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   全力逃亡開始!


 カシアは己に結界を張って風の衝撃を防ぎながら、目を素早く動かす。

 自分よりも下で空に浮かぶソルを見つける。


 風の勢いに負けてソルの体は逆さまになり、隙だらけの状態だった。

 即座に近くへ飛んできた魔物を足蹴にし、飛び石を渡るようにカシアはソルへ近づく。


 そしてソルの両目を狙って、小さな火の玉をふたつ放った。


「グワッ!」


 不意打ちの痛みに、ソルがぎゅっと瞼を閉じる。

 その手からエナージュの杖が、わずかに浮いた。


(今だ!)


 カシアは手を伸ばし、素早く杖を奪う。


「なっ? 誰だ、オレの杖を奪いやがったのは!」


 まだ瞼を開けないソルが、闇雲に虚空を裂く。その脅威が届かぬよう、カシアは近くの魔物を蹴り飛ばして距離を空けた。


 少しでもその場から離れようと、数体の魔物を蹴って移動した後、カシアはシルフィーの剣を鞘に収めて手を離した。

 竜巻は急速に弱まり、空へ飛ばされていた魔物たちが大地へ落ちていく。


 カシアも同じように真っ逆さまに落ちていき――待機していたシャンドが飛び上がり、カシアの体を受けとめた。


「うまくいったではないか、姐さん!」


「ああ! これで目的は果たせた。後は逃げるだけだ」


 大きく息を吸い込み、カシアは「全員撤収だ!」と叫ぶ。

 シャンドの部下たちが一目散にその場を離れていく。そんな彼らの動きに気づいたランクスたちも、全力で走って逃げ始めた。


 しっかりカシアを抱えながら、シャンドやガーゴイルは低空飛行で、他の魔物たちは幻獣レミュアに乗って森の中を突き進む。

 カシアたちの隣へ、エミリオの腰ベルトにつかまって飛行するランクスとリーンハルトの三人が並んだ。


「風の精霊を暴走させて、オレたちまで吹き飛ばす気だったのか? この大バカ野郎!」


 激怒するランクスへ、カシアはにやりと笑う。


「アンタらは強いからどうにかできるだろうと思ったんだよ。吹っ飛ばされても死にはしないだろ?」


 呆れ、というより諦めのため息をつき、エミリオが横目でカシアを見た。


「力も魔力も頭も弱いのに、こんな重要な場面で予測不能なことをしでかすなんて……身の程を知りなさい」


 悪態をつく二人とは違い、リーンハルトはジッと後方を見続ける。すると「やっぱり」と苦々しい声を漏らした。


「まだ気を抜くな。敵が追いかけて来ているぞ」


 言われてカシアも後ろを見ると、そこには猛スピードで飛行し、徐々に一行へ近づいてくるソルとベルゼの姿があった。


 後方を確かめたランクスが、小さく舌打ちする。


「人間界ならまだしも、魔界であんな魔王を二体も相手にするなんて無理だぞ。なんとかして逃げ切らねぇと……」


「だが、このままでは追いつかれる。なにか足どめをしなければ」


 声だけは冷静そうだが、リーンハルトの顔にも焦りの色が出ていた。

 フフフ、とシャンドから笑い声が漏れた。


「この私に任せるがいい。魔界ならば、私の力を存分に発揮することができるのだから」


 シャンドはレミュアに接近し、その背にカシアを乗せる。

 ワーライオンたちに助けてもらいながら、カシアがしっかり座ったことを確かめた後、シャンドは微笑んだ。


「姐さん……この命に替えても、私があの者どもを足どめしてみせよう」


「シャンド、待て!」


 カシアの声を振り切り、シャンドは後ろへ立ち向かって行く。

 あっという間に姿は小さくなり――。

 ――ソルにぶっ飛ばされ、シャンドは魔界の空へ飛んでいってしまった。

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