作戦(3)
私は、ウィキニアの翡翠色の双眸を見返し、ひとつうなずく。
例えインペンティス様やディフェンシオ様から注がれる眼差しが冷たいものでも、ランティス様の瞳が私を優しく促してくれているから大丈夫。
「はい。ひと月程前、エリューシオン聖王国に聖乙女が顕現しました。聖乙女は国に奇跡と加護をもたらす者。創世の女神を主神として抱くこの大陸で、聖乙女の存在は攻め入るレギオス帝国の剣を大いに鈍らせるでしょう。聖乙女が前線に出て来でもしたら、敗戦も有り得ますわ」
恐らくこれが『聖乙女の祈り』第2部が始まるきっかけだったのではないか、と私は考えたのだ。
第1部エンディングと第2部オープニングの間の空白の1年は、レギオス帝国が小国群を攻略する時間。
その後、魔王の封印を解き、魔王を召喚する。
そして、魔王と聖乙女との対面によって、聖乙女の注力を魔王へと傾ける。
また、各地を魔族や魔物に荒らさせれば、労せずしてエリューシオン聖王国の国力を削ぐことが出来る。
その間に侵略すれば、エリューシオン聖王国を陥とせるはずだ。
聖乙女が帰還しても、それまでに制圧を完了させるなり、条約を締結させるなりすればいい。
だからこそ、ランティス様をリディアに会いに行かせただけ、なのでしょうね。
その後魔王は聖乙女に封印されるもよし、よしんば聖乙女が負けても、召喚者が願えば魔王がレギオス帝国を滅ぼすことはないと考えたのだろう。
「聖乙女は現在エリューシオン聖王国の最重要人物として扱われているため、暗殺など人の手による排除は難しいですわ。では、レギオス帝国はどうするでしょうか? もしかしたら、聖乙女には魔王であるランティス様を対峙させれば良いと考えるのではないでしょうか?」
「なるほど、至極人間らしい考え方ですね」
ディフェンシオ様が限りなく淡い水色の瞳を細めて順繰りに私とルナとソルを見た。
安易に魔王という強大な存在を召喚し、その力を欲のために利用しようとする奢った考えを蔑視しているのが分かる。
「だが、現在陛下は忌々しいことにお前と血の盟約を結んでおられる。新たに結び直すには、お前を殺すしかないな」
「アイリスが召喚者だってことは、まぁ、色々な術を使えば分からなくはないからね〜。アイリス殺されちゃうね?」
あっさりと私の殺害を予言するインペンティス様とウィキニア。
ウィキニアに至っては愉しそうだ。
でも、その情報は初耳だわ!
私の死亡フラグは、より強力になって立ち直ってしまっていたのね……




