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五章:謎の繭と三強者の過去

 ルカたちの家へ入ると、さっそくカシアとランクスは川に面した部屋へ通される。

 そこには大人が両腕を精一杯に広げたぐらいの巨大な繭が壁一面を占領しており、その前でオスワルドが揺り椅子に腰をかけ、静かに読書をしていた。


 三人が入ってきたことに気づき、花の形をしたピンクのメガネを指で上げつつ、オスワルドは本を閉じる。


「来たか……話は長くなる。そこへ座れ」


 そう言ってオスワルドは、室内にある茶色いソファーへ座るよう目配せしてきた。

 カシアが先に座ると、ランクスがその隣へ腰かける。ギチリときしんだ音が鳴り、二人の腰がクッションへ沈み込む。


「な、なあ、この気味の悪い繭はなんだ?」


 チラチラと繭を気にするカシアに、ルカが苦笑した。


「あんまり慌てないで。ゆっくり教えてあげるからねえ」


 ルカはアヒルのような歩みでカシアたちの前に立つと、それぞれの顔を見交わしながら話を始めた。


「今から四十年前、あたしたちは世界中を回って魔王や魔物を退治していたの。あたしとオスワルド、ギード、そしてミリアムとね」


 少しルカの目が潤んで言葉に詰まる。

 長息を吐き出し、涙を目の奥に追いやってから再び口を開いた。


「ミリアムはね、回復や防御の魔法に長けた聖女みたいな女性だったわ。物好きな子でね、あのギードと恋仲になって結婚したんだよ」


「えっ! ギードのヤツ、結婚してたのか……あんな無愛想で鈍感そうなジジィなのに」


 いきなり衝撃的なことを聞いてしまい、カシアは顔をしかめて眉間を押さえる。世の中、本当に物好きな人がいるのだと思い知らされた気がした。

 そんなカシアの反応にルカは笑みを浮かべる。


「今はジジィだけれど、四十年も前の話だからね……結婚したあとも四人で魔物退治をしてたんだけど、ある時ミリアムが身ごもってねえ。さすがに臨月まで戦えないから、この地に小屋を建てて、子供が生まれるまで戦いを休むことにしたんだよ。魔物退治は三人でこなしながらね。でも……」


 急にルカは声の調子を落とし、目元のシワを深くした。


「元々ここにはね、魔界に繋がる穴はなかったんだよ。ある日突然、あたしたちがここを離れている時にぽっかり魔界への穴が空いて、そこから魔物たちがどんどん出て来たのよ。ミリアムは結界を張って耐えていたんだけど、運悪くその結界を破るだけの力を持った魔王に襲われて……」


 ルカの声が詰まり、悲しげに瞼を伏せた。


「……ミリアムは殺されてしまったの。今だから言うけど、カシアにあげたその護りの指輪は、ミリアムの形見なんだよ。生まれてくる子供のために、ちょっとずつ魔力を注いで護りの力を強めた物なの」


 言われて思わずカシアは指輪の青い石を見つめる。


(今までアタシを守ってくれたのは、ミリアムの力だったのか)


 そう思うと、急に指輪が重く感じられた。

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