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婚約破棄からの死亡フラグを折るために  作者: 焔姫
第2章〜半年前〜
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空白の1年

「お嬢様、こちらが王廟周辺の調査結果です! 王廟の東西南北には、それぞれ紋様の描かれた石版が隠されていました!」


 任務をやり遂げた達成感に目を輝かせながら、ソルが私に紙束を差し出す。


「ありがとう、ソル。魔王が封印された地は、やはり王廟のようね」


 かつて光の勇者と聖乙女によって封印された魔王。

 魔王の残虐性を示す文言は数多くあるものの、魔王誕生と魔王封印に関する情報はほとんどない。

 意図的に隠されているのかしら?


「そうですね〜。お嬢様の前世でのお話をお伺いしますと、魔王城が現れる場所は王廟の辺りですからね〜」


 私の言葉にうなずきながら、ルナが手際良くティーテーブルに紅茶と茶菓子を用意し始めた。

 のんびりした口調とてきぱきした行動のリズムが合わない。


「紋様に描かれた古代語を解読すると、石版は東には風の、西には地の、南には火の、北には水の精霊の力を集積するもののようです!」


 専門の学者でもないのに古代語を解読し、禁足地である王廟周辺を誰にも見咎められず調査する14歳の護衛。

 末恐ろしい子……


「精霊王様のルートでは、精霊王様が姿を消してから魔王が現れるわ。第2部では精霊術が使えなくなったという話もあるし、どうやら精霊が鍵のようね」


 私は瞼を閉じ、思考を巡らす。

 リディアが精霊王様と出会った場所へ行っても、私では何も起きなかったのよね。

 精霊術師たちから精霊に話を聞いて貰っても、精霊王様のことは絶対に教えてくれなかったし。

 文献は調べ尽くした、精霊方面からのアプローチは失敗に終わった、後残った方法はーー


「何とかして王廟の中に入れないかしら?」


 瞳を開くと、私の呟きに目を大きく見開いたルナとソルの顔が見えた。


「えっと、お嬢様〜? 念のためお聞きしますけど、何のためですか〜?」


「魔王に会うために?」


「反対反対反対反対反対!!!!!」


 青ざめた顔をして問いかけたルナに答えると、ソルが顔を真っ赤にして叫び声を上げた。


「もう他に調べる手が無いんですもの。第2部オープニングのときに現れた魔王は、確か聖乙女の顔を見に来ただけだって言っていたのよ。恐らく、そのときはまだ争うつもりはなかったはずだわ」


「でもお嬢様、そのときお亡くなりになるのでしょう〜?」


「ええ。けれどそれは、斬りかかったカーティス様が魔王に反撃されたのを庇ったからだわ。こちらから攻撃しなければ、話し合う余地があるかもしれない」


「やっぱり俺がそのときお嬢様の代わりに殿下をお守りしますから、お嬢様はその日お留守番しましょう! ね!」


 ルナとソルが私の膝にしがみついて必死で訴えてくる。

 涙で潤む青と赤の双眸。


「もし私以外の誰かがカーティス様を庇って失敗したら? 私なら確実にカーティス様をお守り出来るのよ。そういうイベントですもの。それにソル、私はあなただけを犠牲にもしたくないわ」


 私はルナの青い髪とソルの赤い髪を撫でながら、静かに語りかけた。


「このまま手をこまねいていれば、私は死ぬでしょう。リディアが聖乙女として覚醒すること、カーティス様をお守りすることは外せないわ。その要件を満たして生き残るためには、第1部のエンディングを何事もなく終わらせること、第2部のオープニングが始まる前に行動することが必要よ」


 不思議なことに、エンディングとオープニングの間は1年空いていることだし、ね。

 王廟の中に入っても魔王がいるとは限らないけれど、何か手掛かりがあるかもしれないわ。


「ルナ、ソル、ついて来てくれるでしょう? 私、行きたいの」


 言外に、生きたいという想いを込めて。

 ずるい聞き方なのは分かってる。

 ルナとソルまで危険にさらす。

 それでもーー


「「はい、お嬢様」」


 ふたりはためらわずうなずいた。

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