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   狙うはストラント村


    ◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ルーテス地方の北側は主要の都市が置かれ立派な街道も整備されていたが、南側はまだ開拓されておらず、細い山道と獣道ばかりの広大な森が広がっていた。

 森が多ければ仕事をする時に身を隠せるから楽になる。それに人気のない所だと盗賊団の噂が広がるのは遅い。アジトとなる洞窟もある。じっくり仕事をするのに南側は都合がよかった。


 仲間たちとともに険しい山を越えてルーテス地方に入って間もなく、カシアは折りたたんだ地図を広げて付近の地理を見直す。今向かっている洞窟までは、あと山をふたつほど超えなければならない。思わず長息を吐いてしまう。


(うわあ……まだ思ってたよりも距離があるな。どこか途中で食料を補充できる所があればいいのに……ん?)


 自分たちがいる位置を中心にしてカシアは地図を見回していく。と、目の隅に小さく『ストラント村』と書かれた文字が飛び込んでくる。あまりに小さすぎて、今初めて村があることに気づいた。

 ここからさほど離れてはいない。カシアは地図から目を離して首領を探し、斜め前方にその姿を見つけて声を張り上げた。


「お頭! 近くに村があるから、そこに寄って食い物を調達できますよ」


「ほう、どこら辺だ?」


 カシアは首領の所へ駆け寄り、地図を広げてストラント村を指さす。まじまじと見つめながら、彼は腕を組んで低くうなった。


「ストラント村? どこかで聞いたことがあるような……まあいい。この人数を養える食料が、そんなちっぽけな村で間に合うと思えんな」


 一味の総勢およそ三十人ほど。確かに村の店で食料を賄うのは難しいだろう。しかしカシアは「問題ないですよ」と胸を張り、腰につけていた皮袋を叩く。


「アタシたちは盗賊じゃないですか。家に押し入って食料を奪ってしまえばいい。こんなチンケな村、住んでるのはジジババばっかりだろうし、もし若くて強いヤツがいたとしても、この人数なら断然アタシたちのほうに分がありますよ。最悪、アタシたちより強いヤツがいても、いざとなればコレもありますから」


 皮袋の中には「万が一の時の保険だ」と首領から渡された、とっておきの代物が入っている。コレさえあれば国の一小隊とぶつかっても負ける気はしなかった。

 カシアの皮袋を見やってから、首領は口端を引き上げた。


「本当に頼もしく育ったな。よし、寄り道していこう」


 そう言って首領はカシアから離れ、近くにいた仲間と話し始めた。

 おそらくこれからの打ち合わせをしているのだろう彼らの様子を、カシアは横目で見ながら口元をほころばせる。


 みんな乱暴で口も悪く、盗みのためには多少のあくどいこともする連中だ。仕事で人を傷つける時もある。しかし仕事以外ではいつも談笑が絶えず、最年少のカシアも一端の仲間として扱ってくれた。

 自分の家族を知らないカシアにとって、盗賊団の仲間たちが家族のようなものだった。彼らが笑ってくれるなら、他のヤツらが泣こうが喚こうが知ったことではない。


 やおらとカシアはフードを被って顔を隠す。そして仕事に備え、深呼吸を繰り返して息を整えた。

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