双子
決意も新たに拳を握り締めていると、扉を叩く音がした。
「お嬢様、ソルが戻りました〜。お部屋に通してもよろしいですか〜?」
「ええ、いいわ」
侍女のルナの呼びかけに私が応えると、ルナとソルの姉弟が部屋に入って来た。
「お嬢様、ただいま戻りました!」
おっとりした様子でほんわかした笑みを浮かべる青髪青瞳のルナ。
尻尾があれば左右に勢いよく振っているであろう元気いっぱいの赤髪赤瞳のソル。
双子なので顔立ちは良く似ているが、纏う雰囲気のせいか受ける印象は全く異なる。
「お帰りなさい、ソル。護衛の貴方にお使いを頼んで悪かったわ」
「いえ! お気になさらないで下さい! でも……俺、護衛だからお嬢様のそばを離れるのは心配です……」
「あらあら、ソル〜? あなた、お嬢様のお言いつけに逆らうの〜?」
しゅんっとうなだれるソルに、ルナがにっこりと問いかける。
しかし、笑顔とは裏腹に、ルナからは冷気が漂っていた。
怖い……
「そんなことない! お嬢様のためなら何でもする! でも、お嬢様のそばにいたいんだ!」
熱気をたぎらせながらルナに言い返すソル。
その可愛らしい言葉に思わず私はくすりと笑ってしまった。
「あ、お嬢様に笑われた! でもでも、お嬢様! 俺、お嬢様のためなら命だって惜しくありません! お嬢様に買って頂かなければ、俺も姉さんも金持ちの慰み者になって、とっくに死んでますから!」
「ソルの言う通りです〜。10年前、あの船底で鎖に繋がれた私たちをお嬢様が救って下さり、しかも教育までして頂いたこと、私もソルも一生忘れません〜。お嬢様のそばが私たちの居場所です〜」
「ありがとう、ルナ、ソル。あの船旅で迷子になって本当に良かった。あなたたちは私の宝物よ」
大貴族の人間の侍女や護衛は、本来なら下級貴族の子女が務める。
奴隷だったルナとソルがウィステリア公爵家の第1女である私の側に仕えられるのは、私に甘いお父様が私のわがままを聞いて下さったから。
そして、ふたりが文字通り血を吐くような努力をしてその能力を示したからだ。
ルナとソルだけは、家ではなく私個人に絶対の忠誠を誓ってくれている。
だから、私が白と言えば黒でも白と言うふたりには、他の人間なら決して信じないどころか気が狂ったと思われかねない前世の記憶と魔王復活の話を打ち明けていた。