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第4話(2)1隻も、生かしてハワイに帰さない

「……本当に死ぬかと思った」


 艦橋、作戦室。いつぞやと同じ浴衣姿の洋平は、恨みがましくそう呟いてから、大きなくしゃみをした。投げ込まれた時、海水ががっつり鼻に入った。つーんとくる嫌な感じがまだ残っている。


「でも、生きてるだろ?」


 投げ込んだ張本人は悪びれる様子も無い。


「てめえが海に落ちた時の軍楽長達の顔は傑作だったな。写真に撮って見せてやりたかったぜ」

「あのねえ! 束さん、僕だって風邪は引くんですよ。肺炎にでもなったらどうするんですか。後、サメとか。瀬戸内海にだってサメはいますよね」


 大体、洋平のいた世界では着衣水泳の練習なんて小学校から数えてもせいぜい一度か二度しかやらないんだから、危険極まりない。束いわく柱島泊地は水深25メートル前後の浅い海で、戦艦は沈んでも浮揚できるらしいが、人間が溺れ死ぬには十分な深さだ。


「そりゃ、あの場を収めてくれたのは感謝してますよ。けど本当に落としますか普通。軍楽長さんが謝った辺りで、寸止めでやめても良かったんじゃ」

「そうですよお、参謀長はやることがいつも乱暴過ぎるんですよお」

「「元はといえばてめえ(寿子さん)のせいだ!」」


 ティーセットを持って現れた寿子の完全に他人事な発言に、つい束と声をハモらせてしまう。とはいえ、冷えた身体に熱い紅茶は正直ありがたかった。ポットから注いでもらった紅茶は濃い琥珀色で、柑橘系の香りがする。今日はアールグレイか。


「……寸止めじゃ、軍楽長は良くても他の連中が収まらなかっただろうよ。あの場合、てめえが普通の男じゃねえ目に見える証拠を示すのが一番効果的だった。ま、あたしはどうでも良かったんだけどな。あーあ、疲れた」


 パイプ椅子にどっかりと腰を下ろす束。


「一番疲れたのは僕なんですけどね……寿子さんのお茶を飲んで一息ついたら、ミッドウェー作戦の研究会始めましょうか」

「……私の計画書は完璧。検討は不要」

「あ、亀子さん起きたんだ。おはよう」


 机に突っ伏していた先任参謀が、のっそりと顔を上げた。束が「けっ」と露骨にそっぽを向き、寿子が苦笑いしながら、計画書の要点を箇条書きにした紙を配ってくれた。


「じゃあ、おさらいしますよお。黒島参謀の案では、艦隊を主力の正規空母からなる本隊と小型空母からなる別動隊とに分けて、まず別動隊が北のアリューシャンを攻略。続いて本隊がハワイ西のミッドウェーを攻略した後、ハワイから迎撃のため出てくる美艦隊を捕捉・撃滅する、と」


 五十子の号令一下、こうして参謀達4人で集まってミッドウェー作戦の研究を始めて既に3日経つが、未だに議論はほとんど進展していない。というのも……。


「あのお、艦隊を分散させる理由は何ですか? 兵力集中が戦術の基本だと思うんですけどお」

「計画書に書いてあることが全て。理解できないなら話しても時間の無駄」

「そんなあ! 私が作戦の内容をちゃんと理解してないと、軍令部の人達に上手く説明できないじゃないですかあ。それとも軍令部との折衝、私じゃなくて黒島参謀がやってくれるんですかあ?」

「しゅぴー……」

「って、寝ないで下さいよお! はあ……毎度のことですけど、今回は特にひどいですねえ」

「やめとけ渡辺参謀、こいつにまともなコミュニケーションを求める方が間違ってる」


 これだ。亀子は自分の練った計画に口出しされるのが嫌らしく、この件では同僚の束と寿子に対してでさえ、話し合いを頑なに拒んでいる。手元のレジュメにしたって、亀子の計画書だけでは分かり辛いからと寿子が作ったものだ。寿子の言う通り、連合艦隊司令部内で成果イメージを共有できていないのに、軍令部の説得などできるはずもない。


「亀子さん、僕も艦隊を分散させるのは考え直した方がいいと思う」


 寿子だけに言わせておくわけにもいかない。再び突っ伏してしまった亀子の寝癖頭に向かって、洋平はやや強めの口調で切り出した。


「ミッドウェーとアリューシャンは南北2000浬も離れている。何かあった時に連携し合える距離じゃない。正面戦力を低下させてまで、同時攻略する必要があるの? アリューシャンの島を占領するのは、正直やめた方が良いと思うし」


 北のアリューシャン列島は、ゲームでは南大西洋のフォークランド諸島に次いで気象条件が厳しいマップだった。一年のほとんどを濃い霧に覆われ、基地に航空機を配備しても索敵や迎撃のために飛ばせる時間はごく僅か。結果、敵の接近を許すことになり、気付いた時には霧の中から現れた戦艦級の艦砲射撃で基地壊滅、なんてことがよくあった。攻めやすく守りにくい。

 史実でも日本がアッツ・キスカ両島に上陸した際に敵の守備隊はおらず、無血占領している。守備隊がいなかったのは、飛行場が使えない島は守れないし、そもそも守る価値が無いからに他ならない。


「……アリューシャンは陽動。島の占領は目的ではないし、占領できた場合でも、ミッドウェー作戦が終わり次第撤収させる」


 突っ伏したまま、亀子はくぐもった声を出した。


「黒島参謀、未来人さんが相手だとちゃんと喋りますねえ。私ちょっと妬けちゃうかも」

「どっちに妬いてるかによって、てめえとの距離のとり方が変わってくるな」


 他の二人がうるさいが、今は構っている場合ではない。


「陽動? よくわからないけど、陽動や奇襲にこだわる必要あるのかな。太平洋上の作戦行動可能な戦力は、今なら葦原の方がヴィンランドを上回っているんだよね? だったら奇をてらわずに、全艦隊をミッドウェーに投入した方がいい。でないと、味方の空母を危険に晒すことになるよ」


 亀子に向けた言葉の最後に予言めいたものを感じたのか、寿子と束が洋平に注目する。

 そうだ。これは予言だ。

 洋平の世界で西暦1942年6月5日に生起したミッドウェー海戦は、日本が大敗を喫した歴史上のターニングポイントとして記録されている。

 開戦以来攻勢の主力を担ってきた赤城・加賀・飛龍・蒼龍の空母4隻と300機近い艦載機が海中に没した。そしてこの海戦を境に反攻に転じた連合軍に対し、海軍は二度と戦いの主導権を取り戻すことはできなかったのだ。

 本当は、ミッドウェー作戦そのものを中止にして欲しかった。しかし、山本五十子はこの作戦を自らの信念だと言っている。彼女は、一度は諦めかけていた早期講和の可能性をミッドウェーに賭け、その実現をここにいる4人に託した。

 ならば洋平のすることはひとつしかない。自分の計画を完璧だと思っている先任参謀には申し訳ないが、洋平が持つ未来の知識でもって作戦内容を改変し、ミッドウェー作戦を勝利に導く。架空戦記の王道をやるしかない。

 だが、亀子は『未来人からの警告』にも一切動じる気配はなかった。


「……ポーカーをする時、どんなに強い手札があっても最初から多過ぎるチップを積み上げれば、相手は勝負から降りてしまう」


 応答があるだけまだましなのだろう。でも例えがいまいちよくわからない。


「ごめん、僕ポーカーはあまり詳しくないんだ。どうせなら大貧民とかで説明してもらえると助かるんだけど」

「だいひんみん? ……大恐慌のこと?」


 怪訝な顔をされる。あ、しまった。ひょっとしてまだ存在しないゲームだったか。


「へえ、黒島てめえポーカー好きなのか。やってるとこ一度も見たことねえけど」

「……」


 束の余計な一言で、顔を上げかけていた先任参謀はまたも沈黙してしまった。そこ掘り下げるのやめてあげてよ、自室に篭って一人でできるゲームじゃないんだから将棋の話と同じで五十子の受け売りに決まってる。


「ええと要するに、こちらの戦力を敵に小さく見せたいってこと?」


 洋平が急いで話を戻すと、幸いにも亀子は口を開いてくれた。


「……戦力を分散させることで、敢えて味方を危険に晒す。こちらが万全の態勢で行ったら、ヴィンランドの空母は出てこない」


 亀子の言葉に、洋平ははっとした。思い出したのは、つい数日前のセイロン沖海戦だ。

 世界最強を誇る南雲機動部隊が事前に気付かれながら堂々と強襲したが、ブリトンの東洋艦隊にはあっさり逃げられ、貴重な燃料を浪費するだけに終わった。


「決戦を欲しているのは、あくまで私達。私達の都合に合わせて戦う理由は向こうには無い。圧倒的な工業生産力で戦力が逆転するまで、艦隊を温存して時間稼ぎをしようと考えているはず。こちらの動きを慎重に見極め、主力同士が正面からぶつかる戦いは巧みに避けている」


 確かに一理ある。国力10倍のヴィンランドに、危険を冒してまで勝ち急ぐ理由はない。


「一方、確実に勝てると見込んだ戦いには躊躇なく空母を投入する傾向が見られる。2月のマーシャル・ギルバート諸島空襲、ウェーク島空襲、ニューギニア沖海戦で未遂に終わったラバウル空襲。3月の南鳥島空襲、ラエ・サラモア空襲。どれも例外なく、こちらの戦力が手薄なところを狙った少数機動部隊による一撃離脱戦法。ヴィンランドの指揮官は狡猾。その狡猾な習性を、逆手に取る」


 ニューギニア沖海戦以外は、洋平も聞いたことがないような戦いだ。寿子のところから勝手に持ち出した過去の戦闘報告書(データ)の山は、こういう形で役に立ったというわけか。


「それで陽動……アリューシャンを攻める部隊は、こちらが寡兵だと思わせヴィンランドの空母を真珠湾から誘い出すための囮ってことか」

「それだけじゃない」


 亀子の策は、洋平の予想をさらに一つ超えていた。


「聞いて。まずこちらは小型空母2隻程度の小規模な部隊でアリューシャンを攻める。一報を受けたヴィンランドの指揮官は思う、葦原の航空戦力を優勢に叩けるチャンスだと。ヴィンランド機動部隊はハワイを出て、アリューシャンに向けて北上を開始する。時間差でこちらの主力、南雲機動部隊が、ハワイ近くのミッドウェーを攻める。退路を断たれ真ん中で孤立した美機動部隊を、北の別動隊と南の主力、2つの機動部隊で挟撃する」

「挟撃? 陽動するだけじゃなくて? いや、そんなことがもしできたら凄いと思うけど……さっきも言ったようにアリューシャンとミッドウェーはとても遠いんだよ。もはや別マップというか」

「できる。別動隊の小型空母はアリューシャンの敵基地を空襲した後、即座に南下して距離を詰める。葦原機の航続距離と練度なら、挟撃は十分に可能。さらに、両島の上陸支援にあたる各水上打撃部隊も美機動部隊を発見し次第、上陸作戦を中止して追跡。最終的には、四方陣で敵を包囲する。1隻も、生かしてハワイには帰さない」


 亀子はそう言い切って、洋平が反論しないと見て取るや、今度こそ本格的な寝息を立て始めた。生活態度やコミュニケーションに色々と問題のある先任参謀だが、こと作戦の話になると妙な説得力がある。負ける結果を知っているはずの洋平でさえ、思わず感心してしまい……そして困ってしまった。

 海戦オタクを自認してきた洋平だが、ミッドウェー作戦に挟撃や包囲の狙いがあったなんて初耳だ。そもそもあの作戦は、緒戦の連戦連勝による慢心の産物ではなかったのか。戦力を二分してミッドウェーとアリューシャンを同時攻略しようとしたのも、単に敵を侮っていたからだと思っていた。黒島亀子は敵を侮ってなどいない。むしろその逆だ。

 洋平の従来の考えでは、ミッドウェー海戦の数ある敗因の中から偶然やら技術力の差やら現場指揮官の資質やらを除いた戦略的な敗因で最たるものが、戦力の分散だった。これさえ事前にどうにかできれば、少なくとも史実ほどひどい敗北は防げるのではないかと考えていたのだが……。


「ああもう、じれったいですねえ未来人さん」


 磁器が触れる硬い音が響く。寿子がティーカップの中身を空けて、ソーサーに置いた音だった。


「ぼ、僕?」

「そうです、未来人さんです。なに黒島参謀に言いくるめられちゃってるんですか。さっき、味方の空母が危険だって言ってましたよねえ。奥歯に物が挟まったような喋り方してないで、セイロン沖の時みたいに知ってることをはっきり言って下さいよお。味方の空母が沈むんですか?」


 寿子の声は相変わらずふわふわしているが、質問の中身は鋭い。


「未来予知とやらができねえなら、てめえは海に突き落としても死なない以外に取り柄がねえ変態覗き魔ジゴロ宇宙人ってことになるんだからな。わかってんのか」


 束にもドスの効いた声でどやされる。怖いけど、呼び方を戻すのはやめて下さい。

 彼女達に、洋平の世界で起きたミッドウェー海戦をありのまま話すのは簡単だ。しかしそれは、本当にこの世界において正しい情報なのだろうか? 亀子が立てているミッドウェー作戦が、洋平の世界の歴史上のそれと異なる可能性は? ……いや、直近のセイロン沖海戦や、それ以前の戦いからして恐らくそれは無い。なら何故自分は、躊躇しているのだろうか。

 洋平を睨んでいた束が、ふん、と鼻を鳴らして、眠っている亀子に視線を移した。


「ま、いつものことだがよくできた筋書きだよな。長官が惚れ込んじまうのも、わからなくもねえ」


 束の言葉で、洋平は思い当たる。もしかして自分は、黒島亀子の作戦を気に入ってしまったのか。

 ゲームのCPUよりはるかに狡猾な敵を、寡兵を装っておびき出した上での鮮やかな挟撃・包囲。中部太平洋から北太平洋までを股にかけた大掛かりな罠。

 海戦オタクとして『提督たちの決断』プレイヤーとして、そんな作戦が実際に行われるところを見てみたい、と。いけない、自分の役目は敗北の運命を回避することなのに。

 洋平の葛藤を知ってか知らずか、束は薄く笑って続けた。


「……しかし気の毒だがこいつは、作戦立案の作法ってやつを未だにわかってねえ。今のままの計画書じゃ、軍令部に持ってってもまず間違いなくはねられる」

「作法? 作戦の中身以前の問題ってことですか?」


 まさか制限字数をオーバーしている、とかだろうか。そういえば、束はこの中で唯一軍令部に勤務経験があると聞く。だが、束は竹串をくわえていない片頬を、皮肉っぽく吊り上げただけだった。


「さあな。ここじゃ作戦は黒島が作って山本長官が承認する。邪魔者の出る幕はねえよ」

「参謀長、そんな言い方! 長官は、みんなの力を貸して欲しいって」


 寿子が怒ったように眉を吊り上げ、束は例によってへの字口で明後日の方向を向いてしまう。亀子の寝息が無慈悲に響き、作戦室に悪い空気が漂い始めた時。


「みんな、釣りだよ! 釣りをしよう!」


 唐突に扉が開け放たれ、山本五十子その人の、元気な声が響き渡った。

 颯爽と現れた彼女は作戦室を見回して、洋平が浴衣姿でいることに目を丸くする。


「あれ? 洋平君その恰好どうしたの?」


 まさか、さっきの一部始終を本当に見ていなかったのかと、驚くのはさておき。


「……釣りって、それは敵をおびき出すとか、囮作戦とかの話?」

「違うよ! 釣りといったら魚釣りだよ! もう、洋平君ったら怖いこと言うね!」


 いやいやいや、ここは連合艦隊司令部の作戦室で、今はミッドウェー作戦研究会の最中なんだが。


「長官、なんでまた魚釣りを? 私達、作戦の打ち合わせをしてたんですけどお……」


 中断させられた寿子は不満そうだ。


「ふふっ、ありがとうヤスちゃん。でも今日は水産デーだからね。海の女たる者、水産デーには釣りをしないといけないんだよ!」

「……水産デー?」


 洋平は首を傾げる。


「葦原に漁業法が制定された記念日だよ」


 初めて聞く記念日だ。この世界特有のものなのか、洋平の世界にもあったがマイナー過ぎて知らないだけなのかはちょっとわからない。


「いや長官。あたし達は漁師じゃねえんだから正にその漁業法ってやつに引っかかるんじゃねえか? 兵が日頃少人数で釣ってるのは大目に見てるが、トップが率先してやるのはまずいんじゃ」

「えー、でも束ちゃん、柱島泊地への漁船の進入は軍機で禁止してるよね? だったら、泊地のお魚は私達が自由に獲って構わないはずだよ」


 束も気が進まない様子だったが、軍機を持ち出されてそれ以上何も言えなくなった。


「そういうわけで、今日は午後からみんなで魚釣り大会をします! ヤスちゃん、分隊ごとに希望者を募って最上甲板に集めて。釣り具の用意も忘れないでね!」

「はーい……」

「あ、それと洋平君。着替えがあるんだけど、良かったら着てみない?」


 五十子は持っていた紙袋を開いて、中身をばっと広げる。


「じゃーん!」


 広げられた衣装の眩しさに、洋平は目をしばたたかせた。


「え……この服を、僕に?」


 純白に金ボタンの、海軍第二種軍装だ。肩には中佐の肩章が輝いている。


「本当は正式に任官されてからプレゼントしようと思っていたんだけど、いつまでも未来の恰好じゃ目立つからね」

「明らかにこっちの方が目立つんじゃ……」

「嫌?」

「い、嫌じゃないよ! むしろ着たいです、着させて下さい!」

「そっか、良かった~。あ、下は男性用の白い長ズボンだから安心してね。海軍にはスカートしかないから、広島の福屋デパートで似た生地のズボンを買ってきたの」

「買ってきたって、五十子さんが?」

「えへへ、紳士服コーナーは初めてだったから緊張したよ。サイズ合ってるか、確かめてみてね。ほらみんな、洋平君が着替えるから出た出た!」


 そう言って部下達を追い出しにかかる五十子の目は、あのいたずらっぽい光を湛えている。着替えを持ってくるタイミングが良過ぎないかと少し不審に思ったが、そんな雑念も、真新しい軍装に袖を通し終え、五十子が掲げる手鏡に映った自分の姿を見たところで吹き飛んだ。


「へっ、馬子にも衣装ってやつだな」

「ちなみに黒島参謀は未来人さんが着替えてる間もそこで寝てましたあ」

「いいんだよ、あいつは女捨ててるから」

「むにゃ……2個潜水隊でハワイ西方に散開線を構成……しゅぴぴぴー」

「ちょっとみんな静かに! さあ洋平君、仕上げにこれを」


 渡された軍帽を目深に被る。今までコスプレは守備範囲外だったが、これは、なかなかどうして。


「……提督になったみたいだ」


 思わず、そんな感想が口をついて出た。


「おいおい、中佐で提督は気が早いぜ」

「むっ、中佐を馬鹿にしないで下さい! 戦隊司令官は大佐以上じゃないと無理ですけど、隊司令なら中佐でなれますよお」


 テンションの低かった束と寿子も、五十子のサプライズで機嫌が戻っている。亀子は相変わらず夢の中だけど。


「よおし、魚釣りへゴー!」

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