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婚約破棄からの死亡フラグを折るために  作者: 焔姫
第3章〜邂逅〜
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魔王城の鍵

「我のそばにいたいと申したな? だが、我は魔界へ帰るぞ? 人の世への道が出来たとは言え、我は人の世になど興味がない」


「では、私も共に魔界へ参ります!」


 即決すると、魔王が露骨にため息をついた。


「魔界には、魔族や魔物がいるのだぞ?」


「でも、私は魔王陛下のおそばにいたいのです!」


 黄金色の双眸が揺れる。

 ここで魔王を逃すわけにはいかない!

 命がかかっているため、私は魔王に必死ですがる。


「どうか私を魔王陛下のおそばに置いて下さい! それが私のただひとつの願いでございます!」


「ーーそなたの血が我を呼んだのは間違いない、か……では、これを」


 魔王が手のひらを宙に向けると、そこにきらきらと輝く小さな光が現れた。

 その光がふわふわと漂い、私の手元に来る。

 それをそっと掴む。


「指輪ですか? 綺麗……」


 血のように紅い石がはめ込まれた精緻な細工の金の指輪。

 美しい輝きに魅せられて、感嘆の声を上げる。


「それは、魔王城と人の世を結ぶ鍵だ。人間は人の世で暮らすもの。だが、その指輪に願えば、どこにいても我が元へと来られよう。そなたが来たいときに来ればいい。帰りたいときもそう願えば、好きな場所へと戻れる」


 魔王の言葉に息を呑む。

 私は、指輪を握り締めると、泣きそうになるのをこらえながら魔王に礼を言った。


「ありがとうございます、魔王陛下」


 魔王のそばにいられる。

 常に、というわけではないが、いつでも来て良いと言われた。

 これで魔王の変化を未然に防ぐことが出来るかもしれない。

 魔王のそばにいると決めたとき、お父様やお母様やラルク、それにルナやソルと二度と会えないことも覚悟していた。

 それでも、誰も死なないことが1番だと思ったのだ。

 死ぬのが何より辛いと身に染みて知っていたから。

 けれど、この指輪があれば、皆と一緒にいられる。

 だから私は、魔王に対して深く頭を下げた。

 山道や階段を登り、きっと私はぼろぼろでしょう。

 カーテシーを披露することは男装では出来ないけれど、日本にはお辞儀という文化があった。

 誠意を示す45度。


「ふっ。地上へ帰るがいい。そなたの従者たちを連れて」


 魔王が笑ってそう言うと、私の身体が透け始める。

 驚いて後ろを振り向けば、ルナとソルの身体も次第に薄くなっていく。

 前を向き直り、魔王をもう1度見ようとしたのにーー

 気がつけば、星空の下、私は王廟を眺めていた。

 その手にしっかりと指輪を握り締めて。

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