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   試練の顛末は……


    ◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 明々とした夕日が山へ沈み、辺りが暗くなり始めた頃、カシアたちは村へ戻ってきた。


 その足で一行が食堂へ向かうと、中ではエマとアイーダが談笑しながら、料理をカウンターのキッチンで作っていた。


「いらっしゃい……あらカシアちゃん、お帰りなさい!」


 店内に入ってきたカシアたちへ即座に気づき、エマが嬉しそうな声を出す。それに遅れてアイーダが顔を上げ、カシアに笑いかけた。


「お帰り、無事に戻ってきたわね。しっかり魔王は倒せたの?」


 カウンターに座ってから、カシアは前に腕を伸ばしてグッと親指を立てた。


「ああ! 楽勝だった――」


「よく言うぜ、あんな弱小魔王に苦戦してたクセに」


 隣からランクスに横やりを入れられ、カシアは憎らしげに彼を睨みつける。

 そんな視線を気にもせず、ランクスは面白そうに声を弾ませた。


「聞いてくれよ。コイツ、魔王と会ったら力入りすぎて、いきなりコケて危うく真っ二つに斬られるところだったんだぜ」


 話を聞き、エマとアイーダが目を丸くする。


「あらまあ。そんな風に見えないけど、意外とうっかり屋さんなのねー」


「え、それ本当にあった話? ランクスの作り話じゃなくて?」


 アイーダに問われてカシアは目を逸らしたが、エミリオとリーンハルトにしっかりうなずかれてしまった。


 昼間の戦いぶりを思い出し、カシアの顔が恥ずかしさで熱くなる。


 初めて戦った魔王は、ゴブリンを縦にも横にも大きく広げた、食い過ぎで膨れあがったカエルみたいなヤツだった。

 こいつは鈍そうだと思って、先に攻撃しようと駆け出したら、変に力が入りすぎて地面の出っ張りにつまづいて――それを見た魔王が、外見からは予想もつかない素早さでカシアに迫り、斧を振り下ろしてきたところを間一髪で避けた、という具合だ。


 その後は火の魔法で魔王を弱らせ、剣でとどめを刺して勝利したが……最初の無様な失敗が消える訳でもなく、洞窟から出るまで延々とランクスにからかわれながら帰ってきたのだ。

 ランクスが笑いを堪え、肩を振るわせる。


「試練の直前に『アタシの力をしっかり見てろよ』なんて偉そうなこと言ってこの様だ。だから余計に笑えてならねぇ」


「確かに。まあ、十分にカシアの力を堪能できたのですから、あながち間違ったことは言ってませんね」


 手に入れた指輪の宝石を磨きながら、エミリオが嫌味を上乗せしてくる。

 恥ずかしくて情けなくて、カシアがなにも言えずにいると「それまでにしておけ」とリーンハルトが睨みを利かせてきた。


「誰にでも失敗はある。ランクス、お前だってこの村へ来たばかりの頃、格下の魔物に体を痺れさせられて命が危うかったことがあるだろ」


 ぴたりとランクスが笑うのをやめ、恨めしそうに「それ、今言うなよ」と小声で反論した。

 いい気味だと少し心は晴れたが、それでも自分の失態に肩を落としていると、アイーダがカシアの前に作り立てのスープを置いてくれた。


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