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カタツムリの情愛

作者: 大犬冬太


 「晴れた日ってカタツムリはどこにいるのかしら?」と彼女は空から落ちてくる一枚の羽毛を連想させるような柔らかい声で言った。

「暗くてじめじめした所じゃない?」と僕はカタツムリの巣を想像しながら言った。

「例えば?」

「卑屈な青年の心象世界。」

「君みたいな?」

「そう、僕みたいな。」

「君はカタツムリの宿だったのね。」

「雨の日にはみんな僕を置いて出かけていくから、空っぽになるんだ。」と僕が答える頃には彼女はピクニックに出かけた日の晩の子供のような、安らかな寝息を立てていた。

 僕たちは雨の日の夜にはセックスをする。部屋から出ず、雨が降っているからセックスでもしようか、という共通理解のようなものを持って行う。それは単なる流れ作業や性欲云々といったことではなくて、雨の日特有の何かを埋めるための行為なのだと思う。天気が良い日には「今日も平和だ。」と言うことが口癖の彼女は、あるいは本当に天気によって彼女の平和が乱され、それを鎮め平和を取り戻すために行うのかもしれない。そしてセックスがおわると決まって何時間もベッドの中で雨を眺めながらなんでもない話をする。その言葉の一滴一滴には親密な空気が含まれている。話をしながら彼女は眠り、僕はぼんやりと雨音に耳を澄ませる。そうやって雨の日の長い夜をやり過ごす。かたつむりの情愛。


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