第四話
「そういったものの想い、まあ心みたいなものなんだけどさ。想いが強すぎて暴走することがあるんだ。」
淡々と話してゆく。
ものにも心があるなんて信じられないといった様子だ。
「それが今回の事件なのかもしれないね…。」
静かに彼女に聞いた。
「ところで、キミ、名前は?」
「…園田幸です。一年五組の。」
がたっ、とテーブルの揺れる音と共に空谷は立ち上がった。
「うん、幸さんね。よろしく。」
差し出した手を、幸は握った。
この人ならやってくれるかもしれない。
だれにも見えていなかった妖怪が見えているのだから。
「あ、ああー、みっちゃんまだ来てないよね?」
空谷がコトラに聞いた。
来てない、とコトラが返す。
そこへ、扉が開く音がした。
「ごっめん遅れた〜、え?依頼者?めっずらし。」
入ってきたのは女の人だ。
といっても彼女も生徒。
上着のボタンを一つも止めていない、ラフな格好だ。
肩にかかるぐらいの長さの黒髪が印象的だった。
「えー、林蜜って言いまーす。よろしく〜。」
あっさりとした自己紹介に自己紹介で返す。
「純と同じ三年三組でーす。」
と言うのと同じタイミングで、空谷が飛びかかった。
「うわーん、みっちゃん寂しかったよーぅ!」
それを手慣れたようにかわし、蹴りを食らわす。
うげぁっ!と呻き声を上げて床に沈んだ。
コトラもやれやれといった顔で見ていた。
人の名前に問題がありそうですね、だって即席なもごもご。
それが犬クオリティ(そんなクオリティいらない)