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ケンブリッジ大学史学部シリーズ  作者: 881374
第二章、これぞ最も現実的な異世界転生の実現方法だ⁉
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21/22

第18話、むしろ『なろう系の主人公』たちが、逆転生してきたりして⁉(前編)

「──よっ、『女神様』、調子はどうだい?」




 私が極秘の地下研究所のラボの中で、いつものように『実験動物』たちの経過を観測していたら、同僚の自称『天使』の男が声をかけてきた。




「ちょっと、正規の業務中に人を、『女神』なんて呼ばないでよ⁉」


 そうなのである、私が『女神様』になるのは、あくまでも『副業』の時だけなのだ。


 最先端のVR技術で作成した、全天が真っ白でいかにも神秘的に装った仮想現実空間において、純白の衣装を身にまとい、ブロンドのウイッグと青いカラコンを着けて、馬鹿な21世紀の日本人どもを誑かしている時とは違って、今ここにいる『素顔の私』は、『転生者』どもが『異世界』と呼ぶこの世界においても、あまりぱっとしない、茶髪に焦げ茶色の瞳に、中肉中背の貧相な肢体に白衣をまとった、いかにもくたびれたアラサー女性研究者でしかなかったのだ。


 その『副業』もすべては、現在この秘密研究所行われている『実験』──文字通りの『神へと至る道』である秘匿名コードネーム、『シン・ジンルイ最終計画』のためなのである。


「──それで、あなたの『実験』の進捗状況のほうは、どうなのよ?」


「……あー、うん、見ての通りだよ」


 そう言って彼が白衣のポケットから取り出した携帯端末を操作すると、我々の前面の空間いっぱいに巨大なホログラムスクリーンが展開されて、そこにいくつかの映像がマルチに表示された。





 ──大きな檻の中で、狂ったように暴れ回っている、巨大な蜘蛛。


 ──()()()()()()からずっと、ただただ高速でぷるぷると震え続けるばかりの、人間ほどの大きさをしたスライム。


 ──文字通りただの屍であるかのように、バラバラに散らばっている、もはや何の生気もないスケルトン。


 ──無造作に台座に突き刺さっている、一振りのつるぎ


 ──研究員たちが真剣な表情で調査し続けている、一見何の変哲もないように思われる、極ありふれた自動販売機。


 まさしく『混沌カオス』を体現するかのような有り様であったが、これらは私たちにとって唯一模範となる、『ゲンダイニッポン』における、『成功例』を模倣した()()()であったのだ。


「……蜘蛛とスライムは、完全に失敗のようね」


「やっぱ、人間とはまったく異なる生物に転生させるなんて、無理がありすぎたのさ」


「しかし『現代日本』における『聖典』──いわゆる『Web小説』では、大成功を収めたらしいじゃない?」


「ああ、まあね、それはそれは大勢の、『信者どくしゃ』を生み出したそうだ」


「『めでぃあみっくす』展開でも、『エンバン』が飛ぶように売れたらしいしね」


「特にこのスケルトンのやつなんか、現代日本において『なろう教』を崇めている現聖典においては、トップクラスの信仰を集めているそうだぞ?」


「……しかしここで召喚した現代日本人の若者なんて、『──おいおい、せっかく異世界転生したのに、スケルトンはないだろう? いくらハーレムつくっても、意味ないじゃないか! 何? 「魔物たちのオーバーロード」にしてくれるって? 俺はエルフ娘や獣人(ネコミミ限定)娘が好みなの!』とか何とか言い出して、ごねにごねて大暴れするものだから、仕方なく現代日本にお帰りいただいたじゃないの?」


「聖剣や自動販売機への転生術式も、実行以来全然反応がないしなあ……」


「……いや、蜘蛛やスライムやスケルトンならまだわかるけど、何でうちの上層部は、無機物に『転生者』を召喚しようなんてしたわけ?」


「現代日本で言うところの、『人工知能』の代わりにしようとでも思ったんじゃないのか?」


「聖剣に、索敵(サーチ&)警告アラート機能や自動防御オートブロック機能をつけたりとか?」


「まあ、そういうことは、それこそ現代日本の科学技術を利用すべきとは思うけどね」




「……となると、我が研究所の期待を一身に担っているのが、今や『これ』だけになったわけだな」




 ──そのように『天使』がぼやくとともに、画面が切り替わって映し出されたのは、二階建ての民家ほどの大きさを誇る培養槽の中で、不気味な脈動をし続けている、なにがしかのモンスターの物と思われる、巨大な卵であった。




「……ああ、これまでの失敗を踏まえて、すでに成長過程にあるこの世界の生物に、現代日本からの転生者を召喚するのではなく、まさに『卵状態のドラゴン』に召喚して、それぞれ異なった『魂』と『肉体』との完全融合をはかるってわけだ」


「『最終計画』の発動も、これの成功()かんにかかっているしね」


「今度こそ、失敗は許されねえよな。──それで、あんたのほうの『実験』の進捗具合は、どうなっているんだ?」


「こっちも、見ての通りよ──と言いたいところだけど、パッと見ただけじゃわからないか」


『天使』がホログラムスクリーンを消し去るや、再び目の前に現実の私の研究室ラボの光景が展開される。


 ずらりと十数個ほど並んでいる、棺桶そっくりそのままの、一人一人人間を安置している筐体。


 この部屋の中央にそびえ立つ、巨大なるメイン量子コンピュターと接続されているそれらは、まさしく最新鋭の『量子魔導クォンタムマジック転生マシン』であった。


「……すげえな、あの一つ一つの中で、それぞれの『検体』が、『死に戻り』を無限に繰り返しているわけだ」


「全員じゃないわ。すでに三分の二以上が、脱落してしまったわ」


「は? おいおい、たった三日でかよ⁉」




「──そりゃあ、あくまでも『夢』のようなものとはいえ、何百回何千回何万回何億回何兆回と、無限に繰り返し死に続けていたら、精神的に参ってしまうのも、仕方ないでしょうよ」




「まあなあ……しかし、よく異世界転生するための機械マシンを、『死に戻り』に応用するなんてことを、思いついたものだよな?」


なあに言っているのよ、異世界転生の『転生』は、『生まれ変わり』を意味するのであって、『死に戻り』とは、『同じ世界の中での転生か、違う世界においての転生か』の違いでしかなく、本質的にはほとんど同一のものなんじゃないの?」


「『仕組み』的にはな。──しかし、『異世界転生』のほうは、基本的には一度で終わって、後はそれっきりなのに対して、『死に戻り』のほうは、延々と『死ぬこと』を繰り返さなくてはならないなんて、体験者にとっては大違いだろうが?」


「それは、あなたのほうの『実験』だって、同じようなものでしょう? 異世界転生したかと思ったら、蜘蛛やスライムとして生まれ変わってしまうなんて、人間の精神としては、耐えきれるものじゃないでしょうが?」


「──うっ」


「……とにかく、このようないかにも『非人道的』実験を秘密裏に行っているのも、現代日本からこの世界への異世界転生の仕組みを利用して、真に理想的な人間『シン・ジンルイ』を生み出すことこそを目標としているのだからして、私たちの一研究員の感情論なんて、何の意味も為さないわけなのよ」


「──それに被験者のほうも、非合法的に内々に手に入れた、『死刑囚』たちだから、構わないってか?」


 ──っ。


「そ、そりゃあ、少しも胸が痛まないかと言うと、嘘になるけど、これもすべては、本来は『剣と魔法のファンタジーワールド』でしかなかった、この世界の発展に寄与するためだと思えば、心を鬼にしてでも、成し遂げるべきなのであって──」


「へっ、嘘つくんじゃないよ、あんたにとって大切なのは、己の研究者としての名声と、飽くなき実験欲を満たすことだけだろうが?」


「い、いいじゃない、それが研究者のさがってものでしょう? それとも、あなたは違うって言うの?」


「ああ、違うな」


「……え?」




「本物の研究者だったら、こんな面白そうな実験を、金で用立てた死刑囚なんかでなく、まずは自分自身で、試してみるもんじゃないのかね?」




 ──っ。


「いや、そんなこと言ったって、こんな危険そうな実験においては、まずは安全性を確認することが、先決でしょうが⁉」


「……ああ、嘆かわしい、たとえ現代イギリスとファンタジー異世界とでは、世界観はまったく違えども、研究者の『魂』は同一のものだと、信じたかったのにのう」


「現代イギリス…………って、ちょっと待って、あなた本当に、『天使』なの?」




「──うんにゃ、君たち風に名乗れば、『天使』と言うよりも、『星』かのう」




「星? 星って、『スター』の星?…………って、まさか⁉」




「ああ、我こそは、まさしく『転生マシン』の生みの親であり、21世紀のイギリスの誇る、ケンブリッジ大学史学部量子魔導(クォンタムマジック)研究室の室長である、スター教授じゃよ」




 ──‼

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