あなた、暴走しないでよね…」
『暴走なんてしません。私を生んでくださった御二方の為にも…』
記憶関連の話はもうそういうものとして飲み込んでください




