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婚約破棄からの死亡フラグを折るために  作者: 焔姫
第4章〜覚悟〜
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RE:魔王城(2)

「陛下‼︎ どうした⁉︎ ーー……陛下……あ〜、これは……はぁーっ」


 寝室の扉が吹き飛び、剣を携えた侍従のウィキニアが飛び込んで来る。

 そして、ウィキニアは素早く室内に視線を走らせると、アイリスに目を留め絶句した。

 次いで大きなため息をつく。

 我はそんなウィキニアを横目に、悲鳴の次は泣き声を上げだしてしまったアイリスを必死でなだめようとする。

 なぜ我がこのような目に合うのだ……


「アイリス、落ち着け。な? 我は何もせぬ。そなたの許しなく指1本触れぬと誓う故、泣き止むのだ」


「ひっ、ひっく……も、申し訳、ひっく、ございません……ひっく。ま、魔王陛下の、ひっく、し、し、し、寝室に……うわぁぁぁぁぁん」


「そなたは悪くない。転移座標を我のそばに設定した故、しんしーーここに来ただけなのだ。次から来客用の部屋に転移するように設定を変える。だから、な?」


「陛下、ひとまずその娘を違う部屋に連れてったらいいんじゃないかな〜? ここにいたら泣き止まないっしょ」


 剣を収め、面倒くさそうに言い放つウィキニアの言葉に、我は即座にアイリスを隣の応接間に転移させる。

 泣き声が遠ざかった。


「それで次はどうするのだ?」


「俺、飲み物淹れて来るんで、陛下はこの扉直しておいて」


 そう言うと、ウィキニアはさっさと寝室を出て行く。

 雑な対応は常のこと。

 ウィキニアの後を追い、我も寝室から応接間に向かうと、しゃくりあげていたアイリスが大きな瞳からぼろぼろと涙を流しながらこちらを見る。


「魔王へいかぁ……ぅぅっ」


 魔王の寝室に転移してしまった人間。

 男の寝室に転移してしまった女。

 うむ……最悪であろうな。


「とりあえず、ソファーに座って待っておれ」


「ひっく、は、はい」


 ソファーを指差すと、素直にアイリスが腰かける。

 顔を赤らめ、ハンカチで目元をしきりに拭うアイリス。

 その様子を確認すると、我は寝室の扉があった空間に向き直る。

 蹴破られた扉の残骸。

 我はそれらを一瞥すると、修復魔術をかけた。

 扉の欠片が集まり、元の形に戻る。

 さて……ウィキニアに言われたことは終わったが、この後はどうしたら良いのだろうか?

 魔王たる我がなぜたかがひとりの人間の泣き顔ひとつで動揺せねばならぬのか……

 我はため息をつくと、ゆっくりとアイリスを振り返る。

 目が合った。

 赤く染まった目元。

 潤んだ瞳は涙をたたえ、瞬きする度、1粒2粒とこぼれた雫が頬を伝う。


「陛下、ぼさっと突っ立ってないで座れよ。アイリスだっけ? 陛下を召喚した人間だよな? はい、まずこれ飲んで落ち着いて。俺はウィキニアね。陛下の侍従」


「あ、はい。アイリスと申します。ウィキニア様、ありがとうございます」


 アイリスの頬から落ちる涙の行先を目で追っていた我は、ウィキニアに促され、慌ててアイリスの向かいに腰かける。


「俺に様はいらないよ、アイリス。それね、紅茶。人間界のだから安心しなよ」


 ウィキニアの言葉にうなずくと、アイリスがカップに口をつけた。

 温かい紅茶にほぉっと吐息をもらすアイリスに、我も安堵の息をつく。


「あの、魔王陛下、この度はとんだ不作法をお見せして申し訳ございません……」


 消え入りそうな声で謝罪するアイリスに我は鷹揚にうなずく。


「良い。アイリス、手を貸せ。座標を調整する。ウィキニア、客室をアイリスのために整えよ」


 おずおずと差し出された白い指で光る紅血玉に魔力を注ぎ調整する。

 あのような状況で悲鳴を上げられては、誤解が生じかねないからな。


「はいはい。じゃ、俺、行って来るわ」


「ありがとうございます、魔王陛下。あの、魔王陛下、ぶしつけではございますが、お願いしたき儀がございます」


「申してみよ」


「私に仕えておりますルナとソルという者たちも私と共に魔王城へ参りたいと申しております。身の程をわきまえない願いではあると重々承知しておりますが、何卒お聞き届け願えないでしょうか?」


「そうだな……そなたの身の回りを世話する者も必要であろう。いいだろう、鍵にその者らの血を注げ。そうすれば、そなたが鍵を発動したとき、そなたが望めばその者らも共に魔王城へと転移される。手を貸せ」


「ありがとうございます!」


 やっと笑顔を見せたアイリスに、我も満足げに微笑んだ。

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