王廟
「ここ、が、はぁはぁ、おうびょう、はぁはぁ……」
「お嬢様、大丈夫ですか⁉︎ こちらにお座り下さい!」
「お嬢様、お水をお飲み下さい〜。一気に飲まず、少しずつですよ〜?」
ソルが木陰に広げたマントの上に崩れるように座り込むと、ルナが陶器に入った水を差し出す。
ルナに言われた通り1口ずつ水を口に含んでいると、ようやく上がった息が整って来た。
早春の柔らかな風が頬を撫でる。
気持ちいい……
目立たぬよう早朝から山を登り始めたものの、私のペースに合わせていたために既に夕方近い。
でも、ソルに背負われずに済んだわ。
大中小の正4角錐台の層が重なった王廟。
下層正面に設けられた両開きの扉の前には祭壇が置かれ、今朝生けられたであろう花が飾られていた。
扉の両脇から中層に続く階段があり、中層の正面から上層に続く階段がある。
そして、その階段の先に下層同様両開きの扉があった。
「祭壇があることから考えると、歴代の王が祀られているのはあの下層の扉の中かしら〜?」
「でも姉さん、魔王を封印した地に王廟を建てたんだったら、その封印は下層にあるんじゃないか?」
首を上下に動かし扉を見比べるルナとソルの言葉に、私も考え込む。
思い出されるのは、前世の記憶。
歴史の資料集に載っていた古墳、兵馬俑、ピラミッドなどは内部に様々な部屋があり、地下があるものもあった。
「上層には下に降りる階段があるのかもしれないわ。ソルが調べてくれた資料によると、下層の扉には王家の紋章が刻まれていたけれど、上層の扉には解読出来ない紋様が刻まれていたもの。行ってみましょう」
石畳みの階段。
山道を延々登った後にこれは辛い。
それでも何とか50段ほどを登りきって上層に辿り着くと、すかさずソルがマントを敷き、ルナが水を差し出す。
私と違い、ルナもソルも息ひとつ乱れていない。
「不思議な紋様ね」
ようやく立ち上がると、私は改めて扉を眺める。
楔形文字に似ているわ。
アルファベットのV字のような形が数個集まってひとつの塊を作り、それらの塊が4重円を作っている。
円の中心には、オパールのように遊色に輝く石が埋め込まれていた。
「お嬢様、本当に扉をお開けになりますか〜?」
心配そうな不安そうな声で私に尋ねるルナの青い瞳を見て、私はうなずいた。
もうこれしかないもの。
それを見て、ソルが私の前に立ち、自分の背の倍ほどもある扉に両手をかける。
そして、ゆっくりと扉を押し開いた。




