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ケンブリッジ大学史学部シリーズ  作者: 881374
第二章、これぞ最も現実的な異世界転生の実現方法だ⁉
14/22

第11話、記憶喪失と二重人格。

「──読者の皆様、こんにちは、ケンブリッジ大学史学部量子魔導(クォンタムマジック)研究室所属の研究員の、ハリスンでございます」


「わしは室長にして、ハリスン君の直属の上司である、スター教授じゃ」


「さて、真に理想的かつ現実的な『異世界転生の在り方』を模索することこそを目標とする、本作の第二章もすでに十一話目ですが、今回の『お題』は何でしょうか?」


「よくぞ聞いてくれた、今回は何と、異世界転生とかWeb小説とかどころか、小説そのものを始めとする漫画やテレビドラマ等の創作物全般において、あまりにもお馴染みのモチーフである、『記憶喪失』を取り上げるので、特に作家の諸君は是非とも参考にしてくれたまえ!」


「へ? 『記憶喪失』って、それって、前回のテーマの、『別人格化SF』の中に含まれていたのではなんですか?」


「うむ、そもそも前回、本作にとっては一見畑違いであるかのような『別人格化SF』を取り上げたのは、現実世界においてリアリティを維持したまま『別人格化』を実現するには、異世界転生の仕組みを利用することになるからと述べたが、実は他にも重要なる理由があってな、それを適切に説明にするには、『別人格化』の中でも特に『記憶喪失』をメインモチーフにしたほうが望ましいので、今回改めてコーナーを設けたわけなのじゃ」


「……う〜ん、異世界転生における『記憶喪失』と言うと、毎度お馴染み日本産の異世界系Web小説においてよく見られるように、何とよりによって語り手である主人公自身が、転生以前の現代日本当時の記憶を失っていたり、その他重要な役所を演じるべきキーパーソンとかも記憶喪失だったりして、彼らに過去の記憶さえあれば、本来謎でも何でも無いことが、むしろ物語の鍵を握る重要な情報になったりするといった、いかにも『御都合主義』な作品が多々目につくので、馬鹿の一つ覚えみたいに記憶喪失を多用するのは、できるだけ控えていただきたいんですけど?」


「うおっ、今回は珍しく、最初から果敢に攻めてくるな、君い? ……しかしのう、基本的に自作の中で『記憶喪失』を扱うかどうかを決めるのは、当然のごとく各作家さん次第だからのう。とはいえ、異世界転生イベントの円滑なる進行を図る意味からも、当該異世界系Web作品の読者様が嫌気がさすような、あまりに御都合主義の『記憶喪失』シークエンスの多用は、望ましくないと言わざるを得ないがな。まあ、その辺は、各Web作家先生の皆さんの、『良識』に期待するしかないが、あえて作品の作成時に気をつけていただきたい点を挙げるとすれば、異世界転生系の作品では、他人の記憶を意図的に奪うことすらも十分に可能な点と、記憶喪失の前後で安易に『同一人物を別人扱いしない』こと、の2点かのう」


「……あー、なるほど、それこそが教授が最初におっしゃっていた、あえて本作で『別人格化』を取り上げるべき、『前回とはまた別の理由』ってわけなんですね? 特に前半の『他人の記憶を意図的に奪うことすらも十分に可能』に関しては、いわゆるファンタジー系の異世界であれば、それこそ『魔法』や『呪い』による記憶の消去や操作なんて、やり放題でしょうからね」


「いやいやいや、何を言っとるのかね、ハリスン君! 普通の異世界系作品なら、それでいいかも知れないが、本作は『異世界転生系イベントの、SF的実現可能性を追究する』ことこそをテーマにしておるのではないか⁉ 本作ならではの科学的見地──すなわち毎度お馴染みの、集合的無意識論や量子論に基づいて考察していかなくてどうする⁉」


「へ? 『記憶喪失の意図的な実現』を、集合的無意識論や量子論に基づいて考察していけって……………………ああーっ⁉ そういえば、本作第一章の【タイムトラベル編】において、『未来へのタイムトラベル』を現実世界ででっち上げるために、助手の僕を無理やり実験台にして、何と五年分だけ記憶を喪失させて、僕自身の主観では一瞬にして五年後にタイムトラベルしたことになるという、量子コンピュータを土台にしたインチキタイムマシンを製作した事がありましたが、あれを再登場させるつもりじゃないでしょうね⁉」


「い、インチキとは、何たる言い草かね、失礼な! ……いやまあ、『ナノマシンを注入することで記憶を奪った』とか、我ながらいかにもいい加減だったかなあと思わぬこともないが、今回のすでにお馴染みの『異世界転生マシン』による、『意図的な記憶喪失の実現化』は、根本的に次元が違うのじゃ! 何せ『記憶を失わせる』と言うよりも、『いわゆる「別人格」的な記憶を上書き』するのじゃなからな!」


「へ? 別人格的な記憶を、上書きするって……」


「ラノベやSF小説等における『記憶喪失』作品の最近のトレンドと言えば、いわゆる『いつかは消える定めの記憶喪失時のみの仮人格とのお涙頂戴の悲恋物語』じゃろうが? だったら初めから、別に『記憶喪失』でもない人物の脳みそに、『別人格的な記憶』を無理やりインストールして、ある意味『二重人格』にしてしまえば、実質上は『記憶喪失』と同じ状態にできるわけであり、だったら集合的無意識論と量子論とに則って『別人の記憶や知識』をインストールすることができる、当研究室自慢の『異世界転生マシン』でも、十分実現可能というわけなんじゃよ」


「な、なるほど、巷のいかにもステレオタイプの『記憶喪失』作品(モノ)て、どれこれも極論すれば、『二重人格』作品(モノ)そのまんまですものね」


「……本当は、記憶喪失中の人物を『別人』として描写すること自体が、大きな大間違いなんじゃが、それについては後で詳しく述べるとして、とりあえず以下の解説においては、『記憶喪失』化ということは、同時に『二重人格』化でもあるものとして、認識していただくことしよう」


「それではまずは何と言っても、当研究室の『異世界転生マシン』による『意図的な記憶喪失』の実現方法を、具体的かつ詳細にお教えいただけませんでしょうか?」


「基本的には本作において何度も述べている、『異世界転生』の真に現実的な実現方法とまったく同様に、かのユング心理学が言うところの、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってきているとされる、いわゆる『集合的無意識』に対象者を強制的にアクセスさせて、量子論で言うところの『別の可能性(パラレルワールド)の自分自身の記憶や知識』を脳みそに刷り込むことによって、『記憶喪失』や『二重人格化』を、事実上実現させるわけなのじゃ」


「人を記憶喪失なんかにしちゃって、ちゃんと元に戻せるのですか?」


「もちろんじゃ。何せ今回の手法は、第一章で君自身を実験台にした時とは違って、本当に記憶を奪うわけではなく、一時的に別の記憶を上書きしているだけだから、ただ単に集合的無意識とのアクセス状態をカットして、『別の記憶と知識』の供給をストップするだけで、自然と元の記憶へと戻れるわけじゃよ」


「へえ、今回の『記憶喪失』化については、『安全面』にもしっかりと配慮しているんですねえ。──それでは続いては、すでに何度も話題に上っている、もう一つの重要なる留意点である、『記憶喪失の前後で安易に同一人物を別人扱いしないこと』についても、ご解説してください」


「記憶喪失や二重人格化と言っても、集合的無意識を介して一時的に『別の可能性(パラレルワールド)の自分自身の記憶や知識』を脳みそにインストールするだけなのじゃから、実のところは、SF小説やラノベや漫画やアニメや実写ドラマ等でよく見受けるように、まったくの別人になったりするわけではなく、あくまでも同一人物であり続けることこそを、『記憶喪失』を題材にした作品を作成する際においては、すべての作家は肝に銘じるべきだと思うのじゃ」


「ううっ、教授だって辛辣さに関しては、けして僕に負けてはいないではありませんか? でも確かに、最近のSF小説やラノベときたら、『記憶喪失』とか『二重人格』とか言うと、別人格化の前後でまるっきり別人扱いして、例えば記憶喪失や二重人格の女性に対して、元々恋人だった男性が、相手はあくまでも同一人物だというのに、一つの人格ごとに一人の独立した女性扱いをして、記憶喪失が解消するとともに消え去った人格との『切ない別れ』を演出したり、二重人格の女性に対しては、『二つの人格=独立した二人の女性』と見なして、同一人物の女性の二つの人格の間で揺れ動いて、『擬似的浮気』をして自己嫌悪に陥ったり、記憶喪失同様に二重人格が解消する際には、消えゆくほうの人格に対して、『切ない別れ』を演出したりと、何が何でも無理やりに『切ない恋の物語』の方向に持っていこうとするのは、もういい加減やめて欲しいところですよね。──だって、これってあまりにも、『読者を馬鹿にしすぎ』でしょう?」


「確かにの。何せ、記憶喪失の前後だろうが、二重人格状態にあろうが、たとえ別人のように思えたところで、同一の肉体である限りは、あくまでも同一人物に過ぎず、ぶっちゃけて言えば、『別人格』なんていうご大層なものではなく、記憶喪失や二重人格化を切っ掛けにして、これまで秘められていた『別の()()』が顔を出しただけの話で、別にSF小説やラノベのモチーフになるような非現実的かつドラマチックな話ではなく、極ありふれた日常茶飯事に過ぎないんじゃからな」


「つまり要は、前回において詳細に述べたように、人間にとっての『本質』とは、人格とか記憶とか精神とか意識などといったものではなく、『肉体』にこそあって、同じ肉体のままであれば、どんなに人格や性格が変わろうが、同一人物と見なすべきだってことですよね」


「ひどいのになるとプロの作品でも、記憶喪失になった途端、左利きの女の子が右利きになったり、二重人格の場合でも、学園きっての俊足アスリートの少女が、別人格では鈍足になってしまうなんてのがあったけど、人間の利き腕は脳の仕組みによって決定されるので、同一人物の利き腕が記憶喪失によって変化することなぞあり得ず、もちろん足の速さが変化するなんて、もっての外じゃろう。まさにこれぞ文字媒体である小説における致命的欠陥とも言えるからして、とにかく小説家の皆さんはプロアマ問わず、『記憶喪失』や『二重人格』モノの作品を創る際においては、『人間の本質は肉体にこそあり』という大原則を、常に念頭に置いてもらいたいものじゃ」

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