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ケンブリッジ大学史学部シリーズ  作者: 881374
第二章、これぞ最も現実的な異世界転生の実現方法だ⁉
19/22

第16話、『異世界転生事始め』⑤異世界にはやっぱりジェット機だよね⁉

「異世界は何よりも、剣と魔法のファンタジーワールドだからこそ、飛竜ワイバーンとか飛空艇とかではなく、最新鋭のジェット機が似つかわしいのじゃ!」


 ………………………………は?




 毎度お馴染みの、ケンブリッジ大学史学部量子魔導(クォンタムマジック)研究室へと、唯一の研究員である僕ことハリスンが訪れたところ、室長にして直属の上司であるスター教授が、開口一番いつもながらに珍妙なることを宣ったのであった。




「……ああ、もしかして第12話の、異世界に飛行機械を持ち込む話の続きですか? いやでも、いくら本作が『異世界転生のSF的考察』をテーマにしているからと言って、いきなりファンタジーワールドにジェット機を登場させるのは、やり過ぎなんじゃないですか?」


「そんなことはないぞ? 実はの、普通のプロペラ型の飛行機に使われているレシプロエンジンよりも、より高性能であるジェットエンジンのほうが、この現代世界よりも科学技術が大幅に遅れているファンタジー異世界においては、あらゆる点において『ふさわしい』航空機用のエンジンと言えるのじゃよ」


「なっ、ジェット機のほうが、ファンタジーワールドの飛行機械として、ふさわしいですってえ⁉」




「おそらく君だけではなく、ほとんどの人たちが誤解していると思うけど、航空機用のエンジンというものは、複雑な機構にすればそれだけ高性能になるというわけではなくて、単純シンプルであればあるほど、より優れた効果を発揮することができるのじゃ。このことについてあえて細部をはしょって説明すると、エンジンというものは燃料を燃やして、その爆発力というか熱量というかをエネルギーにして推進力を得るんだけど、当然爆発力や熱量をそのまま推進力に利用できれば、より強い効果を発揮できるものの、一般の自動車のエンジンなんかとほぼ同様のレシプロエンジンは、回転運動だけではなく、ピスト運動や過給器(いわゆるターボエンジン)の稼働のために、余計なエネルギーを費やしてしまうので、非常に非効率なエンジンでしかないのじゃよ。それに比べてジェットエンジンは、自分自身が高速で飛びながらエンジンに取り入れた空気に、燃料を混ぜて燃やして高温化することで圧縮して、いわゆる『ジェット気流』を人工的に作り出して、それを推進力にするという、非常にシンプルな機構になっているから効率も良く、レシプロエンジンよりも速度性や高高度性において、遙かに優れた性能を誇っておるのじゃ。特に、究極のジェットエンジンとも言われる『ラムジェットエンジン』においては、極論すれば『ただの筒のようなもの』でしかなく、ただ単純に高速で空を飛べば、エンジンに取り込まれた空気が勝手に圧縮してくれて、後は燃料を混ぜてジェット気流にして排出すれば良く、通常のジェットエンジンよりも圧倒的にシンプルな機構でありながら、より高性能を得ることができるという、まさしく理想的な航空機用のエンジンなのだよ!」




「──‼」

 飛行機用のエンジンはシンプルであればあるほど効率が良くて、中でも一番理想的なのは、『ただの筒そのもの』の、ラムジェットエンジンだってえ⁉


「更には燃料事情についても、ジェットエンジンの採用は、圧倒的なメリットをもたらしてくれるのじゃ。君も自動車を持っているのなら、ようくご存じじゃろうが、レシプロエンジン等のいわゆる『ピストンエンジン』は非常にデリケートだから、最高の性能を発揮させるためには、最上級の燃料を使用しなければならないのであり、自動車に興味の無い者だったら、『ハイオクって何だ? ガソリンを変えるくらいで、そんなに性能が変わるのか?』とか、思ったことがあるかと思うけど、()()()()()変わるんだよなあ、これがあ。でもこれって、ハイオクガソリンがすごいのではなくて、ピストンエンジンが──つまりは、レシプロエンジンが、()()()だけなのじゃ。だって、()()()()()ガソリンをいくら使い続けていても、本来秘められている性能をいつまでたっても出せないんじゃ、ただの『欠陥品』ではないのか? 自動車メーカー関係者の皆様は一度、『レギュラー』の意味を辞書で調べてみたらいかがかのう?」


「──ちょっ、だからむやみやたらと、各方面にケンカを売らないでくださいって、言っているでしょうが⁉」




「それに比べてジェットエンジンは、ただ単に飛行中に取り入れた空気を熱するためだけに燃料を使っているので、極論すれば『燃えれば良く』、何と第二次世界大戦当時における、ジェット機先進国であったドイツにおいては、ジェット機に『軽油』や『灯油』を用いた例もあったそうじゃよ」




「えっ、軽油や灯油なんかで、ジェット機を飛ばすことができるんですか⁉ 何か『ジェット燃料』とかいったら、特別に良質で高価なオイルが使われているとばかり思っていたのですけど?」


「それが情弱シロウトの浅はかさというものじゃよ。そうそう、同じく第二次世界大戦中の大日本帝国におけるエピソードの一つで、『松根油』ってあったのは知っておるか? 書いて字のごとく、『松の根から絞り出した油』を、航空機用の燃料として利用しようとしたのじゃが、良く『当時の日本の逼迫した燃料事情を揶揄する』時に使われる逸話なんだけど、ほんと、こういったところも、人の受け売りばかりで自分の脳みそで考えようとはせず、『ジェットエンジンの開発史』のことを本当は何も知らない、有象無象どもは哀れじゃよな。実は何とこの『松根油』というのは、当時旧日本軍が国を挙げて開発に取り組んでいた、ジェット自爆機──もとい、ジェット特殊攻撃機『橘花』用の燃料として、慌てて用立てようとしていたものなのだよ。何せさっきも言ったように、ジェットエンジンならば、極論すれば『火を燃やすもの』=『油』だったら何でも良く、『松根油』だってもしかしたら使えたかも知れず、けして敗戦国をあざ笑い鞭打つための『笑い話』なんかでは無かったわけなのじゃ」


「ええっ、『松根油』って、ジェット機用の燃料として、使われる予定だったんですか⁉ 僕もてっきり、単なる『お笑い旧日本軍』的なネタとばかり思っておりました」


「とにかく、私が言いたいのは何よりも、ジェットエンジンはその使用燃料においても、安上がりかついろいろと融通が利き、特に戦時中のような非常事態においては、より好ましい航空機用エンジンと言えるわけなのじゃ。──となると、とてもハイオクガソリン等の高品質な燃料を精製できるとは思えない、ファンタジー異世界においても、ジェットエンジンこそが航空機用発動機としてふさわしいことが、よくわかるじゃろう?」


「……あー、確かに。下手したら『ただの筒でしかない』という単純な機構でありながら、場合によっては『松根油』なんかの、冗談のように低質な燃料でも稼働できて、しかも旧来のピストンエンジンよりも高性能ときたら、これほどファンタジー異世界にふさわしい、飛行機械用のエンジンはないでしょうね。──とは言え、れっきとした精密機械であるジェットエンジンを、文化的には『中世ヨーロッパ』レベルでしかない異世界において使用するに当たって、何か問題点等は無いんですか?」


「おお、さすがは我が助手、いつもながらに鋭い意見じゃ、感心感心。もちろんジェットエンジンも、いいことばかりではなく、欠点も少なからず存在しているぞ。──まず何と言っても、ピストン(レシプロ)エンジンよりも非常に燃費が悪くてな、第二次世界大戦後に各国において、レシプロ機からジェット機へと移行する際に、最大のネックになったほどじゃ。ただし現在においては、いわゆる『空中給油』等によって、必要なつど何らかの手段で燃料を補給する手段が講じられておるがな」


「ああ、『空中給油』ですか、なるほど。何せジェット機というのは、発進時に一番燃料を食うって言いますからね。一度飛行状態に入った後で、燃料を供給するのは、非常に効率的なやり方でしょうね」


「更には、特にラムジェットエンジンにおいて顕著な欠点なのじゃが、エンジンに空気を大量かつ高速に取り入れるためには、航空機自体が高速に飛んでいることが必要となり、すると当然離陸してから高速状態になるまでは、ラムジェット以外のエンジンが必要になるという、何か『とんち話』みたいになってしまうのじゃよ」


「──ぷっ、何ですか、それ。『高速で飛行するためには、最初から高速で飛行していなくてはならない』なんて、ほんと、『ギャグ』だか『禅問答』そのものじゃないですか?」


「これに対する対応策としては、高速状態になるまでは、別の大型機の直下に吊り下げて運搬してもらったり、本体に普通のターボジェットエンジンを追加して装備したり、ラムジェットとターボジェットの合いの子みたいなエンジンを使用したりしているといった、工夫をしているのじゃが、それでも十分ではなく、現在においても本格的な実用化はなされていないのじゃ」


「へえ、ラムジェットなんて、結構昔から名前を知っていたから、とっくに実用化されているとばかり思ってましたよ」


あと、いくらジェットエンジンが比較的、機構が単純であるとは言っても、何度も説明したように、エンジン内で空気を熱したり爆発させたりしなくてはならないので、この現代世界においても最先端の金属加工技術によって造られた、非常に熱に強い材質の部品が必要になるが、科学技術や工業技術が大きく立ち後れている、ファンタジー異世界においては、とても実現不可能と思われることが挙げられるかのう」


「え? とすると、『空中給油』とかもファンタジーワールドでは無理だろうから、今挙げた問題点すべてにおいて、異世界ではとても解決する見込みはなく、ジェット機の導入なぞ、夢のまた夢と言うことになりませんか⁉」




「そう思うじゃろ? だが心配ご無用! まさにそのための、『量子魔導クォンタムマジック』技術なのじゃからな!」




「『量子魔導クォンタムマジック技術』って…………ああ、これまた第12話で述べられていた、現代世界の最先端の科学技術と、ファンタジー異世界の古来よりの魔法技術とを、真に理想的な形で融合させた、いわゆる『ハイブリッド技術』による、これからの異世界の更なる発展の鍵を握る、革新的技術文化のことでしたっけ」




「そうじゃ、つまり、『科学技術』で立ち後れているというのなら、ファンタジー異世界ならではの、『魔法技術』で補いましょうって、わけなのじゃよ。──そしてそれを踏まえて、ファンタジー異世界におけるジェットエンジンはすべて、より高性能で機構がシンプルな、ラムジェットエンジンこそを使用することにすれば、今挙げた諸問題は、一気に解決の運びとなるのじゃ。それというのも、すでに現代世界においても確認されているように、ラムジェットエンジンは非常に効率がいいから、燃費に関してはほとんど問題ないし、エンジン内部の耐熱機構についても、錬金術を使って熱に強い金属を新たに創出したり、もしかしたら異世界ならではの熱に強い魔法金属が探せばあるかも知れなかったり、いっそのこと魔法使いのパイロットの魔力によって、エンジン内が自動的に冷却されるようにしたりすればいいしのう。更には、『最初から高速であることが必要というとんち話』についても、要は『流入空気』が高速であればいいんだから、やはり魔法使いのパイロットが地上に駐機している状態からすでに、風魔法か何かでエンジン内に強風を吹き込ませることによって、ラムジェットを始動させて、そのまま離陸して航行していけばいいのじゃよ。──つまり、現代日本の高度な科学技術と、ファンタジー異世界の古来よりの魔法技術とが合わさってこそ、現代日本でもいまだ本格的には実用化されていないラムジェット機を、異世界において実用化することだって、十分可能だということなのじゃ」




「うおっ、高性能ながらも機構がシンプルなラムジェットを主要エンジンとして、それに魔法技術をほんのちょっぴり付け加えるだけで、あれほど難問と思われていた、異世界へのジェット機の導入問題が、一挙に解決してしまったではないか⁉」




「ただし、ここで肝に銘じてもらいたいのは、あくまでも科学技術のほうを主体メインとし、魔法技術のほうは補助的にのみ、使っていくべきだということなのじゃ。何せ魔法の箒ぐらいならともかく、軍用機などといった鉄の塊を、魔法だけで動かすなんて、非効率すぎるからな。武器等の兵装についても同様で、何も『魔法のビーム』なんか出せなくても、普通の機関砲や対空ミサイルで十分じゃろう。──そう、基本的には現代世界レベルの軍用機を、そのまま飛ばせれば十分なのであり、もし戦争状態になった場合も、敵の飛空艇やワイバーンといった航空兵力を、速度や武装において圧倒して、制空権を完全に掌握して、戦争自体を優位に進めることができるじゃろうよ」




「……ああ、確かに日本産のWeb小説においても、現代の最先端の兵器によって、異世界人の中世風騎士団はもちろん、魔法使いやモンスターの軍団を圧倒するといった、『ミリオタ無双』作品(モノ)が人気を博していますからね」




「とにかく今回のエピソードにおいて、読者の皆様にご理解していただきたいのは、科学技術と魔法技術との融合ハイブリッドこそが、これからのファンタジー異世界の更なる発展において、非常に重要な鍵を握っているということなのであり、本作もまさにこのことを最大のテーマとして、既存の異世界転生系Web小説における、個々の問題点の解決を図っていく所存ですので、これからもどうぞよろしくお願いいたします♡」

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