表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
twinkle  作者: みはる
2/11

twinkle―――光side


「ねぇ、聞いた?」


「……何を?」


「もう!昨日あれだけ念を押したのに聞いてないの!?」


「あー………ラジオ?」


「そう!私の癒しのひとときを、翠にもお裾分けしてあげようと思ってるのに…また来週までお預けになっちゃったじゃん…」


「お裾分けしなくてもいいよー」


「ダメダメ!コウさんの癒しボイスは聞くべき!」


「確かに癒しを求めてるけどさー…」


「それに!昨夜は最後に私の投稿メールを読んでもらったの!」


「え、すごいじゃん。初めて?」


「そう!初!ペンネームだけどさ、私の名前を呼んでくれるコウさんの声に失神しちゃいそうだったー」


「…重症だね」


「癒されすぎて、ふにゃふにゃだよー!」


「そんなに良い声なのかねー?」


「聞いてないからわかんないの!それに顔だってイケメンなの!」


「ラジオ番組なのに顔わかるの?」


「この前、新聞にチラッと載ってたんだー。『地元の有名人』とかいうコーナーだったんだけど…確かにちょっとした有名人だよね、ラジオ番組のパーソナリティーも。……確かここに挟んでたはず…」


「持ち歩いてるの?どんだけ好きなの?(笑)」


「遠い存在の芸能人より、近くの王子様っていうじゃん!」


「……そんな言葉聞いたことないよ?」


「まあまあ、そんなこと言わずに………あ、あった!ほら!」


「確かにイケメン」


「でっしょー?」


「みっこの好きそうな顔だよねー」


「実は声よりも顔がタイプ!」


「清々しいくらいに素直(笑) みっこのミーハー発揮されてますねー」


「ラジオでしか会えないなんて…寂しすぎる!」


「はいはい」


「適当に流してる……来週は絶対聞いて!私と、コウさん語りしよ!」


「わかった わかった、来週はちゃんと聞くから。ほら!早く食べよ?お昼休み終わっちゃう!」


「やばっ!あと15分しかない!」





(俺の話をしてる…)


2列も離れて座る女子二人が盛り上がっている。

食堂内にはもう人が少なくなってきていたためか、話し声がよく通る。


二人が話していた内容は、俺がバイトでやってるラジオ番組のことだった。


(隣のクラスの渡部さんと……辻村さん…)


今の俺と同じようにパーソナリティーを務める叔父に「お前、良い声してんなー。…ラジオで喋らない?」と声をかけられたことが始まりだった。


嫌々ながら始めた今では、普段とは違う自分になれるこの仕事が、毎週の楽しみになっている。


(『うさぎのみっちゃん』は、渡部さんだったんだ…)


二人の話を聞きながら、黙々と食事をすすめる。


黒渕メガネ、黒髪モッサリ頭、ハリのない少し小さめの声、極めつけにコミュ障。友達と呼べる人は、今 目の前に座る幼馴染みの青木純一郎くらいだ。


こんな冴えない俺 坂本光と、地元のラジオ番組『きらきらひかる』のパーソナリティーを務める コウが、同一人物だなんて気付かないだろう。



「あっちの女子二人、お前の話をしてたな」


「…そだね…」



そう。この学校で知っているのは、純一郎だけなのだ。



「……………」


「…純ちゃん、早く食べないと昼休み終わるよ?」


「はぁぁ………」



純一郎は、目の前に紙切れがあったら飛んでいってしまいそうなくらいに、盛大なため息をつく。



「光。お前さ、そのモッサリ辞めない?」


「顔見られたくない」


「名前負けしてんよ?」


「知ってる」


「だったら、変えようよ!変わろうよ!」


「コウのときは頑張ってるよ?」


「普段からも頑張ってよ!」


「やだ。注目されたくない」


「ひーかーるー」


「嫌なものは嫌。…先に戻るよ?」


「待ってよ、俺も行く!」



「良い顔してるのに隠すなんて勿体ない…宝の持ち腐れだよ」などと、ブツブツ呟く純一郎の声を聞きながら、先程の女子二人の会話を思い出していた。


(…来週は辻村さんも聞くのかな?)


期待が心の中に広がり始めるとすぐに、不安の波が襲ってくる。


(大丈夫。大丈夫。今の俺は…)



「昔の光じゃないよ。今の光は、昔の光じゃない。大丈夫」



そう、肩を叩いてくれる純一郎に、小さくお礼を言った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ