わたしのしあわせ
空にはいくつかの雲が飛んでいて、それらの境目は実に曖昧だった。まるで境目なんてあってもなくても同じだという風に、それらはもこもこと浮かんでいた。
まだ寒さの残る、春の日だった。
太陽は雲の合間を縫うように移動していた。
私はちょうど、その空の下で弁当を食べいた。土の上、レジャーシートをひいて、手作りの弁当を食べていた。そう、ピクニックで想像できる状況だった。
辛うじて田舎と呼べる小さな地域で、私のようなことをする人間は決して多くない。そもそも人口だって多くないのだから。
気持ちいい涼しい風と、暖かい日差し。少し寒さを感じられるくらいが、ちょうどいいのだ。
誰も周りにはいないといえど、決して無音ではないところで、ぼーっとひとときを過ごす。私の考える幸せである。あくせくした日々の喧騒とは無縁に、情報社会との繋がりも遮断して、少しの間、過ごすのだ。
隣に、誰かがいれば尚いいのに。
私は自嘲気味にわらう。
それは、そうに決まっている。一人より、二人の方がいいに決まっている。そんなこと、わかっている。
食べかけの弁当を置いて、私は立ち上がる。周りには、誰もいない。ただ植物があるばかりの風景に、私は笑いかけた。
「人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける」
私はため息をついて、そして座った。
変わらない愛情を、与えてほしくて。




