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斯くして燠は暁に淀む  作者: えむ
第二章 深奥に滲む
23/42

01-03

「兎も角、灯りは確保したぞ。これで良かろう?」


 ローヤから首肯が返る。


「では小娘は任せたぞ」


 イドは指先の火を掌へ移してミラベルを顎で差す。

 ミラベルは軽鎧越しでも分かるくらい身体の線が細い。彼女本来の重さは大したものではないのだろうが、鎧纏いでは担ぐローヤの負担は計り知れない。

 イドとローヤは一番重量がありそうな胴部分の装甲を剥いでみたが、ミラベルが着用する白い肌着が汗でうっすら透けていて、二人は無言で鎧を元に戻して運ぶことにした。

 邪魔ではある。

 捨て置くことも出来た。

 しかしそうしなかったのは、ミラベルが知り合いによく似ていたのと、ここまで連れてきたならばせめて地下通路を出るところまでは同行させようとイドとローヤの意見が合致したからだった。

 イドにミラベルを担ぐ腕力は無いし、道を照らす役目もあるから、運搬役はローヤ単一で完結させる必要はあるものの、適材適所は協力体制を敷く中で重要な要素の一つだ。疲労を感じたら休憩を挟むということでローヤは二つ返事で承諾をした。

 歩みを進めながらローヤは、先を進むイドの背中へ問いを投げる。


「この道ってどこに繋がってんの」

「老樹の森の中じゃ」


 と、一口に言っても薄い青みがかった葉を茂らせる森は広大だ。

 たとえ開拓されかつての広さは狭まっていたとしても、出口があるところまで切り開かれているような事はない。それは、大広間の窓から森の様子を見た時に確認している。

 建造物が群れを成し、三本の塔が占める範囲は森全体の約三割程度の面積に留まる。イドが知る街の占有率から大幅に上がってはいるが。

 それでも出口は更にその先にある。


「出口まで大人の足で一日半はかかるぐらいかのう」

「すげえ距離だな。それに」


 ローヤは四方を見回して続ける。


「なんかところどころ手掘り感満載の部分もあるしよ。ベースは洞窟なんだろうけど整備したやつの気が知れねえよ」

「いや、別に苦労はせんかった」

「そうかよ。あーそういえば……ってちょっと待て」


 イドの返しを適当に流して次の話題に移ろうとしたローヤは寸でのところで踏み留まった。


「苦労はせんかったって……え? もしかして」


 こちらの反応を伺うように言葉を濁すローヤへ、イドは振り返らずに歩みを進めながら声を放る。


「儂らが掘削した」

「…………わお」


 そう。

 この道はイドとその友によって作られた地下道なのである。

 老樹の国(アトウッド)は生い茂る木々と周辺で起こる異常気象という要素が折り重なり、地形と天候を熟知していない諸外国にとっては脅威でしかない天然の迷宮を要していたため容易に攻め込まれる事も少なく、もともと緊急用の脱出経路を必要とする場面の想定をしていなかった。

 それが積極的な外交を始めると先代が国政の舵をきったことを契機に外からの出入りが増えた背景もあり、備えあればという思いも少なからずあって地下通路を作るに至った。というのが表向きの話。

 道を拓くに至った経緯は至極単純なもので、友が放った「秘密の通路というのは浪漫に溢れているよな」との言葉にイドが同調する形になり、作業に着手する運びとなった。というのが真相である。

 作業期間は約一年を要した。

 しかしながら、今のように暗闇に沈んだ通路として設計したわけではない。

 道の両壁に魔力(マナ)を充填した自動発光性のランタンを等間隔で配備していたはずなのだが。

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