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第11話 龍、三羽鴉(さんばがらす)に出会うのこと

第十一話、更新しました。

良かったらお読みください。

先発隊として城を出発した私と季衣は、暴徒の群れ(黄巾党)が現れたという村に急いで向かっていた。

今回の敵は、今まで以上の規模。それに対して、こちらの兵力は小規模部隊と中規模部隊の中間ぐらい。

この兵力差で村の人間の安全を確保しつつ、敵と戦わないといけない。


先発隊としては非常にシビアな戦いになるだろう。

村に義勇軍でもいれば多少は戦いやすくなるとは言え、それを期待するなど愚の骨頂。

この兵力でいかに戦うかが重要だ。


そのとき、一人の兵士が近づいてきた。


「仲康さま! 龍将軍! もう少しで黄巾党が現れたという村に到着します」

「うん、分かった! 皆に気を引き締めるように伝えて!」

「は!!」


頷いた兵士は、すぐさま後ろにいる部隊へ伝えに向かった。


「いよいよ黄巾党とのご対面だぞ、季衣」

「うん! お姉ちゃん、絶対村を守ろうね!」

「ああ」


季衣とともに気を引き締めてから数分。前方に村へ接近している影を確認した。

おそらく、あれが黄巾党の暴徒たちだろう。

夜間だから数は目視できないが、気配でこちらの人数よりも遥かに多いのは分かる。しかも数隊に分かれて接近しているようだ。これは明らかに組織化しているな。


「季衣、急ぐぞ」

「うん! 皆、もう少し早めに行くよ!」


黄巾党の速度は比較的遅い。

今の速度でも、こちらが早く村に到着する。しかし、村の人たちの避難を考えると、速度を上げた方が良い。

そう判断した私は季衣に声をかけ、兵士たちとともに急いで村に向かった。


*****


「許可してくれてありがとう」

「いいんですよ。家はまた建て直せばいいんですから」

「婆さんの言う通り。生まれたこの村を守るためなら安いものですじゃ」

「ははは、そうかい。では気をつけて」

「「ありがとうございます」」


村に到着した私たちは、早速村の人たちの避難を始めた。

そして、ある老夫婦を避難させた時、私たちの他にも避難を手伝っている者たちがいることに気づく。


「・・・・・・・・・・・・ん?」


義勇軍であると踏んで、季衣とその者たちに近づこうとすると、背後から少し殺気を感じたため振り向いた。

そこには身体中に傷をつくって、白髪を(私のように)後ろで三つ編みにした少女が睨んでいた。


「貴女たちは、何者ですか・・・・・・?」


彼女はいつでも戦えるように構えながら、警戒した面持ちでそう訊ねてきた。


まぁ、黄巾党の暴徒たちが接近しつつあるこの状況で、警戒するのは当たり前か。

おそらく、この子は義勇軍の者だろう。見知らぬ人がいた場合の対処としては問題ない。

しかし、警戒されても困るので、ここは華琳殿の名を出して敵ではないことを分かってもらうことにしよう。

華琳殿の名は広まっているはずだし、言えば分かってくれるだろう。


「私たちは怪しいものではないから、そんなに警戒しないで欲しい。私の名は龍政也。こっちが指揮官の――」

「許仲康だよ」

「私たちは曹孟徳殿のところで武官として仕えている者だ」

「龍・・・・・・、政也・・・・・・? まさか貴女さまは、噂の独眼龍姫(どくがんりゅうき)の・・・・・・」


少女は私の名を反復して驚いた表情をする。


まさか華琳殿の名じゃなくて私の名で反応するとは思わなかったよ。

というか私はそんな二つ名で呼ばれてたのかい・・・・・・?


「うん、そうだよ! お姉ちゃんは独眼龍姫こと天の御遣いの龍将軍だよ!」

「し、しししし失礼しました! 知らなかったとは言え、とんだ御無礼を・・・・・・!」


少女は季衣の一声で慌てふためきながら、これでもかっていうぐらい頭を下げてきた。


「そんなに謝らなくてもいいよ。警戒は当たり前だからね。で、私たちが敵ではないと信じてもらえたかな?」


私は苦笑して、少女を宥めながらそう訊ねた。少女は『はい!!』と力強く返事をしてきた。


あ、そうだ。この子が義勇軍の者だったら、義勇軍のところへ案内してもらうことにしよう。

でも、その前に・・・・・・。


「ちょっと君!!」

「はっ! 何でしょうか!」

「これから夜通しで黄巾党からこの村を守ることになる。敵は私たちより数が多く、その上組織化されている。苦戦を強いられるのは必然だ。だから孟徳殿たちには余力を残し接敵して欲しいと伝えてくれ。」

「はっ!」

「あ、そうそう。元譲殿には特にと付け加えるのを忘れずにね」

「分かりました!! では」


報告の早馬を出すため近くにいた兵士さんに指示を出す。兵士さんは頷くと、急いで馬を走らせていった。


春蘭殿に念を押しようにしたのは念のためだ。

まぁ、秋蘭殿がいるから大丈夫だとは思うけどね。


「・・・・・・では君の名を聞こうか?」

「も、申し遅れました。私は楽進(がくしん)と言います。龍さま、よろしくお願いします」


私が名を聞くと姿勢を正した彼女はそう言って、頭を下げてきた。


この子が楽進・・・・・・。

ふぅ・・・・・・、分かってはいても、やはり武将が女の子って言うのは吃驚するなぁ。


私はそう思いながらも顔には出さないようにして口を開く。


「龍さまはやめてくれないかい? 私はそんなに偉くはないからね。将軍か、せめて、さんにして欲しい」

「いえ! 孟徳さまの将の方にさん付けなどという無礼はできません!」

「そ、そう・・・・・・」


やれやれ、雰囲気で真面目だとは思ったが、ここまで生真面目で更に頭が固い性格とはね・・・・・・。


「まぁいいや。さて楽進・・・・・・、君は義勇軍の者かな?」

「あ、はい。そうです」


私の雰囲気が変わったのを感じ、少し緊張したように頷く楽進。

私はその目を見つめながら訊ねる。


「・・・・・・義勇軍がいる場所に案内してもらえるかな?」

「分かりました。こちらです」


楽進は頷くと、村の中央に向かい歩き出した。

私と季衣は避難誘導と黄巾党の監視を兵士たちに任せて、楽進の後をついていった。


「ここです」


ついていった先には百人ぐらいの義勇軍の者たちがいた。

村で避難させている義勇軍と合わせると百二十人ぐらいになる。


黄巾党の兵力と比較すると、我々と合わせたとしても兵力差はあまり変わらないな。

無暗に突撃するのは得策ではないか。ここは、守りを固めるほかない・・・・・・。

やはり、あの方法がいいかもしれない。


あれこれ黄巾党との戦いを考えていると、二人の少女がこちらに近づいてくるのが見えた。

一人は露出度が高い服装(水着?)を着ているが、誰でも一回は視線が向いてしまいそうな巨乳を隠しきれていない(ある意味、隠していない?)少女で、もう一人は眼鏡をかけており、なんとなく近代的な服装でお洒落に着こなしている少女だ。

前者の少女の顔に見覚えがあった。


あの子は確か・・・・・・。


「凪、避難は完了したんか? って、あり?」

「凪ちゃん。この人たち、どうしたの?」

「真桜に沙和か・・・・・・、避難はもう少しで完了する。私はこの方たちを案内してきたんだ」

「そうやったんか。ウチの名は李典(りてん)って言うねん。よろしゅう――って、あんさんはあの時の!?」


やはり街の視察で出会ったカゴ売りの少女だったらしい。

私は驚いて(私を)見つめている少女に微笑む。


「あの時はすまなかったね」

「いやいや」

「あれ~? 真桜ちゃん、この人と知り合いなの?」

「ちょっとな~」


私の言葉に眼鏡をかけた少女が訊ねると、絡繰職人の少女が人懐っこい笑みを浮かべ、関西訛りでそう答える。


「わたしは于禁(うきん)っていうの。よろしくなの~」


眼鏡の少女も同様に自己紹介をした。


それにしても李典、于禁か・・・・・・、確かこの楽進とともに、アニメやゲームで三羽鴉として描かれることが多く、魏の武将として活躍した武将だったな。

ということは、この戦いで仲間になるかもしれないということかな。


「楽進には名乗ったが、改めて名乗らせていただこうかな。私は曹孟徳殿のところで将をしている龍政也という。今回は指揮官であるこっちの」

「許仲康だよ!」

「補佐としてここにいる。よろしく頼む」


私がそう自己紹介すると、李典、于禁の二人はかなり驚いた表情をした。


「ま、まさか曹孟徳さまっちゅうたら、あの曹孟徳さまなんか・・・・・・?」

「他にどなたがおられると言うんだ? 正真正銘、曹孟徳さまの将の方だ。しかも、あの龍政也さまだぞ?」

「えっ!? あの道行く人が全員振り返る程の美人さんで、独眼龍姫って呼ばれてるあの龍政也さんなの!?」

「そ、それはえらいこっちゃ・・・・・・」


道行く人が全員振り返る程の美人って・・・・・・、どれだけ尾ひれが付いているのか気になる。

ま、まぁいいや。今はそんなことを考えている時ではない。

早速、義勇軍のリーダーに協力を打診しないといけないな。

おそらくこの三人が義勇軍のリーダー的存在で間違いないだろう。確認をとってみるか。


「楽進、李典、于禁。義勇軍のリーダー・・・・・・、義勇軍を率いているのは君たちかい?」

「「「はい!(そうや)(そうなの)」」」


やはり、この三人が義勇軍の中心的人物ということらしい。


「ではこの村を助けるために、力を合わせてくれるかい?」

「は、はい! むしろこちらからお願いししたいぐらいです!」

「りゅ、龍さま達がおれば心強いことはないで!」

「そうなの!!」


私の言葉に三人は大きく頷いた。


よし、協力も得られた。これで村を守る戦いは多少だが、しやすくなったぞ。


「・・・・・・よし。それでは本題に入ろう。楽進、こちらに軍師いるかい?」

「いえ、いません・・・・・・」

「そうか・・・・・・」


守るにあたって私には一つの考えがあり、それを冷静に判断できる者(軍師)に相談したかったんだが、まぁいい。軍師がいないのだから仕様がない。

ここは私の考えを皆に示すか。


「地図はあるかい?」

「あ、はい。沙和」

「はいなの~」


于禁は返事をすると、地図を机に広げた。


よし、あとは・・・・・・。


「季衣、敵は四方向から攻めてきているんだったな?」

「うん! 斥候の話ではそうだよ!」

「そうか。それならばこういう作戦はどうだろうか?」


私は季衣に敵の位置を確認した後、自分が考えた作戦を述べていく。

村の四方向にバリケード、つまり防壁を作り足止めをしながら、弓の遠距離射撃などで相手の兵力を減らす。

他にも作戦はあるが、これが基本の作戦だ。

しかし、これには問題点がある。丈夫な防壁をつくるための時間があるかどうかだ。

作戦会議を開いている間にも黄巾党の賊徒は近づいているのだから。

ちなみに材料は家を壊して、足りないのを補えばいい。これは先程、避難していく村の人たちに快く許可をもらっている。


「どうだ、皆?」

「私はかまいません!」

「ウチもかまへんよ」

「沙和も~」

「ボクもいいと思う」


どうやら皆の同意も得られたようだな。

私は全員の顔を見渡すと、一人一人に指示を出していった。


「李典は東門、于禁は西門、楽進は南門で制作にとりかかってくれ。私たちの兵にも君たちの指示に従うよう伝えておくから安心してくれ。季衣は私と北門を担当だ。急ぐぞ。時間は待ってくれない」

「「「「はい! (うん!)」」」」


私の指示で皆が一斉に動き出した。

私と季衣は兵士たちを四隊に分け、それぞれを担当させる。そして、北門担当の兵士たちとともに北門に向かった。


*****


「即席なので防御力が心配だが、とりあえず防壁は完成した。戦術としては防壁の上からの射撃と接近戦で暴徒達の足止めを行う。接近戦はこっちから向かわない、後追いはしない。冷静に判断し、退く時は退くんだ。皆、それを心がけてほしい」


かなり危ない状況だったが、なんとか黄巾党がくる前に防壁を作ることができた。

皆には最終確認のため集まってもらっている。


「で、皆の配置だが・・・・・・、東門は李典、西門は于禁、南門は楽進が指揮官として兵を率いて守ってもらうよ。状況は逐一、この中央に報告。いいね」

「龍さま、凪でかまいません」


指示を出していると、いきなり楽進がそう告げてくる。


「・・・・・・それは真名じゃないのかい?」

「はい。ですが、あったばかりの私たちをここまで信じてくれるのですから当然です」


楽進はそう言って微笑む。


「ウチも真桜でかまへん」

「沙和も同じなの」


李典、于禁も楽進と同じようにそう言ってきた。


三人が真名を預けてくれるっていうのは、私を信頼してくれている証かもしれない。

だったら、私は三人の期待に応えないといけないな。


「分かった。凪、真桜、沙和、任せたよ」

「「「はい!!」」」


三人はそう返事すると、持ち場に向かっていった。


「・・・・・・さて、季衣。私たちは北門だ。指揮官、やれるね?」

「うん!」

「よし。先に行っててくれ。私は少しやることがある」

「うん! 分かった!」


私の問いに季衣は元気よく返事をする。私は笑顔になると、季衣を先に行かせた。


「おっと・・・・・・・・・・・・」


副長(仮)に頼み事をしようと立ち上がろうとしたら、少しよろけてしまった。


≪政也、大丈夫か・・・・・・?≫

「大丈夫だよ、白狐」

≪我は政也の守り刀。政也は我が守る。政也、存分に戦え≫

「ははは、頼もしいな。よろしくな頼むな」


その後、私は副長(仮)に状況の報告をまとめて全員に知らせるよう頼んで、北門に向かった。

北門では、すでに黄巾党の暴徒たちが攻め込んできていた。私は指揮をしている季衣の傍に立つと、暴徒たちを睨みつけながら、季衣に告げる。


「必ずここを死守するぞ、季衣」

「うん!」

「でも、無理はするなよ?」

「お姉ちゃんもね!」


こうして私たちの戦いが始まった。

第十一話をお読みいただきありがとうございます。

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