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あとがき

挿絵(By みてみん)

(イラスト marie様)



いきなり暗い話から


私がこの作品を書き始めたのは、私の職場で社内いじめが始まった時期と重なります。

首謀者のマネージャークラスの上司から公然と「●●という社員から話しかけられても無視しろ」と命令され、日増しに同調圧力は強まりました。ありとあらゆる場所でいじめへの参加を要求されました。

私はその●●という社員が好きでも嫌いでもありませんでした。でも私は、小学校時代に自らがいじめの被害者でした。私の左の掌には、刺された鉛筆の芯の黒鉛が今も摘出しきれずに残っています。小学校では、他のクラスメートも教師でさえも、いじめられている私を助けてくれなかった。いじめられている方が悪い、見て見ぬふりをするのは、残念ながらこの国の文化です。私はこの国のそんな部分が嫌いです。

だから私は、結果としてその部署にいられない羽目になりましたが、最後までいじめへの参加を断り同調圧力に抵抗し続けました。


山本五十六にかけられた同調圧力と要求は、私のそれの次元をはるかに超えたものでした。

三国同盟締結。対米開戦。

五十六はアメリカに留学経験があります。勉強はそこそこに、デトロイトの自動車工場やメキシコの油田を見て回っています。アメリカという国が戦争しても決して勝てる相手ではないことを知っているんです。

なのに、世論は、マスコミは、陸軍は、海軍内の親独派は、そんな相手と戦えという。

誰よりも必死で抵抗した五十六を、同調圧力は無残にも押し潰し、最後には五十六は己の意思とは正反対に対米開戦の火蓋を切る指揮官にされ、同調圧力に縛られ、運命という檻に囚われ、自分の意思では何一つ動かせないまま死んでいきました。

五十六を描いた映画のラスト、彼の乗る一式陸攻がブーゲンビルに堕ちていく光景を何度も見るうちに、私は彼が歴史上の過去の人物とは思えなくなりました。このどうしようもない運命から彼を救い出したいと思うようになりました。

それが最初の願い。

同調圧力と戦った彼への共感も勿論あります。

お話したかったことの1つめ、「山本五十子の決断」の執筆動機です。

古典的な脚本として「塔の上に囚われたお姫様を救い出す」というのがあります。この場合、塔は物理的な束縛である必要は無く、ヒロインがそこから自分では抜け出せず、誰かの救いを待っている状態です。

これが山本五十六そのものだと思いました。

塔は、対米開戦を強いる運命であり、この国の同調圧力です。私は彼をそこから救い出したかった。


2つめ、どうして素直にノンフィクションの歴史小説や伝記を書かずに、五十六はじめ登場人物をみんな美少女にしてラノベにしてしまったのか。

ここが一番言われるところですね。不謹慎だと怒る人、気持ち悪いと嘲笑する人、奇抜だと面白がってくれる人、色んな反応があります。

ノンフィクション歴史小説・伝記なら既に阿川弘之先生の提督三部作、映画の原作にもなっている半藤一利先生の著書はじめ沢山の偉い人の作品があるわけですが、そういった本を読んでみると……なんと、可愛いんです、帝国海軍の将官たちって。勿論、アメリカ海軍の将官もです。萌えるエピソードがいっぱいあるんですよ。

例えば、富士山の湧水を巫女が祈祷すると石油に変わるというイカサマ話を大西が信じてしまって、五十六が(おそらく内心ではわかっているんだけど大西の顔を立てて)海軍の経費で実験する許可を出したり。

五十六のあのお砂糖好きもそうですが、「これ美少女に変えたら萌えるだろうな~。渋いおじさんにやらせておくのは勿体ないな」というエピソードが歴史には満載で。だから美少女にしてしまいました。

不謹慎なのは承知の上、責任はすべて私にあります。

それでも、旧帝国海軍軍人の魅力を少しでも多くの人に伝えたくて、この作品を一所懸命に書きました。

キャラ設定に手抜きはしていません。どのキャラも、史実の人物を一度綺麗に骨抜きして、そこから魅力的なところを1つ1つ大切にすくって10代の少女として再構成しています。


3つめに、私が小説を書く上で一番大切だと思っているところを申し上げます。

それは、作者が「訴えたい」と真に願っているカタマリを、いかにエンターテイメントとして磨いて磨いて物語のコアに据えるかです。

これに気付く前の私は、ただ自分の知識を羅列して、今までに読んだことのある色んな小説をパクってきたごった煮みたいな小説を書いていました。

借り物のごった煮では、読者の心は掴めないと思います。生々しくてもいいから、自分自身を。会社クビになった、会社死ね! でもいいんです。自分が経験したこともないような話を想像だけで書くよりよほど説得力あります。そこから会社のことをSFやファンタジー上の何かに置き換えていけたら、それが「昇華」というものです。

私より上手な方が書いた作品で、まるで無数の根が1本の木(自分のコア)に収束するようにストーリーや世界観ができている小説は本当に美しいです。

この「山本五十子の決断」も、まだ拙いとは思いますが、私の伝えたいことを少しでも形にできていたら幸いです。


最後に、本作は大変長い連載になりました。その最初期から付き合って下さった方、途中から盛り上げて下さった方、素晴らしいイラストをつけて下さったmarieさん、皆様本当にありがとうございました。

社交辞令ではなく厳然たる事実として、皆様のお力が無ければ私は小説執筆ができなかったでしょう。

カクヨムやなろうが出来る前、そして今も変わらず暗闇の中で、己の才能のみを信じて書き続けているワナビは辛いです。

私もかつてはその1人でしたからわかります。誰にも読まれるでもなく長編を書き上げ、新人賞に送って落とされて誰に読まれるでもなく捨てて、次第に嫌になっていきました。

身の程も知らずに夢を見て、電撃文庫にばかり作品を送っていました。当然、どれも一次落ち。一次落ちだから書評もなく、自作の何がいけなかったか、何が足りないか、どう努力したらいいかを知ることもできない。まさに暗中模索です。

しかしこの山本五十子の決断を書き続けられたのは、インターネットに投稿し皆様の応援を頂き、そして皆様からの助言もあってWEB小説大賞に応募し、自信を得たからです。


2015/07/15 アルファポリス第1回歴史・時代小説大賞、大賞候補作入り。

2015/11/20 第3回オーバーラップWEB小説大賞、一次選考通過。

2016/04/15 第1回カクヨムWeb小説コンテスト、読者選考通過。


いつか書籍化のその先の夢、アニメ化をかなえたいです。

その日まで精いっぱい頑張ります。


最後の最後に、私事で大変恐縮ですが。

私にライトノベルを教えてくれて、創作活動を応援してくれた友人達。

高校時代から創作活動の同志で、私の作品に全て目を通し、私に体系的な脚本術を教えてくれた師匠にして親友。

本作の執筆にあたり戦史及び旧帝国海軍の専門家として資料提供や様々なアドバイスをくれた弟。

私が幼児の頃、図鑑に出てくる恐竜やベランダにとまる小鳥から私に物語を作る楽しさを教えてくれて、私が自分で字を書けない頃は口述筆記までしてくれ、大人になった私が自費出版で本を出したら出版社に認められたわけでもないのに大喜びでそれを読んでくれた、ずっと私の才能を伸ばしてくれた母。

そして私が小説を書くことにはじめは反対していたが、最後には認めてくれた父。


みんな、本当にありがとう。みんなのおかげで、ここまで来れました。

本当に、ありがとうございます。


如月真弘

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