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   最強のジジィに鉄槌を

 息をとめた瞬間、カシアは全力で駆け出す。


 狙うはギード。

 その大きな背中にカシアが迫っても、彼は振り返らない。


(油断しやがって。意地でも痛い目見せてギャフンと言わせてやる!)


 カシアは跳躍し、ギードの首へ短剣を突き立てた。

 しかし、手に伝わってきたのは、肉ではなく岩のような感触。


 ギードの首から血は吹き出さず、代わりにカシアの短剣が根本から曲がっていた。


「ちょっと待てーっ! いくら強いっつっても、剣でブッ刺してもかすりキズさえつかないってあり得ないだろ。ジジィ、実は人間じゃないだろ!」


 思わず口から出たカシアの叫びにギードは足をとめた。


「俺は人間だ。鍛えれば誰でも弱点ぐらいなくせる」


「それでも限度っていうもんがあるだろ! ふざけた体しやがって……っ」


 カシアは苛立たし気に舌打ちすると、再びギードへ飛びかかる。

 今度は鍛えようがない目玉を狙い、カシアは指で思い切りよく突こうとする。


「フン、遅いな」


 わずかに顔を後ろへ引き、ギードはハエを払うかのうような手つきでカシアの腕を弾く。

 全力でくり出した突きがあっさりいなされてしまい、負けてたまるかと再びカシアはギードへ挑む。


 あらゆる方向から殴ろうとするが、その度に手を払われる。当たったとしてもカシアの手が痛くなるだけで、ギードはビクともしなかった。


(ここまで力の差があるなんて……)


 何をしても通じない現実に、拳を振るいながらカシアは愕然とする。

 今までがむしゃらに動けば何かしらの道が切り開けた。それが散々だった義両親の元から離れ、盗賊団で生きていくために身に着けた手段――それが余りにも通じなくて、今まで築き上げた生きる土台がガラガラと崩れていく。


 疲れが出始めてカシアの拳が大振りになる。全身に鈍痛が広がり、体のどこもかしこも重たく感じて仕方がない。それでもここでやめれば自分が惨めになる気がして、歯を食いしばりながら虚空に拳を飛ばした。


「絶っっ対……ブン殴るっ! 避けんな、体だけの脳筋ジジィっ!」


 残る力を振り絞り、息を切らせながらギードを殴り続ける。

 ギードから大きなため息が聞こえてきた。


「まったく、ガキはうっとうしい」


 ぼそりとつぶやいた低い声とともに――カシアの横っ面に大きな衝撃が走った。


 目の前が白くなり、息ができなくなる。

 体が宙に舞い、背中が地面へ着いた瞬間、カシアの意識は途切れた。

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