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第12話 龍、防衛戦をするのこと

第十二話、更新しました。

良かったらお読みください。

現在、私は季衣とともに約千人の黄巾党と交戦中である。

矢などの射撃で怯ましてから、接近戦で各個撃破していくということを繰り返し行っている。

敵兵は以前の敵よりも統率されてはいるが、こちらの(訓練された)兵士たちのようには動けておらず、すぐに隙を作ってしまいがちだ。その隙をついて、こちらの被害を最小限に抑えるようにしているワケだ。


「やぁああああっ!!」


 ドーン!!


「ぐはっ!?」

「ぐぎゃっ!?」

「がはっ!?」


防壁に近づいた敵兵数人が季衣の振り回す巨大鉄球によって吹き飛ばされていく。

これで八十回目だが、季衣はまだまだ気合十分で疲れを見せない。


さすがは季衣だ。私も体力はある方だと自負しているが、やはり車や電車などがない時代の季衣たちにはかなわないなぁ。


そう思いながら兵士たちに射撃の指示をだしていると、本部の方向から一人の兵士が駆け寄ってきた。


「伝令!! 西門を攻めている黄巾党の数が思いのほか多く、守護する楽進殿の部隊が苦戦中とのこと。龍将軍または仲康さまに援軍に向かってほしいそうです」

「東門と南門の方は大丈夫かい?」

「はっ。李典殿、于禁殿からは大丈夫との報告がありました」

「そうか。西門には私が向かう。副長(仮)にそう伝えてくれ」

「はっ!!」


私がそう告げると、兵士は急いで元来た道を走っていった。


「季衣! 凪の部隊が苦戦中らしい。私が助けにいく。こちらは任せたぞ」

「うん!! やぁああああっ!!」


季衣は頷くと、巨大鉄球を振り回して敵兵を吹っ飛ばしていく。

私はそれに微笑むが、すぐに表情を引き締める。

そして兵士たちに指示を出した後、凪が戦っている西門に急いで走り出した。



**********


龍さまに西門を任されたのだが、敵軍の数が多く私たちの部隊は苦戦を強いられていた。

龍さまの作戦通り、矢などの射撃と接近戦で敵を倒せてはいる。

倒せているが、明らかにこちらの方が減りが早い。

このままでは防壁を突破されて村の中まで被害が及んでしまう。


しかし、それだけは・・・・・・、それだけは何としても避けなければならないのだ・・・・・・!!


「はぁあああああっ!!」


私はそう思いながら拳で次々に敵兵を倒していく。

一心不乱に目の前の敵を。


「死ねぇ! 小娘ぇえええええっ!!」

「!?」


しかし、それがいけなかった。

目の前の敵だけに集中して、後ろから来た敵兵の一人に気づいていなかったのだ。

振り向いたが、時はすでに遅し。そいつはすでに私に剣を振り下ろしていた・・・・・・。


この距離じゃ避けられない・・・・・・!!


そう直感した私は、気を巡らすのを忘れて目を瞑ってしまっていた。

しかし、いつまで経っても私には斬られた感触がこない。

恐る恐る目を開けると敵兵が首をはねられており、その後ろに龍さまがおられるのに気付く。

私は硬直したかのように動けずに龍さまの様子をみることしかできなかった。

龍さまは頭を失った敵兵の胴体が倒れるのを見届けると、私を見つめて口を開いた。


「凪、怪我はしてないかい?」

「は、はい。問題ありません」

「そう。それは良かった(ニコッ)」

「ッ/////」


龍さまは私に怪我がないことが分かると、そう仰って笑顔になられた。

その笑顔を見た瞬間、私は頭が沸騰したかのように熱くなった気がした。

多分、顔も赤くなってるかもしれない。

元から綺麗な方だとは思ってたが、いきなりの笑顔は破壊力抜群だ。


りゅ、龍さまは危険なお方だ・・・・・・。


戦いの最中だというのに、不謹慎にも私はそんなことを思ってしまった。



**********


「被害状況は?」

「はっ。敵兵の数が多いので、こちらの負傷者が増加しております。また防壁は何とか突破されずにすんでますが、このままだと突破されるのは時間の問題かと思われます」

「そうか・・・・・・」


西門に到着した私はまず被害状況を確認した。

副長(仮)の伝令通り、凪たちの部隊はかなり苦戦を強いられているらしく、負傷者も思ったよりも多い。

これはうかうかしてはいられないと思った私は防壁に上がって、矢を放っている兵士たちに指示を出しながら凪を探す。


「少し防壁から離れすぎだな・・・・・・。むっ!」


見つけた凪は防壁から少し離れた場所で敵と戦っていた。

しかも目の前の敵ばかりに焦点を合わしているらしく、背後から近づいてくる敵兵の一人に気づいていない様子だった。


「ち・・・・・・っ!」


舌打ちをした私は、白狐を抜き防壁から飛び降りる。

そして全速力で凪のところに向かった。


こんなところで凪を、私の仲間を失うわけにはいかない!!


「死ねぇ! 小娘ぇえええええっ!!」


そう叫び敵兵が振り向いた凪へ剣を振り下ろしているのを視界にとらえる。

私は最大速度のまま跳躍して、白狐を左下方から振り上げた。

鈍い感触とともに敵兵の首を白狐が通り過ぎる。

直後、敵兵の頭が地面に転がり落ちた。


「凪、怪我はしてないかい?」


頭を失い敵兵の身体がドスンと倒れるのを見届けた私は、硬直し動かない凪を見つめ怪我がないか確認する。


「は、はい。問題ありません」

「そう。それは良かった(ニコッ)」

「ッ/////」


私は凪が怪我一つないことに安堵して、笑顔でそう言った。

直後、凪の顔が急に真っ赤になってしまう。

その理由は何となく分かったが、考えたくもないためここはあえて無視することにする。

凪の前に立ちながら周りを見渡すと、敵兵の動きが僅かだが鈍っているのに気付く。

おそらく先程の敵兵の一人の首を斬ったのを目の当たりにして、少し恐怖が頭を過っているのだろう。


よし。動きが鈍っているのなら好機だ。


「凪、やれるな?」

「はいっ!」


私と凪は敵兵の動きが鈍っている隙に戦える兵士たちを集めて、二部隊に分け敵兵たちを挟み込むような動きをさせる。

その動きに敵兵たちは反応できず、一気に統率が乱れた。

その隙をつき兵士たちに三人一組で敵一人と戦うように指示。そして私も混乱していく敵兵を斬り伏せていく。


*****


数分後、鎮圧が完了した。他の場所でも何人かは逃がしたものの鎮圧完了と副長(仮)から報告があった。

私は見張りを残して、凪とともに義勇軍の本部に向かうことにした。


「あの。龍さま・・・・・・」


本部に向かう途中、凪が立ち止まり話しかけてきた。

立ち止まり凪の顔を見ると、凪は真剣な目で私を見つめていた。


「どうかしたかい凪?」

「先刻は不甲斐ない私を助けていただきありがとうございます」


凪はそう言って、頭を深々と下げてきた。

おそらく凪は自分が不甲斐ないせいで私に助けてもらったと思い気にしているのだろう。


たく、そんな自分を卑下にする必要はないのに・・・・・・。


私は苦笑しながら季衣にやるように凪の頭を撫でながら微笑む。


「気にすることはない。凪は私にとって大切な仲間の一人だ。助けるのは当然」

「大切な仲間・・・・・・」

「そう。大切な仲間だ。黄巾党から村を守るという共通の目的を持った、ね。君も私と同じ立場なら必ず助けに来ただろう?」

「は、はい・・・・・・!!」


凪は私の言葉に笑顔になって、義勇軍の本部の天幕内に入っていった。

遅れて天幕内に入ると、すでに季衣、真桜、沙和が思い思いに休んでいた。


気配から、相当体力を消耗しているようだな。

出撃時よりも元気がない。

そういう私も疲れていないと言えば嘘になるけどね。しかし、そうも言ってられないのが、今の状況だ。


「副長(仮)。負傷兵の数の確認と手当ての状況はどうなってる?」

「はっ。すでに確認作業をしながら手当てを行っています。ご安心を」

「そうか。さて皆、休んでいるところを悪いが、作戦会議を開くから集まってくれ」


私は副長(仮)に負傷兵の状況を確認して、作戦会議を始めるため皆を呼び集める。

皆は重い腰を上げ私がいる中央付近に集まってきた。


「皆も分かっていると思うが、おそらく・・・・・、いや、必ず第二波が来る。その場合、敵は四方向からではなく、一方向ないしは二方向から攻めてくる可能性が高い」

「四方向からの攻めが失敗したと分かれば、同様な事は繰り返さないはずだということですね?」

「そうだ。相当なバカでない限り、そういうことはしない。兵力をあまり分散させずに攻める作戦をとるはずだ」


今回の黄巾党は指揮官がいるからな。同じ轍をふまないはずだ。

一方向ないしは二方向から攻めてくると断定して間違いない。


私はそのことを基本に考えた作戦を皆に説明していった。


「副長(仮)、それぞれの門には見張りを配置しているんだね?」

「はい」

「ならば敵がくれば伝令にくるだろうから、その報告によって部隊を編成する。もちろん残りの門にも多少は見張りの兵を置く必要があるが、それは数人でも大丈夫だろう」


私はそこで話を句切ると、皆の顔を見回して一呼吸置いて説明を続けた。


「孟徳殿たちは夜が明ければ援軍に来てくれるはずだ。だからそれまでは無理に敵を倒そうとせず―――」

「孟徳さまが来てくださるまで、守り抜けば良いということですね?」

「そうだ。孟徳殿たちがくれば、数による不利の状況は払拭される。そこで孟徳殿たちと呼応し敵を一網打尽にすればいいんだ。だから無理をする必要はない。無理をして怪我をしたら元も子もないからね」

「けど孟徳さまが助けにくるんか?」


これまで黙って聴いていた真桜がそのような疑問を口にした。


確かに助けにくるかも分からない華琳殿たち頼りのこの作戦を決行するのは無謀でしかないな。


それに華琳殿たちのことを何も説明してなかったし、それを気にするのは尤もだ。


「大丈夫。私たちは先遣隊。本隊は準備が整い次第、この村に向かう手筈になっているよ。それにこうなることも考慮して、防壁を作成している時に兵たちの中から足が速い者を選出してもう一度伝令に行かせたから安心しなさい」

「そうやったんかぁ。姉さんはぬかりないんやなぁ」

「こ、こら真桜。そんな口のきき方は・・・・・・」


真桜の話し方に凪が焦った様子で真桜を叱る。


おそらく州牧の華琳殿の将であり、天の御遣いと言われている私にざっくばらんな話し方は失礼であると思ったのだろう。


「凪、気にしなくてもいい。普段の喋り方でかまわないよ」

「で、ですが・・・・・・」

「ええやんか凪。姉さんがかまわんって言うてんねんから~」

「そうなの~。凪ちゃんは生真面目すぎなの~」

「さ、沙和まで何を言って!?」

「ははは。三人は仲がいいねぇ」

「りゅ、龍さまも何を!?」


天幕内はしばらく笑いに包まれる。


なんというか・・・・・・。いいね、うん。

先程まで血生臭いことをしてたのに、この和気藹藹とした雰囲気は心が和むような気がするよ。

本当なつかしいなぁ。そう言えば、こんなに心から笑ったのはこの世界に来て初めてかもしれないな。


「さて皆は敵が来るまで休んでおきなさい」

「お姉ちゃんはどうするの?」


ひとしきり笑った私は皆に告げると、天幕の入り口に向かった。

するとそばにいた季衣が立ちあがり訊ねてくる。

周りを見ると、凪たち三人も真剣な目で私の方を見ていた。


ふっ。そこはやはり武人と言うべきかな。でも・・・・・・。


「負傷兵の様子を見に行くだけだから、四人は休んどきなさい。副長(仮)、行くよ」

「はっ」


私はそう言って皆を休ませると、本部の天幕を出る。

そして傍に控えていた副長(仮)とともに負傷兵のいる救護班の天幕に向かった。


*****


救護班の天幕で負傷兵の人数の報告を受けていると、本部から敵兵の姿を確認したという報せがあった。

本部に急いで戻る道すがら敵のことを詳しく聞くと、敵は東門から南門におよぶ程の人数(約六千人以上)で攻めてきてるらしい。

どうやら読み通り一気に畳み掛けにきたみたいだ。


「季衣は私とともに東門から南側、凪と真桜は南門から東側で兵たちの指揮にとってくれ」

「「「うん!(はい!)(分かったわ!)」」」

「沙和は残りの北門、西門の見張りの指揮を頼む。副長(仮)も君の指揮に従う」

「分かったの!」


本部に戻った私はすでに準備の整えている季衣たちに指示を出した。

北門、西門の見張りは、会議でも説明した通り万が一のためだ。

その指揮を沙和一人に任せるのは荷が重いかもしれないが、副長(仮)もいることだし大丈夫だと信じている。

後は華琳殿たちが来るまで乗り切るだけだ。その後、私は季衣たちととも天幕をでる。

そして集まっていた兵士たちを再編成して、それぞれの持ち場に向かわせた。


「副長(仮)、于禁の補助を頼む」

「はっ、お任せを」

「よし。季衣、行くぞ」

「うん!」


私は副長(仮)に声をかけると、季衣とともに東門に向かった。



**********


政也たちが黄巾党(第二波)と接敵した頃、華琳たちは村に急いで向かっていた。


「急げ急げ! 急いで先遣隊に合流するぞ! 進め! 進めぇいっ!」

「姉者。急ぐ気持ちも判るが、そんなに急がせては戦う前に疲れてしまうぞ」

「秋蘭の言う通りよ、春蘭。疲れさせては意味がないわ」

「う、うぅ・・・・・・っ。華琳さまぁ、わたしだけ、先遣隊として向かってはダメですか?」

「ダメよ。目と鼻の先ならまだしも、今の距離でこれ以上隊を分けても効果は薄いわ」


春蘭のハイテンションを華琳や秋蘭が抑えるという、いつものやりとりをしている三人の処へ桂花がやってきた。


「華琳さま。政也から報告の早馬が届きました」

「報告なさい」

「敵部隊よりも村へ入ることができたそうです。夜間のため兵数の詳細は不明。しかし明らかに先遣隊よりも多く、予想通り組織化されているため苦戦を強いられるだろうとのこと。村の防衛を最優先に考えて戦うそうです。最後に、くれぐれも余力を残して接敵して欲しいそうよ、春蘭」

「うぅぅ・・・・・・」


桂花は政也の報告を伝え、最後に春蘭を見つめてそう言うと、春蘭は目をつむり唸った。


「ふっ。さすがは政也だ。姉者の性格はよく判っている」

「むむむ・・・・・・」

「ふふ。春蘭、現場で十分に戦えるように、力は抑えめでいきましょ。いいわね?」

「うぅ。了解です」


華琳が秋蘭の言葉に微笑み春蘭に向き直ると、春蘭は渋々と了承した。

その時、一人の兵士が飛び込んできた。


「孟徳さま! 孟徳さまはいらっしゃいますか!」

「どうした!」

「あれ? お前は先遣隊の・・・・・・」

「はっ! 先遣隊、敵軍と接敵! 戦闘に突入しましたっ!」


その兵士の言葉に華琳たちの表情が険しくなる。


「・・・・・・状況は!」

「村には義勇軍が駐屯していましたので、連携して防衛に当たっています! 私がこちらに向かった時の敵軍は第一波で、龍将軍はこれよりも規模が大きい第二波が必ず来るとおっしゃっていました! 第一波は鎮圧できる算段が大きいが、第二波は非常に厳しい可能性があるため至急援軍を求むとのこと!」


兵士は政也から聴かされたことを一言一句華琳たちに伝えた。

春蘭が華琳を見つめる。


「華琳さまっ!」


春蘭と同じように秋蘭と桂花も華琳を見つめる。

華琳は三人の顔を見つめてから口を開いた。


「政也の予測は恐らく当たっているでしょう。春蘭、秋蘭」

「はっ! 総員、全速前進! 追いつけない者は置いていくぞ!」

「総員、駆け足! 駆け足ぃっ!」


その言葉に頷いた春蘭と秋蘭は兵士たちにそう命令していった。

華琳は兵士たちが駆け足で前進している中、政也の言を伝えた兵士に向き直った。


「あなたは殿について、脱落した兵を回収しながらついて来なさい。以降は本隊と合流するまで、遊撃部隊として指揮を任せます。いいわね」

「はっ!」


そう命令した華琳は春蘭たちとともに全速力で村に向かった。



**********


私と季衣は東門から南側にかけて黄巾党と接敵中だ。

ただ数と勢いでおされ気味で、防壁が今にも崩れそうである。


応急で造ったから、脆い処が多々あったか・・・・・・。

いや、第一波で多少傷ついていたとも考えられる。

まぁ、どっちにしても芳しくない状況だ。


「お姉ちゃんっ! 南側の防壁が壊れそうだよ!」

「ち・・・・・・っ!(造り直してる隙はない。兵をそこに少し多めに配置して持たせるしかないな)」


季衣の報告に舌打ちした私は、素早く兵士たちに指示をだし対応する。


これで当分は保てるだろうが、華琳殿たちが間に合うかどうかは微妙だな。


「お姉ちゃん。春蘭さま達、間に合うかな?」

「季衣。指揮官殿がそんな顔をしちゃダメだぞ。春蘭殿たちが来ると信じて今自分がやれるべきことをするんだ」

「う、うん。そうだよね。判ったよお姉ちゃん!!」

「ああ。いい娘だ季衣」


少し情けない顔をした季衣の頭を撫でる。

季衣は真剣な表情をして、防壁をよじ登ってきた敵兵数人を巨大鉄球で吹き飛ばした。

私は微笑み白狐を握り直す。


「・・・・・・皆、ここが正念場だ! 力を尽くして、何としても生き残るぞ!」

『『『『『おぉーっ!』』』』』


そして疲れが溜まってきた兵士たちに叱咤激励して、敵兵を切り伏せていく。

兵士たちは気合いを入れ直して、次々に向かってくる敵兵を倒していった。


「報告です! 敵軍後方より大きな砂煙! 大部隊の行軍のようです!」


その時、私のところに一人の兵士がやってきて、そう告げてきた。


「敵軍の援軍か! それとも・・・・・・」

「お味方です! 旗印は曹と夏侯! 孟徳さま達ですっ!」


敵軍後方を見つめると、華琳殿たちの旗印を視界に捕らえた。


よし! 間に合った・・・・・・!!



**********


遥か遠くへ聞こえるような大きな銅鑼の音が平野に響き渡った。

その音や華琳たちの本隊によって、黄巾党内では徐々に動揺が広がる。


「鳴らせ鳴らせ! 鳴らしまくれ! 村の中にいる龍たちに、我らの到着を知らせるてやるのだっ!」

「敵数の報告入りました! 敵数、およそ六千! ですが、我ら本隊の敵ではありません!」

「部隊の展開は!」

「完了しています! いつでもご命令を!」

「さて中の政也はちゃんと気付いてくれたかしら・・・・・・?」


華琳はいつでも突撃できる準備が完了したのを確認して、そう呟きながら村の方角を見つめた。

すると華琳の下に秋蘭が近づき報告した。


「華琳さま。村を囲んだ防壁の一部から、矢の雨が放たれたとの報告が。防壁に掲げられた旗印は龍。どうやら龍は気付いてくれたようです」

「さすがね。ならこちらが率先して動くわよ! 政也と季衣は呼応して動いてくれるでしょう!」

「後々、敵の本隊と戦わなければなりません。ここは迅速に処理するべきかと」

「判ったわ・・・・・・。春蘭!」

「はっ! 苦戦している同胞を助け、寄り集まった烏合の衆を叩き潰すぞ! 総員、全力で突撃せよ!」


春蘭の命令により兵士たちは動揺している敵軍に突撃していった。



**********


華琳殿たちと呼応した私たちは、敵部隊を撃破することができた。


「龍! 季衣! 無事かっ!」

「ああ、大丈夫だ。危ないところだったけどね」

「春蘭さまー! 助かりましたっ!」


その後、季衣や凪たちと義勇軍の本部に戻って、負傷兵などの確認行っていると春蘭殿がやってきた。

そして春蘭殿から少し遅れて、華琳殿と秋蘭殿もやってくる。

華琳殿は私と季衣の顔を見て、安堵の表情をしながら口を開いた。


「二人とも無事でなにより。損害は・・・・・・、大きかったようね」

「はい。第一波、第二波続けての戦いでしたので、負傷者が多数でました。しかし、彼女らのおかげで防壁を守り抜くことができて、死者もださずに済みました。また村の住民は敵が来る前に避難が完了していたので、皆無事です」

「・・・・・・彼女らは?」


華琳殿は私の報告を聞いて、凪たちのことを訊ねてきた。

私の傍にいた三人は一歩前にでて、凪が代表し口を開く。


「・・・・・・我らは大梁(たいりょう)義勇軍。黄巾党の暴乱に抵抗するため、こうして兵を挙げたのですが―――」

「「「あー!」」」

「うむ・・・・・・」


凪の説明の途中、春蘭殿、沙和、真桜の三人が叫び声をあげた。

叫び声はあげなかったものの、秋蘭殿も春蘭殿たちと同様に驚いた表情をしながら凪を見つめている。


「・・・・・・なによ、一体」


話の腰を折られた華琳殿が不機嫌そうに訊ねられたので、私は苦笑し説明する。


「華琳殿、覚えていませんか? 前に街へ視察に行ったときの全自動カゴ編み機という絡繰を作ってたカゴ屋ですよ」

「・・・・・・思い出したわ。どうしたの、こんな所で」

「ウチも大梁義勇軍の一員なんよ。そっか・・・・・・、あの時の姉さんが、孟徳さまやったんやね・・・・・・」


真桜は口をポカンと開けて、華琳殿を見つめている。


まぁ普通のお客様だと思っていたのが、州牧の華琳殿だったと聞けば誰だって驚くな、うん。

そう言えば、春蘭殿たちも驚いていたっけ。


「秋蘭殿と春蘭殿も知り合いなのかい?」

「うむ。私も街の視察の時に彼女からカゴを買ったんでね」


私の問いに秋蘭殿は頷くと、凪の方を見つめながらそう説明する。


なるほど。あの時のカゴは凪から買ったものだったわけね。


「どうしたんですか、春蘭さま?」

「い、いや、何でもないっ。何でも!」

「むぐぐー。内緒にするから、離してなのー!」


季衣の声でそちらを向くと、春蘭殿が沙和の口を押さえていた。


一体、どうしたんだ?


「・・・・・・で、その義勇軍が?」

「はい。黄巾党の賊がまさかあれだけの規模になるとは思いもせず、こうして龍さまに助けていただいてる次第」

「そう・・・・・・」


春蘭殿と沙和とのやりとりを無視して、話を続ける華琳殿と凪。


うん、慣れてるね二人とも。

華琳殿はともかく凪も慣れてるとは・・・・・・、まぁ、あの二人と付き合っていたら当たり前か?


「己の実力を見誤ったことはともかくとして・・・・・・、村を守りたいというその心がけは大したものね」

「面目次第もございません」

「とはいえ、あなた達がいなければ、私は大切な将を失うところだったわ。政也と季衣を助けてくれてありがとう」

「はっ!」


華琳殿がそう礼を述べると、凪は頭を下げた。


「あの、それでですね。華琳さま」


話が終わった所を見計らい、季衣が声をかけてくる。

華琳殿が向き直るのを待ってから、季衣は口を開いた。


「凪ちゃん達を・・・・・・、華琳さまの部下にしてはもらいませんか?」

「義勇軍が私の指揮下に入るということ?」


華琳殿は季衣の言葉を受け、凪たちに視線を向けてそう訊ねた。

凪は姿勢をただし、自分の考えを述べていく。


「聞けば! 孟徳さまもこの国の未来を憂いておられるとのこと。一臂(いっぴ)の力ではありますが、その大業に是非とも我々の力もお加えくださいますよう・・・・・・」

「・・・・・・そちらの二人の意見は?」


華琳殿は凪の後ろにいる真桜、沙和の二人に訊ねる。

それを受けて、二人は笑顔になる。


「ウチもええよ。孟徳さまの話はよう聞いとるし・・・・・・、そのお方が大陸を治めてくるなら、今よりは平和になるっちゅうことやろ?」

「凪ちゃんと真桜ちゃんが決めたなら、わたしもそれでいいのー」


華琳殿は頷き私の方を向くと、三人について訊ねてきた。


「政也。彼女たちの能力は・・・・・・?」

「そうですね。私が言うのも何ですが、一晩中一緒に戦ってみて、皆鍛えればひとかどの将になる器であることは分かりました」


私は自分の意見を述べる。


三人はまだまだ春蘭殿や秋蘭殿の気配には遠く及ばないものの、将来に期待できるだけの気配を持っている。

それは確かなことだ。


「政也が言うならばそうなのでしょう。季衣も真名で呼んでるようだし、いいでしょう。三人の名は?」

「楽進と申します。真名は凪・・・・・・、孟徳さまにこの命、お預けいたします」

「李典や。真名の真桜で呼んでくれてもええで。以後よろしゅう」

「于禁なのー。真名は沙和っていうの。よろしくお願いしますなのー♪」


華琳殿は微笑み三人の名を訊ねる。

三人はお互いを見つめ合うと、姿勢を正して順に自分の名と真名を告げた。


「凪、真桜、沙和。そうね・・・・・・政也」

「? はい、何でしょうか?」


三人の真名を呟いた華琳殿が私を見つめてくる。

そして華琳殿は私を指しながら三人にこう告げた。


「差し当たりあなた達三人は、政也に面倒を見させます。彼女の指揮に従うように」

「はい! 龍さま、よろしくお願いします」

「姉さんだったら、ウチもええよ。よろしゅうに姉さん」

「沙和もー!」


華琳殿の命にそれぞれ頷くと、私に礼をしてきた。

ちなみに華琳殿の“彼女”に突っ込まなかったのは諦めたのもあるが、突っ込んだら華琳殿の命令(男発言禁止)違反に触れるからだ。


「政也、よろしくね」

「了解しました」


私が華琳殿の言葉に頷くと、私たちの元に桂花殿がやってきた。


ああ、そう言えばいなかったね。


「華琳さま。周囲の警戒と追撃部隊の出撃、完了いたしました。住民たちへの支援物資の配給も、もうすぐ始められるかと」

「ご苦労様、桂花。皆、三人のことは何か異論はある?」


桂花殿の報告に頷いた華琳殿は、三人が私の下につくということについて、皆の意見を訊ねる。


「特に問題ないかと」

「政也ならば問題ありません、華琳さま」

「私も龍ならば異論はございません」


上から秋蘭殿、桂花殿、春蘭殿が問題ないと告げる。

すると季衣が喜んで三人に抱きついた。


「良かったね、三人とも!」


三人はくすぐったそうにしながらも、喜んでいる。


ふっ。良かったな三人とも。


華琳殿は季衣を三人から離すと、皆を見つめ口を開いた。


「それではこの件はこれでいいわね。物資の配給の準備が終わったら、この後の方針を決めることにするわよ。各自、作業に戻りなさい」

「了解ですっ!」


華琳殿の指示に春蘭殿が答えたのを皮切りに、私たちは自分の作業に戻っていった。

新たな仲間、凪、真桜、沙和の三人とともに・・・・・・。

第十二話をお読みいただきありがとうございます。

ご意見・ご感想、お待ちしております。

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