ディモーレ 依頼 原因
数字持ち:各国の代表が『場違いな工芸品』と呼んでいる物と同じ物を示す。アリアたちの言い方。
酒場での話も終わり、アリアとルルは魔物の目撃情報が多い山道に向かった。
もちろんダミーの荷物も忘れない。
「んー、できれば今日中に終わらせたいねぇ。何度も山に入るのは疲れるし」
ねー、とルルに同意を求める。
「もぅ兄さんったら・・・でも、そうですね。『数字持ち』が関わっているかもしれないので、早めに解決したいところです」
酒場を出てから、ルルはちょっとマジメだった。
山道をしばらくふらついて
「やっと来たかぁ」
とアリアはつぶやいた。
二人の周囲は何の変化も無い。が、アリアが『来た』と言ったのだから、
もうじき魔物が来るのだろう。とルルは察し、気を引き締める。
アリアはダミーの荷物を草むらに放り投げ、木の影に隠れて尾行の体勢に入った。
荷物を投げた辺りの気配が変わる。
魔物が出す独特の雰囲気。
魔物はアリアたちには目もくれず、荷物を持ち遠ざかっていく。
「さぁ、お前の主の所に案内してくれ。行くよ、ルル」
笑いながら、あくまで陽気に声をかける
「はい、兄さん」
緊張がほぐれていくのを感じながらルルは返事をした。
木々の間を縫うように疾走すること10分弱
魔物の気配が多くなったことを察知し、アリアはストップをかけた。
隠れながら気配を探っていると、ふいに澄んだ音色が聞こえてきた。
それは、とても綺麗で、何かの調べを奏でているみたいに様々な音を出す。
『なんの音だろう』
見当がつかないアリアは首を傾げる。
ルルも気になったのか、こちらを見ている。
「行ってみようか」
二人は音のする方に隠れながら移動した。
近づいていくと、魔物の気配に混ざって、人の気配もすることにアリアは気付いた。
『順当に考えて、この人があやしいよなぁ』
アリアは見当を付け、目視できる位置まで近づき存在を確認する。
その人は、なかなかに美しい女性だった。
長い棒状の何かを口と水平に構え、息を吹きながら指先を動かす。
(現代で言うところの『フルート』だが、この世界には存在し得ないものだった)
『あの楽器は見たこと無いな。数字は・・・見えないか。でも魔物がおとなしくしているのを見れば数字持ちと考えるのが妥当か?』
少しの間、思考にとらわれていたアリアの腕をルルがつついてきた。
どうしたのか、と表情をうかがうに、少しご機嫌斜めっぽい。
彼女に見とれていたと勘違いでもしたのだろう。と見当を付け
「やきもち・・・かな?可愛いなルルは」
笑って頭を撫でてやる。
「ムー・・・兄さんは私を子供扱いしすぎです。もう少ししたら私だって・・・」
抗議してきたルルの頭から手を離さず
「それよりも、あの人を見てどう思う?俺には馬車を襲わせたりしている人には見えないんだが」
話題の女性はとても気持ちよさそうに楽器を奏でている。
「それよりも、ですか・・・。まぁいいです」
あとでゆっくり話しましょうね。と、アリアは聞こえた気がしたが聞き返さない
「私も彼女には悪い印象を受けませんでした」
「だよね?んー、もう少し様子見かなぁ」
ルルは頷き、目を閉じた。
二人は彼女が奏でる心地よい音色に耳を傾ける。
眠気に負けて更新が遅れてしまいました。
話がなかなか進まない・・・