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歪んだ月 他2編

 「歪んだ月」


水面(みなも)に映える月

 ゆらゆらと歪みながら空を見上げる


星が流れて海に散る

 波飛沫(なみしぶき)は砕けた星の欠片


  空に浮かぶ月が蔭りながら

   星の欠片をじっと見つめている


心の奥に沈む月

 ゆらゆらと歪みながらわたしを見上げる


感情が零れて海に散る

 渦巻く海流は荒れた心の欠片


  空に浮かぶ月が蔭りながら

   心の欠片をじっと見つめている


  歪んだ月はわたしの心

   空を見上げ嫉む心を映し出す

   空を見上げ怨む心を暴き出す


水面に映える月

 ゆらゆらと歪みながらわたしを見上げる


水際(みぎわ)に立ち

 ゆらゆらと歪みながら空を見上げる


  歪んだ月が蔭りながら

   わたしをじっと見つめている



 「Réincarnation」


ひとつ嘘を吐き、ふたつ嘘を吐き、

 嘘が積み重なり虚言に言霊が宿る


真実は(うつろ)に覆い隠され、

 やがて醜い汚物に変わる


太陽の光は分け隔てなく降り注ぎ、

 雨は分け隔てなく喉を潤す


言霊は悪鬼となって、

 真実の言葉をズタズタに引き裂いていく


だけど一日の終わりには、

 醜い汚物たちが良心を()き立て心を締め上げる


心は胎内の肉塊(にっかい)のように深く沈み、

 ただ羊水の中を浮遊する


朝には心は無垢を取り戻し、

 再生と言う地獄に堕ちる


ひとつ嘘を吐き、ふたつ嘘を吐き、

 嘘が積み重なり虚言に言霊が宿る


真実は虚に覆い隠され、

 やがて醜い汚物に変わる


空はどこまでも遠く澄んで、

 風は金木犀(きんもくせい)の香りを運んでくる


荒れ果てた心に何も生むものはない、

 そう開いた瞳には洒落た音楽が足りない



 「愛という背徳」


私はあなたを愛す

 それ故にあなたを傷つける

 それ故にあなたと別離する

 それが私があなたを愛する証


自由、そう自由でなければ

 あなたを愛し続ける事が出来ない

 あなたを抱きしめる事が出来ない

 私の愛を止めないでおくれ


私はあなたを愛す

 それ故にあなたの血を求める

 それ故にあなたの生命を求める

 それが私があなたを愛する証


自由、そう自由でなければ

 私は唄を歌えない

 私は詩を紡げない

 私の魂を引き裂かないでおくれ


私はあなたを愛す

 それ故にあなたを殺す

 それ故に私を殺す


  永遠の愛を誓う為に

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― 新着の感想 ―
[一言]  イタリア皇帝様の歪んだ月は水面に映る月なんですね。  美しいものを前にすると自分の醜さが浮き彫りになる時ってありますよね。  美しい言葉の配列が印象的に心に刺さる作品だと思いました。 「…
[一言]  とても良質な三篇の詩。  読ませて戴いて、とても嬉しかったです❗  「歪んだ月」、静寂の中に反射し合う、月、水面、私。  それらが呼応しあって、私の良くない心の内を浮き彫りにする。  そ…
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