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   まさかの称賛の声


 魔物の退治を終えて一行が町の入り口までいくと、住人たちが大歓声で迎えてくれた。

 町長らしき小柄な中年の男が前に歩き出て、ランクスたちを見上げる。


「みなさん、本当にありがとうございます。なんとお礼を言えばいいのやら……」


「これで魔物もしばらくは現れないだろう。もしなにかあれば、またいつでもストラント村へ言ってきてくれ。どんな魔物や魔王でも、オレたちなら倒せるからな」


 偉そうな口ぶりのランクスが腹立たしく、カシアは顔を背けて話が終わるのを待っていた。

 ふと、なぜか町の人々が目を潤ませながら、カシアに熱い視線を向けていることに気がつく。


「な、なにかアタシに言いたいことでもあるのか?」


 カシアが尋ねると、たちまち人々が押し寄せて、勝手に人の手を取ってきた。


「ありがとう、お嬢さん! よくワシらの町を守ってくれた」


 最前列にいた老人がそう口にしたのを皮切りに、あちこちから感謝の言葉が飛び交う。


 魔物を倒したのはほとんどランクスたちで、こっちはザコの始末と味方の攻撃を防ぐことで精一杯だったのに、どうしてアタシに礼を言うんだ?

 カシアが疑問に思っていると、その理由が漁師らしき男たちの口から次いで出てきた。


「魔物を退治してくれたのは本当に助かったんだが……あれだけの激しい戦闘、町のほうに被害が出てもしょうがないと思ってたんだ」


「ああ。他の村や町で、魔物退治と引き替えに廃墟寸前に追い込まれた所もあるって聞いていたからな。この町もそうならないか心配してたんだよ」


 人々が一様に重くうなずく。しかしすぐにカシアへ満面の笑みを向けた。


「でもお嬢さんが必死になって守ってくれたから、おかげで町の建物に被害が出なかったんだ。あんたはこの町の英雄だ」


 自分の身を守っていただけなのに、こんなに喜ばれるなんて。

 盗賊団にいた頃、訪れる町では冷たい目で見られることが常だった。外の人に褒められた覚えなど一度もない。こんなに大勢から喜ばれてしまうと、どうすればいいか分からなくなってくる。


 こちらが硬直していても、構わず人々は思い思いに賞賛と感謝を口にし続ける。うまく応えられる訳もなく、カシアは彼らの声を右から左へ聞き流していった。


「おいカシア、時間がないんだ。さっさと行くぞ」


 面白くなさそうなランクスの声に呼ばれてカシアが振り返ると、いつの間にか三人は町の人々から離れ、移動魔法の準備に取りかかっていた。

 たどたどしくカシアは「ア、アタシいくから」と人々に別れを告げ、ランクスたちの元へ駆け寄る。


 エミリオのベルトにつかまった直後、カシアたちの体が空に浮く。

 一行の姿が消える瞬間まで、人々は大きく手を振り、カシアに感謝を伝え続けていた。


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