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   エナージュの杖

「エナージュの杖ってどんな物なんだ? アタシもこの村の住人になったんだ、見つかるように協力したい」


 こちらの思惑に気づいた様子もなく、ルカは柔らかに微笑んだ。


「ありがとうねえカシア。件の魔王と戦闘した時にチラッとしか杖を見てないけど、随分と独特な形をしてたわ。カシアの背丈と同じくらいの真っ黒な杖でね、先端はトゲトゲしたトカゲみたいな顔が彫られて、その口の中には玉虫色の宝石があったわねえ……魔法を使えない者でも魔法が使えちゃう杖なのよ」


 そんな外観なら見間違うことはなさそうだとカシアが思っていると、ルカの笑みが苦笑に変わった。


「四十年前は、あたしたちも今より強くはなかったから……あの時に戻れたら、杖なんか楽勝で奪えるのにねえ」


 もしかして、繭を守るためにここへ住み着いて、連戦を重ね続けたから今の強さになったのか?

 最初からあんな強さじゃなかったのかと、カシアは意外に思う。それと同時に、自分も戦い続けたら強くなれるかもしれない、という思いが芽生えてくる。だが、


(でも四十年もかけて強くなろうとしたら、その間にギードは老衰でくたばるだろうな。杖を見つけたほうが早く見返せそうだ)


 そう思い、カシアは頭をめいいっぱい使って、杖を取り戻す方法を考える。

 ひとつ案がひらめき、思わず「あっ」と声が出た。


「もしかして、魔王繋がりでシャンドたちが知ってるかもしれない」


 案外すぐに解決すると期待したカシアを、あっさりオスワルドが首を振って打ち砕く。


「昨日の内に話を聞いたが、名前さえ聞いたことがないと言われた。あやつらに真実を語らせる薬を飲んでもらったからな、虚言ではない」


 きっとオスワルドに脅されて、嫌々薬を飲まされたんだろうなー。断ったら瞬殺されて、消しクズさえ残してもらえないもんな。

 カシアはシャンドたちに同情しながら、大きくため息をついた。


「本っ当に手がかりなしなんだな。どこにありそうなのか、見当はついてないのか?」


「あたしが杖のありかを占ってみたけど、魔界のどこかにあるっていうことしか分からなかったわ。この世界のことなら詳しく分かるけれど、別の世界になっちゃうとあたしの力も及ばなくてねえ。それに人間が魔界へいけば、あたしたちでも力が弱まっちゃうから下手にいけないのよ」


 つまり魔界に行かなければ杖を見つけられない。でも探しに行けば弱くなった力で、数多くの魔王や魔物たちを相手にしなくてはいけない。そんな状況になるのなら、魔界でじっくり探すなんて命知らずなマネはできない。


 どこに杖があるのかさえ分かれば、奪いにいけるのに――。

 なにかいい方法はないのかと、カシアは口元に手を置いて思考を働かせる。隣から「またロクでもないこと考えてるだろ」とランクスに言われたが、「別に」と素っ気なく答えてからだんまりを決め込んだ。

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