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   パシリ要員


「よかったじゃない、無事に試練を終えられて。これでカシアも立派なストラント村の人間ね」


 にっこり笑って祝ってくれるアイーダにこそばゆさを感じ、気恥ずかしさにカシアは頬を掻いた。

 エマもカウンターに料理を並べながら、「おめでとうー」とカシアへ笑いかける。


「これで村に依頼された魔物退治をこなしていけるわね。強くなりたいなら、実戦を重ねないとねー」


「魔物退治の依頼? ……そういえば、この村でそんなことやってるって噂を聞いたことがあるけど――」


 カシアの独り言に、ランクスが「ああ」と割って入る。


「ルーテス地方は魔界の穴があるから、他の地域よりも頻繁に魔物が出没するんだ。それでストラント村のことを知ってるヤツらが魔王や魔物の被害を受けたら、こっちに魔物退治を依頼してくるんだ。大体はルーテス地方内の依頼だが、たまに遠方の国からも依頼はあるぞ」


「多かれ少なかれ、必ず報酬は貰えます。安い依頼は絶対に引き受けませんけどね」


 商売人根性丸出しのエミリオへ、各々から「エミリオらしい」と諦めの声が漏れてきた。


(へえ……これだけ強くて、あちこちに移動できる魔法を使えるヤツもいるから、これはいい商売だな)


 カシアが感心していると、喉でくぐもった不吉な笑いをランクスがこぼす。


「ククク……カシア、これで遠慮なくお遣いにいけるな」


 嫌な予感を覚えながら、カシアは体をひねってランクスに向く。


「は? なに言ってんだランクス?」


「依頼はピンからキリまであるからな。そこそこ強いと張り合いがあっていいが、中には本当に弱くて相手にするのが面倒なヤツもいるんだよ。で、そんなヤツなら最弱のお前さんでも戦えるから、オレらの代わりに行ってくれ。そのために鍛えてきたんだからな」


 つまり、それってアンタらのパシリになれってことか?

 そう思った瞬間、カシアは立ち上がってランクスへ「ふざけんな!」と怒鳴りつけた。


「誰がアンタらのパシリなんかになるもんか!」


 平然とランクスはコップに口をつけて水を飲み、やれやれといった様子で頬杖をつく。


「少しは自分の力量を考えてみろよ。今日の弱小魔王ですら苦戦してたお前さんが、ギード師匠に勝てるのか? パシリでも戦っていかねぇと、いつまで経っても師匠を見返せないぞ」


 痛いところを突かれてカシアは言葉に詰まっていると、成り行きを見ていたエマが困ったように眉をひそめた。


「そうねえ、ギードさんの強さは普通じゃないものね」


「うん、それでも足らないと思うわ。ギードさんと素手で戦っても、私のほうが負けちゃうもの」


 家よりも大きな魔物を素手で倒せるアイーダよりも、ギードのほうが強いなんて……理解できる範囲を越えてしまい、カシアは困惑した表情を見せる。

 ランクスに「まあ座れよ」とうながされてカシアが席につくと、彼はニッと歯を見せて笑った。


「ちょうど明日、ギード師匠たちが久々に魔物退治へ向かうぜ。師匠がどれだけ強いか見てみるか?」


 うなずこうとしたカシアより早く、「待て」とリーンハルトが口を出してきた。


「まだカシアには早すぎる。あの方たちの力は尋常じゃない、もう少し力をつけてからでなければ――」


「オレやエミリオもついていくし、遠目で見るだけだから大丈夫だって。それにこんな話を聞かされてコイツも気が気でないだろ。なあ、カシア」


 想像がつかない強さだからこそ、余計に知りたい気持ちで一杯になる。カシアは迷わず「望むところだ」と受けて立った。

 それでも納得しないリーンハルトへ、しばらくランクスは言葉を重ねて説得を続けていた。


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