潜入
金と銀のふたつの月が夜空に浮かぶ。
儚げに瞬く星々の下、私とルナとソルは帝城の遥か上空にいた。
フロントはミディ丈、バックはマキシ丈のフィッシュテールドレス。
総レースのドレスは、スカート部分はティアードフリルでふわりとふくらませている。
前世の記憶を元に神魔力で織り上げたこの漆黒のドレスのハートカットの胸元では、パープルダイヤモンドのネックレスが輝く。
足元はハイロングブーツ。
動きやすさを重視するだけなら男装で良いが、まとう衣装によって階級を測られるため、試行錯誤の上このスタイルに落ち着いた。
ルナはロング丈のクラシカルメイド服をミモレ丈にし、編み上げブーツを履き、ソルはいつも通り騎士服のままだ。
「ルナ、あなたの力で皇帝の居所を突き止めてくれる?」
眷属となったルナは、ディフェンシオ様からも感嘆されるほどの感知能力を手に入れた。
地図を広げて該当地域に集中すれば、大まかな地形や建物、人間の規模が分かるのだ。
おかげで魔王城から帝都へ直接行くことが出来ましたわ。
認知出来ない場所へは行けないため、当初は王都から帝都まで千里眼と転移を組み合わせて数回に分けて行こうと思っていたので、かなり楽になった。
「はい、お嬢様〜」
交易商人から手に入れた鮮血帝の絵姿を手がかりに、ルナが帝城に意識を集中する。
「城の内奥に絵姿と繋がる気配があります〜。窓の無い部屋のようですね〜。室内にはおひとりですが、続きの部屋に5人いますね〜。後、隠し部屋らしき2つの部屋に気配を殺した3人の人間がいます〜。その内1人が天井です〜」
「では、皇帝の部屋に転移後、私たちの防衛結界の外に鳥籠結界を張って、9人とも閉じ込めてしまいましょう。ソル、8人ですが大丈夫かしら?」
「はい、お嬢様! お任せ下さい!」
ソルに与えられた力は身体強化。
今ではインペンティス様から3本に1本は取れるようになった。
勇者のいない人の世では、紛うこと無き最強の剣士でしょうね。
私は、ルナの感知した情報を共有すると、ふたりを連れて帝城内へと転移した。
プラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳。
その瞳が驚きで見開かれたのもつかの間、細く冷たく光る。
無言の内に皇帝が剣を取り、鞘から引き抜き構える。
同時に天井と壁面から3人の人間が飛び出て、ひとりが氷魔術を放ち、ふたりが結果に剣を振り下ろした。
防衛結界が攻撃を弾く澄んだ音。
私が反応出来る速度ではなかったが、ソルは黒衣の影をふたり瞬く間に斬り裂き、魔術師へと走る。
私の鳥籠結界が完成したのは、魔術師が崩れ落ちたときだった。
物音を聞きつけ、続きの間から2人の騎士が扉を開け放ち入って来る。
その扉の向こうで、1人の騎士が笛を力一杯吹いた。
鳥籠結界は中にある全てを閉じ込めるもの。
事態をようやく理解した侍女の上げた甲高い悲鳴も含めて外には何も聞こえない。
そして、騎士を3人とも斬り伏せ、侍女を気絶させたソルが、私の元へと戻って来た。
ソルとルナがひざまずく。
私もスカートの端を小さく持ち、皇帝に対して優雅なカーテシーを披露した。
皇帝がふっと息を吐くと、剣を納める。
「お前たちは誰だ?」
「お初にお目にかかります、皇帝陛下。私は、アイリス。ーー魔王の召喚者ですわ」




