30XX年人類はみな肥満体となってしまい動くことすらしなくなって、本当に「カレーは飲み物」と言われるようになってしまう時代になりました。
30XX年、人類は皆肥満になっていった。毎日ピザやハンバーガーと言ったものを貪っては動くこともやらなくなってしまったのである。そんなことを繰り替えしてしまった人類は、当然肥満な人しかいないようになってしまい、世界の人々は全員100キロ越えということになってしまった。
「ふー、今日もピザ屋おいしいなあ」
白いTシャツに太った体の30過ぎのその男、のひ太は椅子のレバーを引いて椅子をテーブルに動かしてそう口にした。先ほど言ったように人々は自分から動くことをしない。椅子に上下左右に動かせるレバーが付いていてそれを操作することで、宙に浮いた白い近未来チックな椅子を動かすことができるのだ。
「ふー、この椅子を動かせば自分で動かなくても好きなところに行けるんだから良い世の中になったものだなあ」
のひ太はそう言いながらテーブルに置いてあるピザを一切れ取り口の中に入れた。
この移動できる椅子は画期的な発明であり、これにより外に出るのも少し移動するのもこの椅子を移動させればいいのでわざわざ椅子から立ち上がったりなどという無駄な行動をしなくて済むのだ。寝るときも椅子をベッド付近に移動させることで椅子が自動的に人間をベッドに寝かせてくれる。トイレも同様に移動させてくれるので快適な生活ができた。
「喉乾いた」
そう言うと、のひ太は台所までレバーを操作して椅子を動かす。コップを一つ手に取るとボタンを一つ押した。すると水道からカレーが出てきてコップにカレーが注がれていく。そしてのひ太はそれを一気に飲み干した。
肥満しかいなくなった世界では水道から出るものも、飲み物も全てカレーなのだ。よく聞く「カレーは飲み物」というやつだ。
「あ!やばい!!約束があるんだった!!」
のひ太はそう言うと椅子を動かしドアを開けた。外には、のひ太と同じように誰もが椅子に乗って忙しそうに右往左往している。自分の足で歩いているものなど当然誰一人としていない。
しばらく椅子を動かすと向こうから手を振っておる知り合いが見えた。その知り合いは椅子を動かしこちらに近づいてくる。赤い服にのひ太より明らかにふとている30ぐらいの男だ。
「今日はどこいく?」
「そうだなー今日はポテト山盛りキャンペーンやってる店があるんだ!!そこに行こう!」
「おおいいなー!!」
そう言うと2人は椅子を動かしそのポテト山盛りキャンペーンをやっていると言う店を目指した。
それは椅子で5分もかからないところにある。ドアの前に行くとちゃんと椅子に反応して自動ドアが開いてくれる。中から出てきた店員も椅子に座りながら「いらっしゃいませ!!」と元気よく挨拶をし椅子を動かしてのひ太達を案内する。テーブルだけの開いている席に誘導されるとテーブルは自動的にのひ太達にメニューを手渡す。
「ごゆっくりどうぞ!!」
店員はそう言うと椅子を動かし向こうに行ってしまう。メニューを見ると上の方に赤いギザギザの吹き出しで「山盛りりポテト300円!!」と仰々しく書いてあった。店員を呼びメニューの山盛りポテトを指差す。店員は笑顔で「かしこまりました!!」と言い椅子を動かしてゆく。ポテトを待っている間に椅子を動かし、ドリンクバーに行くとそこには5種類ほどのカレーが入ったドリンクサーバーが置いてあった。
「どれにしようかなー」
「あの、早く選んでもらっていいですか?」
迷っていると後ろから声が聞こえる。後ろに順番待ちの椅子に乗った人がいてのひ太は慌ててボタンを押しカレーをコップに注ぐ。戻ると山盛りのポテトが積んであった。反対側の友人の顔が見えなくなるほどある。
「すげえ!!」
そう言いながらのひ太は山盛りのポテトをどんどん口に運んでゆく。山盛りということがあって食べても食べもなかなか減ることはないポテトに、のひ太は嬉しそうな顔でどんどん口に運ぶ。だがそれは突然起こった。
「うっ...!」
のひ太は突然苦しみだしその場に倒れた。手や足を動かし友人に助けを求める。友人は慌てて電話を取り出すと救急車を呼ぶ。その間にものひ太の苦しそうな表情はさらに増してゆく。
しばらくすると救急車がやってくる。宙に浮いた担架は複数の機械の手を伸ばしのひ太を持ち上げると担架の上に乗せる。そして自動的に動くとのひ太を救急車の中に入れた。
「大丈夫なのかな...」
友人は不安そうな表情でピーポーピーポーと音を鳴らし去って行く救急車を見ていた。
✴︎
「これが君の未来だよ」
画面には30年後ののひ太が病院で苦しそうな表情をしている姿が映し出されていた。それを見た少年は不安そうな顔になる。
この少年、のひ太は30年後の自分のとんでもない姿を見て隣にいたロボットにこう尋ねた。そのロボットは青い狸のような見た目でどこかで見たことあるような風貌だ。
「これが、30年後の姿??」
「そうだよ?太くん、君は30年後の肥満になる世界でこのような生活を送ることになるんだよ」
「そ、そんなの嫌だ!!」
それを聞いたその青い狸のような見た目をしたロボットは、こう話を続ける。
「だから、僕は君がそうならないように、未来から来た猫型ロボット...」