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   突如見えるようになった墓

(まさかランクスに泣かされる日が来るなんて……)


 ここで泣いたら、事あるごとにからかわれそうな気がする。弱みを見せる訳にはいかないと、カシアはぐっと堪える。

 気分が落ち着かず、なにか別の話題に変えてしまおうと、カシアはついさっき気づいたばかりの墓を指さした。


「な、なあランクス。あそこにある墓はどうしたんだ? 昨日までなにもなかったのに、今朝になったらあったんだ。『ミリアム』って書いてあるけど、誰か知っているか?」


 カシアの問いに、ランクスの顔色が変わる。

 いつになく真剣な眼差しにカシアが息を呑んでいると、ランクスはわずかに苦笑した。


「ついにそれが見えるまでの力をつけたか」


「どういう意味だ、ランクス?」


 話が見えずにカシアが困惑していると、ランクスはゆっくりとこちらに歩み寄り、もの悲しそうな目で墓を見た。


「あの墓はな、四十年前にこの村が出来た頃からずっとあるんだ。魔物や獣なんかに壊されないよう、オスワルド師が魔法で結界を張り、墓を見えなくしている。……それをルカ師が、村人になれるだけの力をつけた人間には見えるようにしようと提案したんだ。真の村人になるための通過儀礼みたいなもんだ」


 ふうん、そんな大切な墓なのか。でも結局ミリアムって何者なんだ?

 カシアが疑問に思いながら墓を凝視していると、家からルカが出てきた。そして「もうそろそろだと思ったわ」と感慨深げに長息を吐いた。


「カシア、ちょっと話したいことがあるわ。この村が生まれるきっかけになった、始まりの話を……。見せたいものもあるから、家の中に入ってちょうだい。ランクス、あなたも一緒にね」


 急な話に戸惑い、カシアは思わずランクスを横目で見る。

 ランクスが視線に気づいてカシアへ目を向けると、低い声で「行こうか」と一言口にし、人の背中を叩いて前へいくよう促してきた。


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