わたしをまつあなたへ
#ネット小説大賞七
あなたは今何をしているかしら。
きっと、センターの結果を前に、悩むところでしょう。
どうしよう。
このまま、第一志望にいくのか、さらに高めの大学にトライするのか、はたまた確実な大学を選ぶのか。センターで大敗した人もいるでしょう。
そんなあなたは人生の岐路の一つにいます。
でも。
あくまでも一つの岐路に過ぎません。あなたはいまのあなたになるため、何万もの岐路を過ぎて選んで来ました。
まず、あなたが生まれるためには、両親から、遺伝子をもらう必要があります。その過程でもすごい倍率があったのは学んだでしょう。さらに、受精卵になってママの子宮に着床するのも奇跡。育つのも奇跡。何もかも奇跡。この世に生まれたのが奇跡。
まっさらなあなたが出来上がりました。
いつの間にかこの世に生まれたあなたは自分を構築するゲーマーです。さあ、ゲームの開始です。
まずはあなたがあなたらしくなる土台を形成します。
あなたには世話をしてくれる人が必要です。
さあ、なんて意志表示をしますか?
泣く。泣く泣く。泣く泣く泣く。せっせ、せっせ。あなたのそばにいてお世話をする者をあなたは徐々に認識していきます。あなたは暖かな他人の皮膚に癒され、母乳やミルクで、栄養をいただきます。そして、疲れたら寝る。寝る寝る。寝る寝る寝る。明るかったり暗かったり、回りはよくわからなくて、あなたは怖いや寂しいや色々な感情を得ていきます。快と不快。好きと嫌い。暖かいと寒い。空腹と満腹。世の中には、二つの事象があるのを体験していきます。それを決めるのはあなた、ということも。
あなたのそばには何人も世話する人がいるのに気づきます。主はママ、次は、パパ。もしくはあなたの姉や兄やじじばばあたり。保育園の保母さんも。ベビーシッターかも。あなたが泣き止みにこりとすると、皆が、安堵と微笑みをくれます。あなたはやがて期待と不安を抱えるようになります。期待してそれにそぐわないと泣きわめき、不安を爆発させます。でも、期待してその通りになったら穏やかに過ごせます。中にはわざと泣いたりわめいたりして、世話をされ、ほっとするというのも。あなたはあなたが注目されていないと不安に。世話する人があなたを見てくれるように、経験を踏まえ、あれこれやります。不安になって期待して、また不安になって期待して。
やがて、同じ年齢の、群れに。似たような感じのわたしとあなたが、たくさんいて。最初は、こんにちはの笑顔から。すでに、個人差があるので、ニコニコ返す、怖がって泣く、きょとんとする…様々。この中でフィーリングが合うあなたとわたしが出来上がります。あなたもわたしも、奇跡の人。たくさんの岐路を経て、出会った人。やがて、様々な人のいる社会に出ていくため、いくつかの段階を踏みます。あなたも成長します。そして、段階も、上がります。
あなたはわたし。わたしはあなた。