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   捨てられ子の意地

 全身へ疼くヒリヒリとした痛みでカシアは目を覚ます。


 視界一面に重なり合った深緑の葉や枝が広がる。仰向けになった体を爽やかな風が優しくなでた。

 すぐに頭が働かず、何度かまばたきをしてからようやく自分に起きたことを思い出した。


(あー……取りあえず生きてる)


 丘から森まで吹っ飛ばされて生きているなんて普通なら信じられない。ふと右手を上げて指に嵌めた護りの指輪を見れば、青白い光がぼんやりと灯っている。こんなちっぽけな指輪でもしっかり自分を守ってくれたのだと内心驚く。

 ゆっくり上体を起こしてみると、すり傷はあるものの、骨折などの気配はない。手元にはシルフィーの剣が一緒に横たわり、木漏れ日を浴びて輝いていた。

 剣を見ていると、次第に胸の内から沸々と怒りが湧いてきた。


(ちくしょう、よくもこんな目に合わせやがって……村に戻ってアイツら全員ブン殴ってやる。こんな所で寝ていられるか)


 カシアは立ち上がろうと足に力を入れる――ズキン。右足に強い痛みが走る。

 思わずカシアはうめき、その場へ崩れ落ちた。


(足にヒビでも入ったか? ここから村へどう戻ればいいか分からないし……困ったな)


 どうやって村へ帰ろうかと、カシアは懸命に頭を働かせる。

 骨は折れてなさそうだから、痛みを我慢すれば歩くことはできる。歩くたびに激痛は走りそうだが、少なくとも死にはしない。


 だから心配しなくても大丈夫、と心で自分に何度も言い聞かせる。

 こんな状態は今に始まったことではない。


 幼少を過ごした村では、養父母から叩かれてばかり。ケガをしても手当てすらしてくれなかった。

 盗賊団にいた時も、みんな仕事中は自分の身を守ることで精一杯で、助けを求められる状況ではなかった。それに仲間から頼られるのは好きだが、自分が仲間に頼って重荷になるのは嫌だった。だから苦しくても歯を食いしばって、大人たちに負けじと背伸びを続け、今日まで生きてきた。


 この生き方を変える気はまったくない。

 変えれば捨て子である自分の人生が哀れだと認めてしまう気がした。


 呼吸を整え、カシアは足の痛みを落ち着かせようと試み続ける。

 すると、どこからともなく人の足音が聞こえてきた。


 足音が一瞬途切れる。

 そして――タタタタッ。せきを切ったように駆け出し、カシアへ近づいてきた。

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