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青い春  作者: はっちー
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誰かのためにできること

 青山がYouTubeを始めたきっかけは、彼が大学3年生の夏に妹のひかりが少し深刻な病気になり、長期間入院したことだった。5つ年下のひかりは昔から体が弱くて、よくベッドで寝込んでいた。青山が実家で暮らしていた頃は、妹を励ますために、学校であった面白い話やお気に入りの漫画の話を聞かせた。ひかりは青山の話を聞くのが好きだった。

 青山は、母親から妹の入院を知らされた時、何かできることはないかと考えた結果、YouTubeを始めることにした。YouTubeなら何回でも観れるし、退屈な入院生活を励ますことができるだろうと考えたのだ。


「どーも!ブルーマウンテンことブルマンです!さあ、今日紹介するコンテンツはコレ!チェンソーマンです!!」

 四畳半のアパートで、iPhone5を使って撮影したチェンソーマンの紹介が、初めての動画だった。青山は、ひかりが退院するまでは毎日動画をアップすると決めていた。漫画、アニメ、小説、映画など、青山がハマったものを思いつくままに紹介していくと、日に日に登録者数は増えていき、1年が経つ頃には30万人を突破していた。大学4年の夏には、東京都庁から内定をもらっていたが、ひかりの状態はまだ良くなっておらず、退院時期も未定だった。青山は、内定辞退して、YouTuberとしての活動を続けることにした。広告収入があれば、なんとか1人暮らしを継続できたし、何より、ひかりが青山の動画をとても楽しみにしてくれていたからだ。

 それから5年が経った現在では、青山のチャンネル登録者数は120万人を突破し、生活は落ち着いた。街で声をかけられることも増えてきた。ひかりは、2年前に無事に退院し、今は地元の大学に通っている。

 昔から望んでいた道では無いけれど、青山は現在の生活に満足していた。安定とは程遠いYouTuberという職業だが、喜んで見てくれる人がいて、生活が成り立つレベルの収入が得られる限りは続けていこうと考えていた。


 慶都大学の久門という女子学生から、学園祭への参加オファーが届いたのは、そんな時だった。

「と言うことで、11月にうちのサークルメンバーとコラボして、生配信をしていただきたいのです。午前9時頃に大学にお越しいただいて、12時前には終了する予定です。出演料については、20万円ほど用意しております」

 渋谷駅近くのスターバックスで、久門は青山に企画書をもとに説明した。長い黒髪を後ろで一つに束ねており、メガネをかけた姿は、女子大生と言うよりは役所の職員のようだ。

「分かりました。お受けしましょう。ただ、出演料は不要です。後輩からお金はいただけませんよ」

 青山はそう言って、出演を快諾した。出演料は固辞したが、その日の就寝前にふと20万円という金額の大きさが気になった。大学生が20万円もどこから捻出するつもりだったのだろうか。


 しかしそんな些細な疑問は、撮影と編集の忙しさに埋もれ、気づけば、学園祭当日を迎えていた。

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