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(登場人物・世界観紹介)

【注意】このページは物語に登場する人物、世界観をわかり易くまとめたものです。こちらを飛ばして第1話からお読み頂いても、登場人物・ストーリーの理解に何ら支障はございません。またネタバレは避けておりますが、先入観を持たずに物語をお楽しみになりたい方にはお勧め致しません。この注意文を理解できた方のみ以降の本文をお読み下さい。




《この物語はフィクションであり、登場する人物名、団体名等は実在のものとは関係ありません。》




◆世界観

主人公・源葉洋平が目覚めたのは、伴天連暦1942年4月、大戦真っ只中の世界。その世界は洋平が知る史実と極めてよく似ていたが、大きく異なる点が一つあった。

それは、海で戦う人間が10代の女性に限られていること。洋平の知る海軍の提督達が、この世界では少女として存在していた。

そう。ここは有史以来、女が海を司り、異なる発展を遂げた世界だったのだ。


【ラ・メール症状】

ヒトが海に近付く、潮風を吸い込む、海水に触れるなどした場合に起きるこの世界特有の症状。三半規管が正常に働かなくなって平衡感覚が失われ、目眩、耳鳴り、頭痛、吐き気などで身体をコントロールできなくなる。

とりわけ男性の場合症状が深刻で、5分で内耳内リンパが破裂。無理に泳ごうとした者は溺死し、海辺や船上にいる場合でも心室細動、激しい嘔吐による脱水症状や呼吸困難などで死に至ることがある。

一方の女性は三半規管が比較的強く、症状に苦しめられても死ぬことは無い。

勿論、薬によって症状を抑える研究は古代から盛んに行われていて、西洋医学が発達する以前であっても、男性が昏睡状態であれば死なずに海を渡れるようにはなっていた(※1)。しかし昏睡状態で運ばれるだけで航海の担い手になれないことに変わりは無く、必然的にこの世界では、漁業、交易、植民など、海上の役務に従事できるのは女性に限られた。

さらに未成年の少女に限っては、海に接しても三半規管に全く影響を受けない者が一定の割合で存在し、この少女達が後述する海軍乙女となる。

人類の文明の発展に不可欠な航海、海での男の生殺与奪権が女性に握られたことで、この世界では早い時期から軍人や政治家など指導的な地位に女性が就いていたものと思われる(※2)。

また、ヒトがその生物としての進化の過程で、いつからラ・メール症状を抱え生命発症の地である海から拒絶されるようになったのかは未だに解明されていない。世界各国に伝わる創世記、創世神話では、神の怒りに触れた人間の、母なる海からの追放が描かれている。


【海軍乙女】

ラ・メール症状を発症すると女性であっても(男性と違って死なないまでも)継続的な目眩、耳鳴り、頭痛、吐き気などに苦しめられる。また症状を抑える薬は、副作用として強い眠気を伴う。

戦闘では、瞬時の判断と行動が勝敗を分ける。そのためこの世界では海戦が本格化するにつれ、海軍の第一線に立てるのは海上でも思考・行動に制約の無い10代の少女だけに限られるようになった。これがネイビーガール、海軍乙女の始まりである。

帝政葦原海軍では、海軍乙女のうち士官は9歳で海軍兵学校を卒業、10代前半で尉官から佐官に昇進を重ね、兵学校卒業席次(ハンモックナンバー)上位者は15歳から将官になり、20歳を超えると陸上勤務となって第一線を離れ、やがて予備役に編入されるのが一般的なコースである。

なお、20歳の誕生日を迎えると同時にぴたりとラ・メール症状が顕現するものではなく、その時期には個人差がある。20歳を超えても例外的に艦に立ち続けることができた者もいれば、その逆に、20歳になる前に早期発症して退役を余儀なくされる者もいる。


【帝政葦原中津国】

聖上と呼ばれる君主を戴く極東の島国。近代化以降、輸出によって急速な成長を遂げたが、大恐慌が起こり世界の大半を植民地支配する列強がブロック経済に移行したことで困窮。新興国トメニア、ナパロニと三国同盟を結んだことで、太平洋を隔てた列強の盟主ヴィンランド合衆国との関係が険悪化し、開戦に至った。

国内には今も都市部と農村部で著しい経済格差が残り、また幕藩体制から新政府に移行する過程で「葦原平定戦争」という内戦を経験している。このため海洋国家だが陸軍の力が強い。内戦で旧幕府側についた地域は西洋の兵器で武装した新政府軍に蹂躙され、戦後も近代化が遅れている。


【ヴィンランド合衆国】

太平洋を挟んで葦原と対峙する巨大な大陸国家。人口、資源、工業生産力で葦原を圧倒する。かつてヴァイキングの冒険者レイア・エリクソンが上陸したこの地を「葡萄の国」と名付け、彼女の子孫達によって開拓された。その後多くの移民を受け入れ自由と民主主義を掲げるが、同時に根強い人種差別問題を抱えている。





◆登場人物


【連合艦隊司令部】


げん 洋平ようへい

本作の主人公。16歳、海軍中佐相当・連合艦隊特務参謀扱い。現代日本の高校生だったが修学旅行中に突如異世界の帝政葦原中津国に飛ばされ、柱島泊地に流れ着いたところを山本五十子に助けられる。元の世界では旧海軍の艦艇が好きで、海戦シュミレーションゲーム「提督たちの決断」にハマっていた。

最初は異世界に戸惑っていたが柱島泊地に停泊する連合艦隊に感激し、海軍乙女達とも次第に打ち解ける。こちらの世界で起きている戦争が自分の知る史実通りに進んでいることがわかると参謀に志願し、自分の知識を活かして歴史を変えようと行動し始める。

男なのに海に入ってもラ・メール症状を発症しないため、連合艦隊司令部の参謀トリオからは宇宙人、未来人、海底人などと渾名をつけられた。基本は常識人・ツッコミ担当だが、実は何にでも醤油をかける派であることを五十子に見抜かれる。記憶に欠けた部分があり、どうやってこの世界に来たか覚えていない。


山本やまもと 五十子いそこ

挿絵(By みてみん)

(イラスト marie様)

本作のメインヒロイン。19歳、海軍大将。帝政葦原海軍の連合艦隊司令長官として柱島泊地の戦艦大和で暮らしている。

きらきらした大きな目と赤いリボンの髪飾りがトレードマーク。甘い物が大好きで何にでも砂糖をかけてしまう重度のシュガラー。特技は逆立ち、趣味は将棋と賭け事全般。場の空気を読まず自分の信念のままに行動する。いたずら好きだが不思議と憎めない性格。いつでも明るく楽しくがモットーでどんな時も笑顔を絶やさず、部下を励ます時の「大丈夫!」が口癖。

艦内での部活動を公認したり、一度でも会ったことのある部下の名前は全て手帳に書き留めて覚えるようにするなど部下達に優しく、失敗しても決して責めようとしないが、そういう性格がリーダーとして甘過ぎると批判されてしまうことも。本人は戦争が早く終わることを望んでいるが、開戦劈頭の真珠湾奇襲で大戦果をあげたことから、陸の大人達からは軍神として崇め奉られている。

洋平のことは出来れば元の世界に戻してあげたい、それができなくてもせめて戦争に巻き込むまいとし、未来の情報を聞き出したり作戦に協力させたりすることに慎重。洋平の決意を受けて参謀にした後も、洋平が自分から言い出さない限り未来のことは訊こうとしない。


がき たばね

挿絵(By みてみん)

(イラスト 鳥羽輝人様)

17歳、海軍少将・連合艦隊参謀長。目つきは鋭く、長い髪を名前の通り背中で一本に束ね、口にはいつも竹串をくわえている。ぶっきらぼうで喋り方は乱暴。中央の軍令部畑を歩んだエリートで連合艦隊司令部のナンバーツーだが、自らを「邪魔者」と称して五十子から距離を置き、作戦立案にも滅多に口を出さない。

実は良家のお嬢様で、趣味でこっそり小説を書いていたり、服飾に詳しかったり、瀬戸内生まれなのに釣りを知らなかったりする。しかし兵学校で覚えた射撃の腕はかなりのもので、仕留めた鳥を炭火で焼き鳥にする焼き奉行でもある。

大艦巨砲主義者だが、戦訓を良く勉強しており航空戦にも理解がある。第二航空戦隊司令官の楠木多恵は、兵学校時代からの親友。

洋平のことは、未来人も海底人も常識的に有り得ないからという論法で宇宙人説を説いた。その後も洋平が未来人だと信じるとは決して言わないものの、洋平のことを次第に仲間として認め、洋平が海軍で上手くやっていけるか気にかけるようになる。


黒島くろしま かめ

挿絵(By みてみん)

(イラスト へるにゃー様)

14歳、海軍大佐・連合艦隊先任参謀。定石に囚われない大胆な作戦を立案する非凡な才能の持ち主。極端な夜型で日中は自室で寝ているか出てきても机に突っ伏して彼女独特の奇妙ないびきを立てている。死んだ魚のような目、寝癖ぼさぼさのショートヘア。無表情で口数が少なく、作戦についての説明も文章をぶつ切りにしたような言い方しかせず周囲を困らせるが、五十子や洋平など自分の話を理解できると認めた数少ない相手にだけはきちんと説明する。自分の作戦に絶対の自信を持っている。

幼少期に五十子と出会っており、その時のことを覚えていた五十子の願いで先任参謀に抜擢された。そのため五十子に強く恩義を感じており、真珠湾作戦やミッドウェー作戦など五十子が望む短期決戦・早期講和のための作戦を次々と立案する。頭の中は作戦でいっぱいで、眠っていても寝言に作戦が出てくる。それ以外のことには無頓着で、自室には脱ぎっぱなしの服や食べ物と一緒に機密書類が散乱している。

海の研究が趣味で、愛読書はヴェルヌの『海底二万里』。各地の竜宮城伝説にも詳しく洋平のことを当初海底人だと主張していた。


渡辺わたなべ 寿やす

13歳、海軍中佐・連合艦隊戦務参謀。お役所的な葦原海軍で、膨大な書類仕事や中央との折衝をこなしてくれる連合艦隊司令部の縁の下の力持ち。明るい黄色のカチューシャとふわふわした声が特徴。美味しい紅茶を淹れてくれたり上官達の暴走に歯止めをかけてくれたり、参謀トリオの中で唯一まともそうに見えるが、女の子同士のいちゃいちゃを見たくて海軍乙女になったと公言する人物である。「乙女共栄圏」というサークル名で少女漫画「のらしろ」の同人誌を発行しており、海軍内に相当数のファンがいる模様。一方で洋平のことは当初から未来人だと信じ、洋平の協力があればこれ以上戦死者を増やさずに早期講和が実現するのではないかと期待している。


【連合艦隊の各艦隊及び戦隊】


井上いのうえ なる

挿絵(By みてみん)

(イラスト つゆりヤマネコ様)

18歳、海軍中将。トラックを拠点に南洋方面を管轄する第四艦隊司令長官。クールな銀縁眼鏡にストレートヘア。帰国子女で言葉の端々に流暢なブリトン語が混じる。

精神論を嫌い理詰めで淡々と相手を論破するので海軍内の主流派から嫌われ、最前線の第四艦隊に左遷されてしまった。これからの戦いは航空機が主役になることを早くから予見するなど優れた先見性を有し、五十子が海軍次官だった頃は軍務局長として献身的に五十子を支え「山本五十子の片腕」と称された。今も五十子の身を案じ、五十子に望まない戦争の引き金を引かせてしまったことで何もできなかった自分を責めている。戦争の結末は勿論、戦後のことまで正確に予見してみせて、洋平をして「みんながこの人の言うことを聞いていれば未来人も架空戦記も要らなかった」と言わしめたが、洋平にたった一つだけ未来のことを訊ねた。


楠木くすのき 多恵たえ

17歳、海軍少将。空母飛龍と蒼龍を率いる第二航空戦隊司令官。ワンサイドアップにビー玉の髪飾り、脚にはウサギ柄のニーソックスを履いている。宇垣束の同期だが、とてもそうは見えないほど容姿が子どもっぽい。食いしん坊で親友の束が作ってくれる焼き鳥が大好き。本人曰く「鼻が良い」ため、巨大な戦艦大和の艦内で束がどこにいるか、さらには敵艦隊の潜んでいる海域まで「匂い」で突き止める。敵の空母に対しては例え陸用爆弾でも先制攻撃を何よりも重視する闘将で、判断が遅い南雲達一航艦司令部のことを憂慮している。


ぐも しお

18歳、海軍中将・第一航空艦隊司令長官。大人しそうなショートボブの少女。怖いことがあるとすぐに泣き出してしまうため、束から「泣き虫南雲」と馬鹿にされている。本人の得意分野は水雷戦で、航空戦には知識も興味も全く無いにも関わらず、兵学校卒業席次ハンモックナンバーと年功序列で世界初の本格機動部隊である第一航空艦隊の初代司令長官に任命されてしまった。参謀長の草鹿峰のことを慕っていて、休みの時も一緒。敵機が目視できない上空からハイスピードで攻めてくる航空戦に致命的な苦手意識があり、あらゆる判断を峰の助言に依存している。泣きながらの口癖は「魚雷発射管があったら入りたい」で、今も水雷戦に未練がある模様。


くさ鹿 みね

17歳、海軍少将・第一航空艦隊参謀長。きりりとした風貌を持つ短髪のボーイッシュな少女。参謀長になってからは白いマントを羽織り腰に長い軍刀をさした宝塚のナイト役のような出で立ちで、すぐに落ち込む汐里とは反対に何事にも楽観的。口癖は「一刀両断」「鎧袖一触」。一刀流剣術の家元の娘で、剣術の心得を作戦に取り入れている。海外で買ったお土産を大勢の女の子に配っているが、一番大切にしているのは汐里で、「夫婦」と言われるほど仲が良い。元パイロットという経歴から、航空戦に詳しいと汐里は信じきっている。


かく かく

17歳、海軍少将・第四航空戦隊司令官。連合艦隊の主力空母が残らず真珠湾攻撃に動員された緒戦で、小型空母龍驤だけで南方作戦を支えた猛将。今でこそ空母乗りだが、元は戦艦長門の艦長を務めたこともある生粋の鉄砲屋で、ベンガル湾では龍驤の高角砲を使って敵の基地や輸送船を砲撃するなど空母運用の常識にとらわれない。


【中央】


ない 光姫みつひめ

2×歳、予備役海軍大将。海軍大臣、内閣総理大臣を歴任。五十子と成実の先輩。


しま

挿絵(By みてみん)

(イラスト へるにゃー様)

19歳・海軍大将。軍政・人事を司る海軍大臣と作戦の決定権を持つ軍令部総長とを兼任する帝政葦原海軍の最高権力者。

五十子とは兵学校同期で首席の座を争ったが、五十子が手の怪我で脱落したため首席卒業、兵学校の成績で昇進序列が決まる葦原海軍のトップに昇り詰めた。

執務室に巨大な地球儀を置き、戦略のプロを自負する。「葦原は長期不敗態勢を築いて盟邦トメニアを支援していれば、熟した柿が落ちるように戦勝国になれる」というのが持論だが、実際には戦争を故意に拡大・長期化させて自身の権力強化に利用しようとしており、早期講和を目指す五十子達に対して執拗な妨害を続けている。

容姿は令嬢然としたハーフアップの黒髪、暗い赤のルージュとマニキュア。扇子を使って表情を隠すことが多い。海軍乙女なのに海の日差しを嫌い、外出時には部下に日傘をささせ、日焼け止めを欠かさない。


【ヴィンランド合衆国海軍太平洋艦隊】


セシリア・ニミッツ

16歳、海軍大将。ヴィンランド合衆国海軍太平洋艦隊司令長官。

開戦時は少将だったが、大統領の肝いりで大将に昇進、更迭されたハイネス・キンメルの後任に抜擢された。艦隊だけでなく陸軍や連合国に参加する他国軍も含めた太平洋方面の最高司令官として軍令・軍政に渡る広範な権限を与えられており、徹底した成果主義で幹部達を競わせる。

ウェーブしたプラチナブロンドにアイスブルーの瞳、冷静沈着さと目的のためには一切の手段を選ばない冷徹さから「白銀の魔女」と恐れられている。

指揮を執るのは軍艦ではなく、パールハーバーを見下ろす山上の司令部。傍受した葦原軍の暗号通信を解読させ、ミッドウェーでの逆襲を企てる。

執務室の机上にはチェス盤とともに常に山盛りのドーナツが置かれているが、本人は甘い物が嫌い。


フレンダ・ハルゼイ

17歳、海軍中将。空母エンタープライズとホーネットを率いる第16任務部隊司令官。戦艦全盛の時代に空母を中心として高速機動部隊の有用性を見抜き、自らパイロットのライセンスを取得した。

傍若無人で猪突猛進、極端な負けず嫌いで葦原人のことは「サル」と罵るなど気性の荒い性格だったが、部下達の面倒見は良く、開戦後の不利な戦況でも勇猛果敢な指揮で戦果を上げ続けたことから「太平洋艦隊の四番打者」と評され、古参幹部達の信望が厚く、セシリアからも一目置かれていた。

しかし、空母から陸軍機を発艦させる画期的な葦原本土初空襲を指揮した帰り道、ラ・メール症状を早期発症してしまい入院。やむなく司令官を退き、後任に親友のレナ・スプルアンスを推薦する。


レナ・スプルアンス

16歳、海軍少将。第16任務部隊の空母護衛を担う第5巡洋艦戦隊の指揮官を務めるフレンダの側近で、プライベートでは親友の間柄。

開戦前、海軍の花形だった戦艦部隊への配属申請を却下され落ち込んでいたところをフレンダに強引に誘われ、空母機動部隊の一員となった。

パイロットのライセンスこそ持たないものの航空戦について観察と勉強を怠らない姿勢をフレンダから認められ、セシリアからはゼネラリストとしての資質を買われており、ラ・メール症状で倒れたフレンダに代わり第16任務部隊司令官に任命される。本人はフレンダと対照的に気弱で実行に移すことを躊躇する自分の性格を、司令官に不向きだと考えている。

亜麻色の髪を丁寧に三つ編みにしているが、強いストレスを感じると無意識にいじってしまう癖がある。


メイベル・ミッチャー

17歳、海軍少将。第16任務部隊に所属する空母ホーネットの艦長として、葦原本土初空襲のための陸軍機輸送任務に従事した。

パイロット出身者の将官として、航空群の将兵から「姉御」と呼ばれ慕われている。毛先がはねた髪型、大ぶりのピアス、剥き出しにした肩に入れた蛇のタトゥーなど軍規を逸脱した恰好で、艦長席ではいつもガムを噛んでいる。

ヴィンランド合衆国内で差別を受けているトメニア移民の出身。アナポリス在学中には停学処分を受け、卒業が1年遅れた。戦争の大義について冷笑的な発言をすることが多く、生真面目なジェニファー・フレッチャーとは軋轢が絶えない。新任長官のセシリアには愛想が良く、好物だと思っているドーナツを頻繁に差し入れているが、セシリア本人からは「好戦的だが協調性に欠ける」と看做されており、ラ・メール症状で倒れたフレンダの後任には選ばれず、レナの指揮下で戦うことになった。


ジェニファー・フレッチャー

16歳、海軍少将。空母ヨークタウンとレキシントンを率いる第17任務部隊司令官。珊瑚海海戦でレキシントンを失い、残されたヨークタウンも長期入渠が必要な状態だったが、これを応急処置だけで戦線復帰させるようセシリアに命じられる。自分と同い年で開戦前まで同階級だったセシリアが上官になったことに複雑な感情を抱いており、味方の犠牲を全く厭わないセシリアのやり方を嫌っているが、軍人としての矜持から従っている。また自分はセシリアから疎まれており、捨て駒として扱われていると思っている。セシリアからの評価は「几帳面だが、艦の損失を恐れ過度に慎重」。

祖母が高名な提督で、その七光りで出世したとの悪評に強いコンプレックスを持っており、また真面目で規律を重んじるため、メイベルとの関係は険悪。ヴィンランド人には珍しい黒髪だが、「煤けたカラスの羽のよう」だと気にしている。


クリス・マクラスキー

15歳、海軍少佐。空母エンタープライズの全艦載機を統括する第6航空群司令。

灰色の短髪。寡黙で常に無表情だが、現役パイロットであり続けるため昇進を拒んでおり、葦原の機動部隊に比べて練度が低いとされるヴィンランド空母航空群にあって極めて経験豊富。そのためフレンダからの信頼は厚く、後任のレナも彼女を傍に置きたがったが、ミッドウェー海戦では困難な敵空母攻撃を行うにあたり、自ら急降下爆撃機ドーントレスに乗り込み出撃していく。





◆余禄


※1:男性がいなければ新天地での生殖行為は不可能で、植民が行えないのはこの世界でも同じである。従って「今回の航海では船に男を積んでいく」というのは、上陸後の植民を前提とした本格的な侵略を意味する。

ヴァイキングのレイア・エリクソンが後にヴィンランドと名付けた新大陸に到達すると、移民と奴隷輸送などの需要で、航海中にラ・メール症状を緩和するための薬の研究が飛躍的に進歩した。

また、かつて旧大陸を席巻した蒙古帝国は内陸国家で航海の経験に乏しく、当時「黄金の国」とされていた葦原中津国への二度目の侵攻では女性将官の反対を押し切り、薬が不足する中で船に数万人の男性を詰め込んだ。この男性達は兵士だけでなく、征服後の入植を前提に農民や職人まで含まれていた。彼等の多くは航海中にラ・メール症状で死に、生き残った者達も「神風」と呼ばれる嵐で船団もろとも海の藻屑となった。この故事から海軍では「男を乗せると船が沈む」という迷信が生まれ、男子禁制のルーツとなったとも言われている。

※2:カスティーリャ王国はイザベラ女王の海洋進出によって興隆し太陽の沈まない国と言われたが、男王になってから衰退し、逆にエリザベス女王を立てたブリトン連合王国にアルマダ海戦で敗れた。そのブリトンは前世紀、ビクトリア女王の治世に7つの海を征服し、世界の陸地の4分の1を支配する大国となった。

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