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第 2 話 龍、曹操(そうそう)に出会うのこと

第二話、更新しました。

良かったらお読みください。

「何か用ですか?」


もう一度尋ねると、少し切れ目で後ろ髪を宙に浮いているように結んである女性が我に返り、説明しようとする。


「い、いや。お主を助けようとしたら、腰に差している刀が飛んできたのが見えたのでn――」

「様子を見てみようとなったのですよ~」

「風。星の言葉をとるものではないですよ」


その女性の言葉を遮って、人形を頭に乗せて少しおっとりした少女が喋りだす。

そして、眼鏡でキリッとした少女が呆れて眼鏡の位置を直しながら注意している。


「あの~」

「あ、すいません。話の途中でしたね。私たちは流れ星が降ったので、疑問に思ってきてみたのです。すると、貴女が賊に襲われてるのに出くわしまして、星殿が助けようとしたのです」


眼鏡少女が顔をこっちに向けて、説明しながら私を眺めていく。

他の二人も同じように私の姿を見ているようだ。


それにしても流れ星とは・・・・・・?

まぁ、私には関係ないかな。


「その時、貴女が腰に差してある剣が飛んできたため、少し様子見をしようとした次第です」

「そうだったんですか。あ、申し遅れましたね。私の名前は龍政也と申します」

「ほぅ、珍しい名前ですな。姓が龍、字が政也ですかな?」


やはり、昔の中国みたいだ。

日本では字という概念はあんまりないし・・・・・・。


「少し違います。姓が龍、名が政也で字はありません」

「そうなのですか? 字がないとは珍しい。おっと、私も名乗らなければなりますまい。私は趙雲と申す」

「風は程立と言います」

「私は戯志才と申します」


戯志才は偽名かな・・・・・・?

まぁ偽名を使うのは分かるからいいとして、他の二人の趙雲と程立って、確か両方とも男だったはず・・・・・・、でも嘘は言ってない。

ここは所謂、パラレルワールド(並行世界)みたいだな。


「しかし娘一人で旅とは、なかなか危ない行為ですね。たとえ腕に覚えがあったとしてもです」


戯志才さんが心配して言ってくれた言葉に苦笑してしまう。


「戯志才さん、一つ良いですか?」

「なんでしょう?」

「私は男です」

「「「!?」」」


私が男であると言うと、戯志才さんだけではなく、他の二人も驚いたような表情になってしまった。


はぁ。こういうことは慣れているとはいえ、結構凹むんだよなぁ。


「そう言えば程立さん、さっきからf――他の呼び方をされているようですが」


“風”と呼びそうになった時、勘で言ってはならないと思ったため言葉を変えて、程立さんに訪ねた。

すると驚いていた程立さんは笑顔になる。


「それは真名なのですよ~。それと程立でいいですよ~。お姉さんは年上ですから」


いや、私は男ですって・・・・・・。

まぁ、いいや。で、真名か・・・・・・。


「真名って何でしょうか・・・・・・?」

「真名を知らないのですか?」

「ええ」

「真名を知らないとは・・・・・・」

「お姉さん、真名とはですね~」


戯志才さんは信じられないと言った表情をして黙ってしまったため、程立が代わりに説明をしてくれた。

真名とは、この時代の人達にとって神聖な名前で、その名前を呼べるのは心を許した者だけであり、それ以外の人がその名前を呼べば殺されても仕方がないらしい。


よ、良かった。呼ばなくて本当に良かった。

だって、呼んだら最後、趙雲さんに殺されてたからね。


「星殿、風。どうやら官軍の軍が、こちらに来るようです。早めに行きましょう」


そう言って指差した先の荒野の向こうから、かなりの数の人間が来るのが見えた。


あれは軍隊かな・・・・・・?


「そうだな。それでは龍殿、御達者で」

「お姉さ~ん、それじゃまた逢う日まで~」

「龍殿、御達者で」


三者三様の笑顔でそう言うと、その場からまるで逃げるかのように軍隊とは逆の方向へ走っていってしまった。


「行っちゃったよ・・・・・・」


もう少しこっちの情報を聞き出したかったんだけど、そんな我が儘は言ってられないか。

でも、一つだけ言いたい事がある。

程立、私は男だよ。


「さて私はどうしようかなぁ」


三人が去った後、私がトボトボと歩きながら考えていると、背後から馬の足音が聞こえてきたと思ったら、女性の怒鳴り声が聞こえてきた。


「そこの変な格好をした女、待て!!」


変な格好をした女って・・・・・・、ああ、私のことかな?

た、確かに二十歳の人間が高校時代の制服をきているという時点でおかしいかもしれないね。

え? それは関係ない?


「あ、姉者。そのような言い方をしては・・・・・・、すまぬ、そこのお方。少し待っていただけぬか?」


あ、変な方向に考えがいってたから、止まるの忘れてたよ。

立ち止まって振り返ってみると、黒髪と青髪の女性達が私を見つめていた。


*****


「この辺りに流れ星が落ちてこなかったかしら?」


二人に囲まれていると、少し遅れてやってきた金髪でツインの髪をクルクルにした少女が話し掛けてきた。


雰囲気からすると、この軍の責任者の人かな・・・・・・?


「どうしたの? こちらの問いに答えてくれないかしら?」

「あ、はい。えっと、流れ星ですか? いいえ、気がつきませんでしたね。それに気がついたらここにいたので・・・・・・」

「ここにいた? 貴女は何を言ってるの?」


金髪さんはこんな荒野の真ん中にいるはずがない、と思ってるのか信じられないといった表情をしている。


どうでもいいことだが、“あなた”というニュアンスが女性になってる気がするなぁ。

一応、男性物を着てるはずなのに・・・・・・。


「まぁ、いいわ。私は曹孟徳よ。で、貴女の名は?」

「曹孟徳・・・・・・、もしかして魏の曹操・・・・・・?」


名前を聞いた私は、思わずそう呟いてしまう。


えっと、この金髪さんが曹操ということは・・・・・・、この世界の有名処の人物は皆女性なのかな?


「なっ!? いきなり華琳さまの名を!? 貴様!!」

「待て姉者。しかし何故、貴女は華琳さまの名を知っている?」


黒髪さんが大剣で私に斬り掛かろうとする。

咄嗟に白刃取りの体勢をとるが、青髪さんに黒髪さんは止められたので私も姿勢を正す。

確かに青髪さんの言うことは一理ある。

名乗ってないはずの名前を呟いてしまったんだから、警戒されるのは当たり前だ。

金髪さん・・・・・・、曹操さんは特に驚いた様子はなく、逆に私を品定めするかのように眺めている。


「華琳さま?」

「貴様、華琳さまに何をした!!」


そんな曹操さんの様子を見て黒髪さんがまた大剣で斬り掛かってきた。


というか、何もしてないし。

はぁ、こうなるなら呟かなければ良かったなぁ


私はそう思いながら対抗しようと白狐の柄を握る。


「待ちなさい春蘭」

「華琳さま!?」


しかし、曹操さんの一言に黒髪さんは動きを止めて曹操さんの方を向く。


でも何故止めたのだろう?


疑問に思って曹操さんを見つめると、曹操さんはこちらを向く


「貴女、何故魏のことを知ってるの?」

「・・・・・・華琳さま?」


その言葉に青髪さんが、不思議そうに曹操さんの名を呼んだ。


「魏というのはね。私が考えていた国の名前の、候補の一つなのよ」

「・・・・・・は?」

「どういう意味ですか・・・・・・?」

「まだ春蘭にも秋蘭にも言ってないわ。近いうちには言うつもりだったけれど・・・・・・」


そう言えば曹操さんがまだ官軍として軍を動かしてるとなると、時期的に後漢末期か。


あちゃ~。この時期はまだ曹魏は創られてなかったよ、失敗したなぁ。


「貴女、何者?」

「えっと・・・・・・」

「・・・・・・まさか五胡の妖術使い?」

「華琳さま! お下がり下さい! 魏の王となるべきお方が、妖術使いなどという怪しげな輩に近づいてはなりませぬ!」


魏っていきなり使ってるし!


「ち、違いますよ。私は――」

「問題無用!」


私が誤解を解こうと口を開こうとするが、黒髪さんは聞く耳がないのか、斬り掛かってくる。


はぁ・・・・・・、仕方がない。


「止めなさい、春蘭!」

「華琳さま、何故止めるのですか!?」


埒が明かないため、反撃に移ろうとした時、黒髪さんの後方から大きな声があがる。

そして動きを止めた黒髪さんが曹操さんの方を向いた。


「春蘭・・・・・・?」

「う・・・・・・っ! わ、分かりました」

「貴女、名前は?」


曹操さんの威圧で大剣を収める黒髪さん。

そして、曹操さんが私の方を向いて、名前を訊ねてきた。


そう言えば名乗ってなかったっけ。


「私は姓が龍、名が政也、字はありません。あ、勘違いをしているようなので言いますが、私は男ですよ」

「あら貴女、男だったのね、驚きだわ。それでね、少し貴女に興味があるの。私たちと一緒に城にこない?」


えっと驚きだって言っている割には、あんまり驚いたようには見えないんだけど・・・・・・。


「華琳さま!? こんな得体の知れない者を城に行かせるつもりですか!?」

「大丈夫よ春蘭。彼女に殺気はないわ」


信用してないですね、はい。

完全に彼女って言ってるもん。


「姉者、そう言うことだ。君もそれでいいな」

「別に構いませんよ(ニコッ)」

「そ、そう。なら、二人とも帰るわよ/////」

「「ぎょ、御意/////」」


私が笑顔を向けて肯定すると、三人が顔を赤くした。


・・・・・・これはきっと熱がでたんだよ、うん。


*****


今、私は曹操さんの玉座の前に立っている。

ちなみに曹操さんの玉座の脇には黒髪さんと青髪さんが控えている。


「では、改めて私の名は曹孟徳。この陳留の勅史をしているわ」

「私は龍政也と申します。それで何を訊ねたいのでしょうか?」


一応、目上の人なので敬語だ。

ま、目上の人に限らず、初対面の人には敬語になってしまうけどね。


「そうね。まずは私が考えていた魏のことを何故、知っていたのかということと、私の名を当てたことね」


ここがパラレルワールドだと言うことははっきりしてるけど、とりあえずここは自分の世界の過去という体で説明した方が良いかもしれないな。


「・・・・・・それは、どういうことなのだ?」

「私は、この世界で言う・・・・・・、未来から来た人間らしいってことです」


できるだけ分かり易く説明したつもりだったが、分からないという表情をした黒髪さんが訊ねてきたので、さらに簡潔に説明した。


「・・・・・・秋蘭、理解できた?」

「・・・・・・ある程度は。しかし俄かには信じがたい話ですな」


やはり信じられないみたいだなぁ。

まぁそれは仕方がないか、私も信じられないし。


「・・・・・・ふむ」

「分かってませんね? その顔は」

「・・・・・・文句あるか」

「いいえ。えっと例えばですね」

「おう」

「あなたが何らかの事件によって、どこか違う場所に連れて行かれて、項羽や劉邦に会ったようなものです」

「・・・・・・はぁ? 項羽と劉邦と言えば遥か昔の人物だ。そんな昔の英傑に今の私が会えるものか。何をバカな例えを・・・・・・」

「そういう状態なんですよ、今の私が」

「・・・・・・な、なんと」

「確かにそれならば・・・・・・、龍が華琳さまの名や考えていた魏という国の名を知っていたことも、説明が付くだろうな」

「だが・・・・・・、貴様はどうやってそんな技を成し遂げたのだ。それこそ五故の妖術ではないか」


そうだな。普通はそう考えるか・・・・・・。


「う~ん。私にも分かりません。ですが、私がここにいるのは事実ですから」

「・・・・・・南華老仙の言葉に、こんな話があるわ」

「南華老仙・・・・・・。荘周が夢を見て蝶となり、蝶として大いに楽しんだ後、目が覚める。ただ、それが果たして荘周が夢で蝶になっていたのか、蝶が夢を見て荘周になっていたのかは・・・・・・、誰にも証明できないというお話ですね」

「あら、博識ね。そうよ」


曹操さんはなんだか嬉しそうだ。

ただ、この胡蝶の夢は、結構好きだったから覚えていただけなんだけど。


「な、ならば華琳さまは、我々はこやつの見ている夢の登場人物だと仰るのですか!?」

「そうは言っていないわ。 けれど私たちの世界に、政也が迷い込んできたのは事実、と考えることもできるということよ」

「は、はあ・・・・・・」

「政也が夢を介してこの世界に迷い込んだのか、こちらにいた政也が夢の中で未来の話を学んできたのかは分からない。もちろん私たちにもね」


曹操さんの説明は簡潔で分かり易い。

ただ違うのは、ここが夢ではなく現実だということだ。

何故私がここにきたのかは分からないが、為すべきことがあるのだろう。

だったら私はその為すべきことをするまでだ。


「春蘭。色々、難しいことを言ったけれど・・・・・・、この龍政也は、天の国から来た遣いなのだそうよ」


あれこれ考えていたら、曹操さんが何やら黒髪さんに言っていた。

天の国から来た遣いか・・・・・・。

まぁ五胡の妖術遣いや、未来から来たなんていう突拍子もない話をするよりは、そう説明した方が分かり易くてすむ。

さすが曹操さんだな。


「・・・・・・た、確かに天の遣いというとしっくりきますね」


あの黒髪さんが納得するということは、やはり天の遣いというと分かり易いわけか・・・・・・。


「ふふ。では貴女もこれから自分のことを説明する時は、天の国から来たと、そう説明しなさい」

「分かりました」

「・・・・・・あら、本当に貴女は賢いわね。貴女、私のところで働くきない?」

「別にいいですが・・・・・・」

「いいですが?」

「他の武官や文官の方がどう言うか・・・・・・」


どこの馬の骨が、試験も何もしないで仕えることになったとなれば、他の仕えてる人達が文句を言うかもしれない。


「そう? 大丈夫だと思うけれど・・・・・・、貴女がそうしたいのなら試験をやりましょう」

「はい」

「では、明日試験を行うわ。春蘭は武官として、秋蘭は文官として試験官をやりなさい」

「「はっ!」」


曹操さんは笑いながら、適性試験を行う旨を説明していく。

私の力がどのくらいあるのか見たいらしい。

ご期待に沿えるかどうか分からないげど、精一杯やるとしよう。


「あ、そう言えば春蘭と秋蘭は名乗ってなかったわね。 政也、試験官の名は知っときたいわよね?」

「あ、いえ。多分、分かると思いますので、大丈夫です」

「あら、そうなの? じゃ、言ってみなさい」


曹操さんは試すかのように二人を私の前に差し出してきた。


ここは、知らないというべきだったかなぁ。

まぁ、後悔しても仕方がないし、さっさと答えるとしよう。

曹操さんの傍に控えているということは・・・・・・、夏侯惇または夏侯淵かな。

あと青髪さんが、黒髪さんを姉者と言っていたということは・・・・・・


「・・・・・・夏侯惇さんと夏侯淵さんですね」

「「なっ!?」」

「あら、凄いわね」


黒髪さんを夏候惇、青髪さんを夏侯淵と呟くと、二人は驚きの声をあげた。

曹操さんはこうなることが分かっていたのか、笑顔で賞賛する。

 

「じゃ、部屋に案内するわ。ついて来なさい」

「あ、はい」


曹操さんは玉座から立ち上がると私の部屋になる場所まで案内しだした。

ちなみに夏侯惇さんと夏侯淵さんはそのすぐ後ろでついていっている。

私は、その後ろからついていく。


「ここが貴女の部屋よ。後のことは使いの者に伝えるから」

「分かりました」


曹操さん達は、私を案内するとその場から去っていく。

私は、とりあえず三人が見えなくなるまで待ってから、部屋の中に入った。

そして、腰から鞘を抜いて奥にあるベットにおき、机に向かうと今の状況を確認していく。


「まず、私がいる世界は三国志、しかも趙雲、程立、曹操といった有名な人物は皆、女性であるパラレルワールド。今、分かってるのはそれだけか・・・・・・。まぁ、なるようになるかな」


そう結論づけた私は、明日の試験に向けて寝ることにした。


え? 文字とかは大丈夫かって?

一応、読み書きはできるよ。

大学の講義で習ったからね。

さて文官の方は何とかなるけど、武官の方が問題だなぁ。


「ま、今から心配しても意味がないや。明日、頑張ろう」


そう呟いた私は、そのまま眠りについたのだった。


あ、女だという誤解を解くの忘れてた。

まぁいいか。いつか分かってくれるよ・・・・・・、多分。

第二話をお読みいただきありがとうございます。

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