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   次期首領のカシア(未定)


「今日の収穫は?」


 森を足早に進みながら、カシアは隣にいた仲間の大男へ尋ねる。


「金貨五十枚に良質な絹の布も大量にあったぞ。あと新品の武器も……ハハッ、せっかくの武器も手元になけりゃ意味がないぜ」


「確かにいいカモだったよな」


 奪ったばかりの指輪を指先でいじりながら、カシアは「でも」と言葉を続け、肩をすくめた。


「アタシの勘だと、この地域で仕事するのはそろそろ限界だと思う」


 後方を歩いていた盗賊の首領が、「分かってんな」とカシアの背中を叩く。


「俺もそう思っていたところだ、いい読みしてんじゃねえか。いっそお前が俺に代わって一味の頭になってみるか?」


 仲間たちの視線がカシアに集まる。そして一斉に笑い声が弾けた。中でも隣にいた大男の笑い声が豪快だった。


「冗談キツいぜ、お頭。まだまだ度胸だけのヒヨッコの下につくなんてご免だぜ」


 この一言で仲間たちがさらに笑い声を大きくした。


「笑うな、バカ! 今にみてろよ……アタシにぜひ親分になって下さいって、全員頭下げて頼み込むような大盗賊になってやるんだからな」


 分かってないな、みんな。アタシがどれだけ盗賊として成長しているか……仲間に入った時の小さくて非力な小娘のままじゃない。

 膨れっ面になりながらカシアは歩みを早めて先頭に出る。


 まだ下っ端ではあるものの、積み重ねた経験はすでにベテランと並んでいるとカシアは自負している。生来の負けん気の強さから、自ら進んで商隊の襲撃に参加し、真っ先に切り込んできたおかげで、一気に盗賊としての技量が上がった手応えもある。度胸もさらについた。そんな成長に首領は冗談めかしながら「この調子なら、俺の跡を継がせられる」と、最近よく言ってくれるようになった。


 商隊の護衛に返り討ちに合ったり、快適とは言えないアジトのせいで病気になったりして、何度か死にかけたことはあった。それでも拾われた村にいた頃よりも今の生活が好きだった。

 仕事の首尾が悪かった時には拳が飛んできたが、うまくいった時は褒めてくれるし、理由なく叩かれることもない。移動する日々は刺激に満ちて面白かったし、なにより仲間たちと力を合わせて仕事をすることが楽しかった。


「お頭、今度はどこで仕事するんだ?」


 おもむろに大男が問うと、全員の耳へ届けようとしたのか首領は声を張り上げて答えた。


「アジトに戻ったらすぐ西に進んで、ルーテス地方へ向かう。野郎ども、新しい土地でも稼いでいくぞ!」


 威勢のいい声に仲間たちが「おうっ!」と声をそろえて応え、森の中に低い咆哮が響き渡った。

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