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   村とジジィの正体


 アイーダが後ろを振り向いて「いるわよ。入ってきて」と返事をすると、からかいたそうな笑みを浮かべて憎たらしい顔したランクスがやってきた。


「おっ、ようやく起きたか。顔も元に戻ってるし、よかったよかった。いくら山猿っぽくても女の子だもんな、あの腫れあがった顔のまま一ヶ月過ごすのは流石に可哀そうだと思ってたんだよ」


 朗らかにランクスが笑っていると、その隣へ黒い服に身を包んだ青年が並ぶ。

 ランクスより背が高く細身の彼は、肌の色は白く、背中まで長く伸びた銀髪を柔らかに波打たせていた。切れ長だが眠たそうな半開きの目から、冷ややかな薄氷の瞳が覗いている。


 青年はカシアを見下ろし、小さくため息をついた。


「元に戻って当たり前でしょう、この私が治療したのですから」


「相変わらずの自信家だな、エミリオ」


 肩をすくめるランクスへ、エミリオは軽く目を閉じて笑う。その様がやけにキザったらしくカシアの気にさわる。

 いけ好かないヤツらだと思いながら、カシアはランクスたちを睨みつけた。


「盗賊のアタシを助けるなんて、どういうつもり? やっぱり気が変わって役人へ渡す気なんだろ。アタシの仲間も引き渡したのか?」


「そんな面倒なことはしねぇよ。人が死にかけていたら助けるのは当然だろ? それにオレたちはそこらの小物とは違うんだ、お前の仲間は無事に逃がしてやったよ」


 腕を組んだランクスが、身を乗り出してカシアに顔を近づける。


「まったく……普通の人間がギード師匠へ挑むなんてバカのやることだ。あの人が尋常じゃなく強いって、肌で感じなかったのか? 無謀と勇気を一緒にしている内は、お前さんは小物のままだぞ」


 悔しくて、腹立たしくて、思わずランクスの眉間に拳をめり込ませたくなる。しかしここで反論すると、弱いことを認めてしまうことになる。見返してやりたい。そのためには――。


 カシアは肩の力を抜き、わずかにうなだれた。


「なんだよ、この村は? 異様に強いヤツばっかり集まってるし、人を宙に浮かすヤツもいるし、クワでゴーレム真っ二つにするジジィもいるなんて……普通じゃない」


 ランクスは「当然」と大きくうなずく。


「この村はな、その昔、多くの魔物や魔王と戦い続けた伝説の剣士に魔導師、シャーマンの三人が住み着いた地なんだ。そんな人たちの弟子になりたいっていうヤツらが、無理矢理押しかけて弟子入りして出来たのがこの村だ。どいつも強くて当たり前だぜ」


 言われてカシアはハッとなる。

 そういえば、噂で『どんなに強い魔物でも退治してしまう連中が集まった村がある』というのを聞いたことがあった。


(そんな都合のいい村なんてあるか! と思って聞き流していたのに、本当に存在したなんて……ああ、ちくしょう! こんな珍妙な村だなんて、地図で分かる訳ないだろ!)


 心の中で叫びつつも、カシアは落ち着いた様子でランクスに尋ねる。


「もしかして、あのジジィ……ギードってヤツが、その伝説の一人か?」


「理解が早いじゃねーか。その通り、ギード師匠は伝説の剣士だ。この世で一番強いと断言できるぞ」


 言い過ぎだろうとカシアは思ったが、尋常じゃない強さだというのは紛れもない事実。それでもまったく歯のたたなかった自分が情けなかった。

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