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二章 猛者とは思えぬお姉さん

 魔物の襲撃から一夜明け、カシアは朝起きてすぐにアイーダの寝室から隣の部屋へ足を運んだ。


「おはよう、カシア。ちょうど朝食できたところよ」


 すでに起床していたアイーダが、ことりとテーブルにコップを置きながらカシアへ顔を向ける。朝から快活でにこやかな顔。魔物を素手でタコ殴りにする猛者とは思えない柔らかな雰囲気に、昨日のことは夢だったような気がしてしまう。


「お、おはよう、ございます……」


 軽く戸惑いながらカシアはパンと果物に牛乳が並ぶ食卓にアイーダと向かい合って座り、一緒に食事を始める。

 早く食べ終わろうとカシアが必死にパンを頬張っていると、なぜかアイーダが嬉しそうにこちらを見つめてきた。


「いい食べっぷりね。どんどん食べちゃって構わないから、遠慮しないで」


 ランクスから「しばらく下宿させてやってくれ」と急に言われても、アイーダは嫌な顔どころか、むしろ喜んで了承してくれた。ベッドもわざわざカシアにゆずり、彼女は自分の家なのに床でごろ寝という状況だ。


 どうしてこんなに歓迎してくれるのだろうとカシアが思っていると、アイーダは楽しげに笑った。


「私さ、ずっと妹がほしいって思ってたのよ。だからカシアさえよければ、どれだけでも家にいていいからね」


 出会って間もないのに、どうしてこんなに好意的なんだ? なにか企んでる……ようには見えないし――。

 困惑しながらも、まったく返事をせず家主を怒らせて家を追い出されたくなかったので「ありがとう……ございます」と、どうにか答えた。


 アイーダはパンを千切って口に入れてから、「そういえば」と話を切り返してきた。


「今日からランクスたちと訓練するの?」


 ちょうど牛乳を飲んでいる途中だったので、コップから口を離してカシアはうなずく。

 口元に手を置き、アイーダがうなった。


「アイツらに任せておいて大丈夫かしら? もし、ちゃんと鍛えてくれなかったら言ってね。代わりに私が鍛えてあげるから」


 ランクスたちよりもアイーダのほうが優しくて断然好感は持てるが、なまじ昨日の凄まじい素手での戦いぶりを見た後だけに気が引ける。カシアは喉を大きく鳴らして牛乳を飲み込むと、苦笑を浮かべた。


「その、気持ちは嬉しいけれど、あの二人にアタシが逃げたと思われたくないから……」


 半分は言い訳だが、半分は本心だ。

 それを聞いたアイーダが、破顔して何度もうなずいた。


「いい心がけね。私、強くなろうとする人って大好きなのよ。全力で応援するわ」


 なんていい人なんだろう、と思う反面、アイーダの曇りない清々しい笑顔が怖い。

 この人には絶対逆らわないようにしよう……そう心に誓うカシアだった。

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