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ケンブリッジ大学史学部シリーズ  作者: 881374
第二章、これぞ最も現実的な異世界転生の実現方法だ⁉
18/22

第15話、『異世界転生事始め』④主人公が死亡フラグ体質なのは当たり前⁉

「現代日本からの転生者──すなわち、日本産の異世界転生系Web小説の『主人公』は、けして『不幸体質』であってはならぬのである!」


 ………………………………は?




 毎度お馴染みの、ケンブリッジ大学史学部量子魔導(クォンタムマジック)研究室へと、唯一の研究員である僕ことハリスンが訪れたところ、室長にして直属の上司であるスター教授が、開口一番いつもながらに珍妙なることを宣ったのであった。




「……何ですか、『不幸体質』って。何か最近このコーナーって、どんどんと『異世界転生のSF的考察』というテーマから、離れていっているように感じるのですけど?」


「そんなことはあるまい! 例えば『ゲーム転生』系の作品なんかで、『死亡フラグ』が立ちっぱなしの主人公に、次から次へと困難な問題が降りかかるという、テンプレ作品なんて、一般のラノベで言うところの、『不幸体質系主人公』そのものではないか?」


「あっ、そうか! 『ゲーム転生』とか『死亡フラグ』とか言うから、何か異世界系作品独自のテンプレと思い込んでいたけど、あれってただ単に『不幸体質系主人公』なだけだったんだ⁉」


「うむうむ、このようにジャンルや発表の場にかかわらず、なぜに作家たちが見境もなく、『不幸体質系主人公』を繰り出してくるのか、わかるかね?」


「……それは、当然のごとく『不幸体質系主人公』が、ジャンルや発表の場を問わず、読者から人気だからじゃないですか?」


「確かに一見そう見えるかも知れん、しかしそれはあくまでも『結果』であり『前提』でしかなく、『理由』ではあり得ないのだ」


「へ? 理由では無いって…………ていうか、結果と前提とでは、相反するのでは?」




「いいや、そんなことはない。──なぜなら、Web小説とかラノベとかにかかわらず、創作物の『主人公』というものは、基本的にすべて『不幸体質』なのだからな!」




 はあ?


「創作物の主人公が、全員『不幸体質』って……」


「ほれ、大体主人公というものは、次から次に『難問』とか『トラブル』とかに見舞われることによって、当該事件──すなわち『作者から与えられたストーリー』を解決していくことが、『使命』というか『役割』というか、キャラクターとしての『すべて』じゃろうが?」


 ──‼


「あーあーあー、言われてみれば、その通りじゃん⁉ あらゆる創作物の中において、『問題を解決()()()主人公』なんていやしねえ! と言うことは、必然的に──」




「あらゆる主人公は、『不幸体質』でないと、そもそも『物語は始まらない』と言うことに、なってしまうんじゃよ」




 ……あー。


「そりゃそうですよねえ、何らかの事件やトラブルに見舞わなければ、ストーリーは始まらないんだから、主人公は必然的に全員、『不幸体質』にならざるを得ず、それなのに改めて、『うちの作品の主人公は不幸体質なんだぞ!』とか言っている作品なんて、どう考えてもおかしいですよね。ミステリィ小説で言えば、『うちの作品の名探偵は、「事件引き寄せ体質」だぞ!』と大声でわめき立てているようなもので、『何を当たり前のこと言っているんだ、ボケ!』って感じですよね」


「やっと、わかってくれたようじゃな。ちなみにそのたとえで言うと、ハーレムもののWeb小説において、『うちの作品の主人公は、「モテモテ体質」だぞ!』と、端から設定されているようなもので、ぶっちゃけて言うと、それって、『違う』じゃろう? 本来ハーレムものとは、『いかにもパッとしない非モテの陰キャ野郎』の主人公が、だんだんとモテモテになっていくから面白いんじゃないか? それなのに、最初から主人公がモテモテのハーレムものなんて、それこそハリスン君のように、本当リアルに非モテの陰キャ野郎にとっては、ウザいだけじゃろうて」


「──誰が、『非モテの陰キャ野郎』だ、殺すぞこのじじい⁉」


「……あ、すまん、ちょっとした冗談だったのに、そんなに激高するとは、さては図星じゃったか。ほんとすまん、そんなつもりはなかったのじゃ」


「いやだから、そこでマジレスすんなや! 本当に僕が、リアルで『非モテの陰キャ野郎』みたいになるじゃないですか⁉」


「ま、まあ、とにかく創作物の主人公が、最初から『モテモテ体質』や『不幸体質』であったりしては、読者の共感を得ることはできないということなのじゃ。そもそも最初から不幸な主人公が、少々不幸な目に遭ったところで、何が面白いと言うのじゃ? それよりもむしろ、最初は幸福の絶頂にあった主人公が、どんどんと不幸のどん底へと陥っていくところこそが、我々読者の嗜虐心を大いに刺激してくれるんじゃないか♡」


「──怖っ、すっげえ『昏い笑顔』で、何言ってくれちゃっているの、この教授⁉」


「冗談じゃよ、冗談! 本当に面白いのはむしろ、どん底に突き落とされてからの、『巻き返し』だよな! つまり日本産のWeb小説で言えば、『追放』や『NTR』があるからこそ、『ざまぁ』や『成り上がり』のカタルシスが、盛り上がるってわけなのじゃ!」


「うん、それは確かに同意ですね! 何だ、教授もちゃんとまともな『結論』を考えておいて、冗談を言っていただけなんだ」




「わかってくれたようで、何よりだ! ──ということで、そろそろまとめに入るとしよう。言うなれば『不幸体質』とは、現在のWeb小説やラノベで見られるような、特定のキャラの『設定』なんかではなく、作品全体の『演出』の一つとすべきなのであり、例えばテンプレの異世界転生系作品で言えば、物語の冒頭において女神からスキルをもらう際に、『あなたには異世界最高の無敵のチート能力を与えますが、その代償として、そのスキルを使うごとに、不幸な出来事が一つだけ、あなたを見舞うことになるでしょう」とかいった、パターンにするのが望ましいじゃろうな。──つまり、プロかアマかを問わず仮にも作家を名乗るつもりなら、馬鹿の一つ覚えみたいに、『この作品の主人公は不幸体質である』なんて、あからさまにキャラ設定したりはせずに、あくまでも作品全体の演出として、ストーリーの中に溶け込ませるべきなのじゃ」




「……相変わらずきっつい物言いだけど、僕も今回の教授の言い分はもっともだと思うから、作家の皆さんはテンプレばかりに走るあまり、『テンプレのためのテンプレ』なぞという、もはやお笑いぐさにもならないような事態ドツボに陥らないように、何事も『自分自身の脳みそで考える』ことに努めて、何よりも自分だけのオリジナル作品を創り上げることこそを心掛けるよう、どうぞよろしくお願いいたします♡」

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