12 反乱
わたしはアホ王子の家臣に指示して近衛兵の装備を剥いで回った。
「リリア、そんなことしてないで早く移動しないと」
「いえ、この装備をアホ王子の家臣に装備させるのです」
盾、剣、鎧、すべて一流の品ばかりだ。
「傍から見ると“軟禁した王子を護送する近衛兵”になります」
ターレント王子の表情が明るくなった。
「それなら街中の移動も、王宮への突入も抵抗なく進められるな。私も装備しよう」
屋敷を出ると、すぐさま信号魔弾を打ち上げた。赤色だ。事前にドワーフや反乱軍と信号の打ち合わせをしてある。
「きれいなものだな」
ターレント王子がつぶやいた。
念願の祖国復興の第一歩だものね。
アホ王子とその家臣を引き連れ、わたしたちはドワーフの隠れ家へと向かった。
「ひい、ひい、もう走れない」
運動不足気味のアホ王子が遅れ気味になる。
「ここを乗り越えれば殿下が国の主になるのですよ」
心にもないことを言って元気づけた。この作戦は時間との勝負だ。
今ならまだアホ王子邸の異変は敵に感づかれていない。
「リリア、このまま王宮に攻め込むんじゃないのか?」
「ドワーフが味方に付いていることを見せつけないと、彼らは怖気づいちゃうわ」
ドワーフの隠れ家には信号魔弾を見て駆け付けたドワーフが詰めかけていた。
「これらの者が反乱に参加いたします。お気を強くお持ちください」
不安げだったアホ王子の顔色が元気になってきた。これはいけるかもしれないと思ったのだろう。
「殿下におかれましては、これからすぐに王宮に突入していただきます。殿下の家臣は近衛兵の恰好をしているため、容易に城門を通過できるはずです。ドワーフたちは殿下に従うグループと国境門を攻撃するグループに分かれます」
「うむ、頼みにしている」
リーダーのビュルクナーに指揮されたドワーフたちは国境門を目指した。
途中の街中の建物に放火して進軍した。
いままで差別されていた恨みを晴らすかのようだ。
街を取り囲む壁の要所にある兵士の詰め所をも次々と攻撃した。
外部からの攻撃は高い壁があって守りやすいが、中からの攻撃には意外に弱い。
わたしとターレント王子は王宮突入組だ。
アホ王子と家臣団は近衛兵の恰好をしたまま王宮に突入した。
「緊急の事態につき、殿下を王宮内に移すことになった」
そう言ってなだれ込んだ。
王宮の衛兵が戸惑っている。
「何が起きている?」
手を出せないでいる守備兵の横をすり抜け、ターレント王子とわたしはドワーフを引き連れ後に続いた。
「国王さえ捕らえたらこちらの勝ちだ」
「殿下、王の居場所へ急ぎましょう」
下の☆☆☆☆☆での評価をお願いします。「悪い★→★★★★★良い」です。