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   村一番の変わり者?

 調子が狂いっぱなしだ、とカシアが思っていると、木々の間から村が見え始めた。

 向こうから「カシアー、どこだ?」とランクスの呼ぶ声が聞こえてくる。そして彼の人影を見つけ、リーンハルトは歩みを早めて向かっていく。


 森を出てすぐに、ランクスがこちらへ駆け寄ってきた。心なしか顔が引きつっている。


「よ、よう、リーンハルト。村に戻ってたのか」


 かすかに動揺したランクスの声に、リーンハルトは「さっき戻ったばかりだ」と手短に答えて彼を見据える。

 少し瞳を泳がせてから、ランクスはぎこちない笑みを浮かべた。


「ちょうどよかったぜ、今から探しにいこうとしていたところなんだ。おいカシア、これに懲りてオレたちの話をもう少し聞いて――」


「ランクス……お前が彼女を吹き飛ばしたのか?」


 今までよりも一層声を低くして、リーンハルトが尋ねる。慌ててランクスが「違う違う」と手を横に振った。


「カシアが勝手に風の精霊を怒らせて、ぶっ飛ばされたんだよ。オレたちはやめろって言ったんだぜ? それをコイツが素直に聞かないから……」


 事実なだけに耳が痛い、とカシアが耳を塞ぎたい念に駆られていると、


「お前に責任はないというのか、ランクス!」


 急にリーンハルトがランクスを怒鳴りつける。その声の大きさに思わずカシアは身をすくめた。


「すべてを彼女のせいにするな。カシアは誰のせいだとも言わなかったのに……少しは彼女の潔さを見習うべきだ。大体、お前はいつも言い訳ばかりして――」


「わ、分かった、オレが悪かった。それよりリーンハルト、カシアはケガしてんだろ? だったら治療のほうが先だろ」


 言われてリーンハルトがハッとなり、「すまない」と怒りを収める。


「村の広場にエミリオが待機しているから、そのままカシアを連れて行ってくれ。それから、シルフィーの剣はオレが預かっておくぞ」


 そう言ってランクスはリーンハルトの腰から剣を引き抜いた。


「あっ! それはアタシの剣だ、取っていくなよ」


 カシアが身を乗り出して腕を伸ばそうとするが、リーンハルトに抑えられて動きをとめられる。

 目頭を押さえながら、ランクスは小首を振った。


「あんな目に合って、まだ使う気か。安心しろよ、こいつを村にいる鍛冶師の所に持ち込んで、剣に傷がないか調べてもらうだけだ」


「そっか、ならいい。精霊がアタシの言うことを聞かないなら、力ずくで使いこなしてやる」


 執念を燃やすカシアを見て、リーンハルトは大きくうなずいた。


「その覚悟は大切だ。本当に、君の気概は見習いたい」


 ……アタシを見習いたいって、かなり変わった人だな。村の中で一番の変わり者はコイツじゃないのか?

 カシアは珍品を見るような目でリーンハルトの顔を眺める。


(変なヤツだけどいい人だ……利用できそうだな)


 もしランクスに嫌がらせを受けたら、リーンハルトをけしかけてやろう。

 新たなランクスの弱みを握れたことが嬉しくて、リーンハルトに運ばれながらカシアは微笑を浮かべた。


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