第17話 龍、劉備(りゅうび)軍に捕まる?のこと
第十七話、更新しました。
良かったらお読みください。
「この店かい? 親仁さん」
「へい。送ってくださいましてありがとうございました」
「いいんだよ、お礼なんて。じゃ、俺らは行くから」
「へい。お気をつけて」
あれから数時間。
俺と愛紗は、親仁さんの実家が営むお店に到着した。
そこで親仁さんと別れて、俺たちは桃香たちがいる陣営に向かった。
「ご主人様。いい加減教えてくれませんか? あの謝瑠、いえ確か龍でしたか、あの者は何者なのですか?」
その道すがら、業を煮やした愛紗が政也さんのことを質問してきた。
正直、まだ整理しきれていないのだが、このままだと愛紗が暴走しかねない。
ここは話しておいた方がいいだろう。
「分かったよ。だけど桃香たちにも報告しなければならないから、それは帰ったらってことで」
「・・・・・・分かりました。では早く桃香様たちのところに帰りましょう!」
「あ、愛紗!? ちょっ、そんなに引っ張ると―――」
愛紗に腕をとられたかと思った瞬間、物凄い力で引っ張られた。
どっちみち嫌な結末になりそうだぞ!?
あ、愛紗! もう少し力を緩めてくれ!
も、もげる、もげるから!
**********
(あらら。一刀くんも大変だねぇ)
「お~い、嬢ちゃん。おかわりいるかい?」
「ああ。頼むよ親仁さん」
関羽殿に腕を引っ張られていく一刀くんを見つめながら、親仁さん特製の団子をおかわりして頬張った。
(あの感じだと相当の痛さだからなぁ。一刀くんの腕、持つかな?)
一刀くんの腕を心配しつつ、二人が雑踏に消えたことを確認した私は、団子をたいらげてから立ち上がった。
「お勘定ここに置いとくよ、親仁さん」
「おう。頑張ってこいよ嬢ちゃん」
そして、親仁さんに見送られながら、二人の気配を追う。
ちなみに天の御使いの正体が一刀くんであると分かった時点で、私の特命任務は終わっている。
二人を追うのは、ただの興味本位だ。
一刀くんが、どのような立場になっているのかを見たいと思ったからだ。
(なるほど。一刀くんは街の外で野営をしているのか・・・・・・)
二人の気配は街を抜けて、数百メートル先に見える陣営に向かっていた。
私は街の入り口から少し手前で立ち止まる。
その場所は見晴らしのいい場所にあって隠れる場所もないので、迂闊に近づけないからだ。
(さてこれからどうするかねぇ~)
「おや? お主は・・・、龍殿ではないか?」
「ん?」
あの野営にどのように近づこうか考えていると、懐かしい気配とともに自分の名が呼ばれた。
気配の方向に顔を向けると、路地裏の露店で、なにかの書物を抱えた懐かしい人物、趙雲殿がいた。
そしてその傍には、とんがり帽子を目深にかぶった可愛らしい少女がこちらを見つめている。
「やぁ。久しぶりですね、趙雲さん」
この格好で再会するという最悪のシチュエーションに、私は内心冷や汗をかきながらも冷静さを装いながら、趙雲殿に近づく。
というかヤバいかも、これ・・・・・・。
**********
「お兄ちゃん。大丈夫か~?」
「な、なんとかな」
「もう愛紗ちゃんは。ご主人様の手が取れちゃったらどうするつもりだったの?」
「す、すいません・・・・・・」
愛紗が桃香に説教されている横で、俺は朱里の手当てを受けている。
なんとか最悪のケース(腕が折れる)だけは回避できたので、一安心だ。
「ご主人様。どうですか?」
「ああ。だいぶ良くなったよ。ありがとう朱里」
「良かったです。あのところで何で愛紗さんはあんなに急いでご主人様をお連れしたのですか?」
「思い出した! ご主人様!」
「はわわっ!?」
縮こまり反省していた愛紗が、政也さんのことを思い出して、突然大声を上げた。
そのため、朱里が驚いて俺の背中に隠れてしまった。
はぁ、やれやれ・・・・・・。
「愛紗ちゃん。もう、ダメだよ。突然大声を上げちゃ~」
「す、すいません。ですが・・・・・・」
「愛紗。あのことは雛里が戻ってきてから話すよ。いいね」
「あ、はい。分かりました」
再び桃香に怒られてしまった愛紗がちらっとこちらを見てきたので、俺は苦笑しつつ答えた。
「朱里。雛里が戻ってくるのは?」
「あ、はい。あと半刻ぐらいかと」
雛里が戻ってくるまで一時間ぐらいか。
その間に政也さんについてある程度は整理しておこう。
「そうか。それまでやれることをしておこう。皆いいね」
「「「「は~い(はっ)(おうなのだ)(はい)」」」」
*****
「ご主人様と桃香様に賛同した人たちが予想以上に集まったので、桃香様に伯珪さんから分けてもらえるよう頼んでもらいました」
「へぇ? で、ちゃんと分けてもらえた?」
「はい。若干、顔を引きつられておりましたが、十分な糧食を分けてもらえました。また武具も使い古したものですが、人数分用意してもらいました」
「やれやれ。伯珪さんに、いつかお礼をしないといけないなぁ」
「ええ。そうですね」
俺は朱里と会話しつつ、政也さんとの過去を振り返っていた。
政也さんと初めて出会ったのは、祖父ちゃんの強い勧めで狐龍剣術道場に剣道の修業に出されたときだから、確か五年前ぐらいだ。
あの時の俺は、何というか本当に絵にかいたような生意気な悪ガキだったと思う。
祖父ちゃんのスパルタ指導で強くなったと思っていた俺は、剣道と剣術では俺に敵う者など祖父ちゃん以外にいないという自惚れを抱いていた。
だから祖父ちゃんが、剣術道場に修業に出した本当の理由なんて考えもしなかったのは当たり前といえる。
『あ、君が一刀くんだね。私は龍政也と言うんだ。よろしく』
『・・・・・・・・・・・・よろしく』
道場のナンバー2の実力を持つと言われていた政也さんに対する俺の第一印象は『女の子なのに男の名なんて変な奴』とか『弱そうな年上の片目のお姉さん』とかだった。
だから最初、俺は政也さんを下に見て、政也さんを目標にしている同年代の子たちにも横柄な態度をとっていた。
実際問題、政也さんと試合をする前に試合を行った同年代の子たちの中で、俺に敵う奴なんていなかったから、そうなるのは仕方がないと言えば仕方がない。
まぁ今思うと、間違った態度だったと反省しているよ。
『龍政也。僕と戦え!』
そして俺は政也さんに挑戦状を叩きつけた。
周囲の人間たちが反対する中、当時師範代だった政也さんのお父さん、政臣さんが了解してくれたので、政也さんとの試合が成立した。
『よろしく一刀くん』
『・・・・・・・・・・・・』
笑顔で握手を求めてきた政也さんが余裕そうに見えた俺はワザと聞こえないふりをして、道場の定位置についた。
政也さんは苦笑しながら手を引っ込めると、俺の対面の定位置につく。
俺は政也さんにも勝てると思っていた。
けど、そんなに世の中は甘くなかった。
『始め!』
政臣さんが審判となり号令をかける。
そこで戦いの火蓋が切って落とされると思った瞬間、俺は一歩も動かずに負けていた。
『・・・・・・え?』
『面あり!』
俺はなにが起きたのか分からなかった。
目の前にいた政也さんが、突如として消えたのだ。
訳も分からないまま立ちすくむ俺。
パンッ!
いつの間にかそばにやってきていた政臣さんに面をとられたかと思うと、思いっきりビンタをされる。
力なくしりもちをついた俺はビンタされた頬を触りながら、正臣さんを呆然と見つめ返した。
正臣さんの顔は、まるで祖父ちゃんのようだった。
『分かっただろう? 一刀くん。君よりも強い者がまだまだいるということを。君は確かに強いし、技術もある。しかし、技術だけしかない。今はいいかもしれないが、将来必ず壁にぶち当たる。技術だけでは、到底太刀打ちできぬ者が大勢いるからな。心・技・体。この三つのバランスがそろってこそ、本当の強者と言える。それを理解しなさい』
『・・・・・・・・・・・・』
俺は何も言わずに立ち上がると、よろよろと道場の外に出ていった。
「ホント、ガキだったな俺って・・・・・・」
「え? 何か言いましたか? ご主人様」
「いや。なんでもないよ朱里」
危ない危ない。思わず口に出してしまったよ。気をつけないと。
えっと、どこまで振り返ったっけ?
ああ、そうそう。道場を出た後、俺は道場裏でうずくまっていた。
そんな俺を追いかけてきてくれたのが、他でもない政也さんだった。
けど、政也さんは何を言うワケでもなく、うずくまっている俺のそばに腰をおろしただけだった。
『・・・・・・何か用ですか?』
『いや、何も?』
『・・・・・・必ず』
『ん?』
『必ず勝ってみせますからね!』
『ふっ。楽しみにしてるよ。でも、まずは皆に謝らないといけないよ』
『うん・・・・・・』
あの後、政也さんと一緒に道場に戻った俺は皆に謝ると、最初の頃とは打って変って、真摯に剣術に打ち込んだ。
そして、政也さんとはそれから何度も試合をしながら切磋琢磨していった。
まぁ、一度も勝てなかったけど、楽しい思い出の一つだ。
ああ、これは関係ないけど、政也さんが男だったと分かったときは、超ショックだったね。
だってあれが俺の初恋だったからさ。
それはさておくとして、政也さん元気そうだったなぁ。
ここ一年ぐらい会ってなかったから、久しぶりにあえてうれしかったけど、政也さんもこの世界にいるなんて思わなかったよ。
それも・・・・・・。
「ご主人様~。雛里ちゃんと星さんが戻ってきたよ~」
「ああ、分かった。今行く」
桃香の呼び声に応えた俺は、考えを中断して朱里とともに桃香たちのところに向かった。
さて政也さんのことを皆に伝えないと・・・・・・、え?
な、なんで?
「ま、政也さん・・・、なんで?」
「ははは。また会ったね一刀くん」
桃香たちが集まっていた広場には、皆と一緒に縄で縛られた政也さんがいた。
これってどういう状況・・・・・・?
第十七話をお読みいただきありがとうございます。
ご意見・ご感想、お待ちしております。




