twinkle―――光side
変わらない日々が続く。
何も変わらない。
そう思っていた。
少しずつ、少しずつ、
動き出していく。
昼休み時間。
「翠、今週のラジオ聞いた?」
「聞いたよー」
今日も、少し離れた場所からいつもの会話が聞こえる。
盗み聞きしてるわけではないが、それを聞きながら昼食を食べることが日課になっている。
「盗み聞きはダメだぞー」
少し遅れてやってきた純一郎が、ニヤニヤしながら目の前に座った。
「盗み聞きじゃない…」
「聞こえてきたから、って言うんだろ?」
「うん…」
聞かないようにするなんて、無理だ。
自分の話をしてるのだから、尚更。
あの話が面白かったとか、こんな話が聞きたいよねとか、二人の会話を参考にして、ラジオで話す内容を考えたりする。
(十分、盗み聞きだよね…)
「光、翠とは話したか?」
「え?話してないよ?」
「は?せっかく共通の話題があるのに話しかけてねーの?」
「共通の話題?」
「ラジオだよ、ラジオ!」
「…話せるわけないじゃん」
「なんでだよ?」
「僕はリスナーじゃない。コウ本人だ」
「そう言えばいいじゃん」
「やだよ」
「なんで?」
「知られたくない」
そう。知られたくない。
(辻村さんには、特に…)
学校ではこんなに遠い。
だけど、ラジオを通すと近く感じる。
・・・・・
『あ、叔父さん』
『光、久しぶりだな。元気か?』
『元気だよ』
『ラジオ、楽しいか?』
『楽しい』
『紹介して良かった。お前に合ってると思ったんだ』
『うん。叔父さんには感謝してる』
『それに、最近どんどん良い感じになってきてるぞ?』
『ほんと!?』
『お前から話しかけられてるように感じるときもある』
『………』
『始めた頃は台本を読むだけだったもんな(笑)』
・・・・・
学校では話しかけられない。だけど、ラジオ越しなら…
「話しかけられてるように、かぁ…」
「あ?」
「なんでもないよ」
「お前、見た目も暗いのに独り言なんて、もっと暗く見られるぞー?」
「純ちゃんさ、オブラートに包むことも覚えたほうがいいよ?」
「本当のこと言っただけじゃんかー」
「そんなんだから、彼女にもフラれるんだよ」
「っ!?やっぱりそうなのか?俺にはオブラートが足りないのか!?」
「今度、オブラート買ってきてあげるよ」
「おぅ!よろしく!…って、本物のオブラートは恋愛に必要ねぇよ!」
「ははっ(笑)」