第三話
「ごめんごめん、冗談。」
とコトラに謝っているものの、顔は全く反省していない。
「それで、なにか相談があったんでしょ?なんでもいいから言ってよ…って言われてもよくわかんないよね。まず、ここがなにをするところかっていうと…。」
言いながら、小さな瓶のようなものを取り出した。
と言ってもそこまで大きいものではなく、制服の胸ポケットに入りそうな大きさだ。
それをゴムのようなキャップで閉めている。
キュポン、と気持ちのいい音をたててキャップをはずす。
「いい?よく見ててね。コトラ、ハウス!」
瓶の入口をコトラに向け言った。
すると、コトラの体はみるみるうちにその瓶に吸い込まれていった。
「見た?この瓶はね、召喚獣をしまっておく入れ物なんだ。コトラ、アウト!」
しゅるんと、瓶からコトラはでてきた。「そして、ボクら召喚獣は悪さをする妖怪を退治するんだ。」
とコトラが付け加えた。
「さて、キミの依頼はなに?」
彼女はうつむきながら言った。
「わたしの家のまわり…、よく事故が起こるんです。事故が起きる度におかしな夢を見て…、初めて見たときから…その…。」
「妖怪が見えるようになった?」
空谷に言い当てられた。
驚いた様子で続ける。
「はい、でも誰にも相談できなくて…。そんなときにここを見つけたんです。」
「そうかそうか、これまで頑張ったね。よくやったよ。」
にっこりと彼女に笑顔を向けた。
屈託のない笑顔。
それに合わせてコトラも笑う。
なんだか、気持ちが楽になった。
「この手のパターンはよくあるんだ。単刀直入に言うよ、そいつはキミを食おうとしてる。」
えっ、と思うのと同時に、彼女の目が見開かれた。
「食うって、わたしを食べることですか…?」
見えない恐怖に体が震えた。怖い。
足がガクガクしている。
「ああごめん、もう大丈夫だよ、ここに来たんだから。」
彼女の肩にそっと手をやった。
ソファに座らせる。
そのとなりに座った。
「妖怪なんてそっこらじゅうにいるんだ。人の気持ちや、年月の入った物。全てに魂が宿っているんだよ。」
彼女の目を見据えながら言った。
彼女も頷く。
妖怪が見えるようになりたいです。そんな思いを胸に。