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青い春  作者: はっちー
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悪の花

 緒方ミツルが初めて生物を殺したのは、3歳の頃だった。

 公園を散歩していたときに、偶然に緒方の手のひらに止まったモンシロチョウを握りつぶした。その瞬間に緒方は微かな快感を味わった。他の生物の命を握りつぶす快感。

 彼のターゲットは、小学校に上がる頃には哺乳類に移った。初めは友達が飼っていたハムスターを殺した。友達の家に招待された時、彼はその生物を見つけ、誰にも気づかれないうちに自分のランドセルの中にいれて連れ帰り、自分の部屋でたくさん可愛がってからその生命を絶った。

 そして、野良猫や犬を経て、彼の興味は次第に人間へと移っていった。緒方は非常に頭の良い少年だった。彼はそれまでに100を超える生物を殺害してきたが、誰にも気づかれなかった。両親は彼を溺愛していたし、小学校の教師もクラスのリーダーとして振る舞う彼に一目置いていた。


 緒方が初めて人間を殺したのは、彼が12歳になった日だった。ターゲットとなったのは、倉重という同級生だった。倉重はリトルリーグのチームで4番とピッチャーを務めるクラスの人気者だった。おそらく、緒方がいなければ間違いなくクラスのリーダーになっていた少年だ。緒方が倉重をターゲットに選んだのは、緒方のクラスで殺す価値があったのが倉重くらいだったからだ。倉重が歩むはずの輝かしい未来、おそらく中学、高校では野球部で活躍し、プロになれなかったとしても野球推薦で名門大学に進学し、大企業に就職。あたたかい家庭を築いたことだろう。そうした未来を潰すことに、緒方は胸を踊らせた。

 緒方の誕生日がたまたま林間学校で都内近郊の山で合宿することになった。緒方は誰にも気づかれずに倉重を呼び出し、そして崖の上から突き落として殺した。倉重の背中を押した彼の両の手のひらには、あり得たはずの未来と可能性を潰した確かな快感が残っていた。数日後に発見された倉重は、事故死として警察にも処理された。倉重の死と緒方を結びつけるものは誰もいなかった。


 成績優秀だった緒方は中学受験し、名門の慶都中学に入学した。中学、高校では、緒方はもはや自分の手で他人を殺めることは無くなった。それでも間接的に、中学時代に同級生と、高校時代に担任教師を自殺に追い込んだ。エスカレーター式で受験をせずに慶都大学に進学する頃、緒方の興味は個別の人間を殺すことではなく、いかに大量の人間を同時に殺すことができるかという命題に移っていた。少なくとも100人、できれば1000人規模の人間を大学在学中に殺したい。

 緒方が出した結論は、多数の人間を殺すためには、組織が必要だということだった。そして、緒方は、スーパー・モンキーズというサークルを立ち上げた。顔の良い男子学生と女子学生を集めることで、サークルの評判は上がり、規模はどんどん拡大していった。一般会員からはサークル費を月額5000円をとり、モデル会員には月3万円を逆に支給した。緒方が大学1年の4月に立ち上げたサークルは大学の前期が終わる7月下旬には、会員数300人にまで膨れ上がっていた。


 大学が夏季休暇に入る頃、緒方は、スーパー・モンキーズの影響力をさらに高めるために、モデル会員の男子4人を選抜してYouTubeを開始した。8月に始めたYouTubeチャンネルは、大学の後期が始まる9月末には登録者数1万人を超えていた。そして、そのYouTubeを見た慶都大学の女子学生や都内の他大学の女子学生からもスーパー・モンキーズへの入会希望が殺到した。女子が集まるところに男子は集まるので、自然と男子学生からの入会希望も殺到し、10月に入る頃にはスーパー・モンキーズの会員数は1000人を超えていた。


 そして、緒方は、スーパー・モンキーズのYouTubeチャンネルを更に飛躍させるため、慶都大学OBの人気YouTuberブルマンに目をつけた。緒方はサークル運営事務局の久門という女学生に、ブルマンに11月に行われる慶大祭で、スーパー・モンキーズとコラボ生配信をオファーするように指示を出した。

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