1.無念の医者が異世界に転生
勉強ばかりの人生だった。医療関係者の両親のもとに生まれ、子供の時からプレッシャーとたたかっていた。不安に落ち潰されそうになりながら励んだ大学受験。なんとか合格した時は「まだ家族で居られるんだ」という安堵が一番最初に来た事を覚えている。
世界的に感染が拡大している新型ウイルス。医療従事者として患者に寄り添ってきた。全然生まれつき頭は良くないし、大学でも目立ってよい成績ではなかった僕が、唯一医者として誇れた時間だった。そして、僕は感染した。隔離病棟で自分が少しずつ衰弱していくのがわかる。誰にも会えないんだ。最期くらい誰かに...
瞬きをすると、誰もいなかった隔離部屋に居たはずなのに目の前に赤い髪の男が現れた。人が死にかけているのに、ジャラジャラ飾りがついてる服を着てやがる。
「ねぇ、異世界って興味な~い??」
異世界、流行っているものだとは知っている。しかし、僕はその類の作品は嗜んだことがなかった。
「え?2020年代の男の子ならみんな読んでるでしょ!!??じゃあ説明しないといけないの...???メンドクセー。俺は生命神プーカク。可哀そうな命が完全に消えてしまう前に他の世界、異世界に運ぶことができるんだ。そして君がその可哀そうで消えてしまいそうな命だから、俺が助けに来た。べんふんおおとくん!」
僕の名前だ。リアルな走馬灯なのだろう。
「おおとくんはね、もう死んでしまったんだ。死ぬ前に新型ウイルスに罹って隔離されてから、ずっと自分の人生について考えてたよね?」
たしかに、家から逃げて好きに生きてしまえばよかったと考えていた。病にかかると気も弱くなってしまう。
「それで、異世界への転生を提案しに来たんだ。どうかな?」
どうせ夢だ。なら、うなずいてやろう。
目覚めると中年の男に抱かれていた。体が小さい...というか赤子だ。まさか本当に生まれ変わったのか?
「お前はスカッツ・ケプトだ。」
この男は僕の父親になる人。村で飲食店を経営する一般人だ。僕はこの人の元で20年間育てられた。勉強を急かされたことなんてなかったし、将来は父さんの店を継ぐ夢を持つようになった。この人は僕を普通の男の子として、息子として、スカッツとして育ててくれた。重圧に耐えていた前世に比べて、本当に楽しい異世界ライフだ。
そして、この世界の文化や社会構造もよく知ることが出来た。この世界では占いが重要視されている。政治から農業まで占いは幅広い業種で求められているし、開いた占い屋が繁盛すれば収入も高い。まさに理想の職業だった。まあ、僕には父さんの店もあったし興味がなかったけどね。
占いは万能だ。でも、占いでは太刀打ちできないこともある。大規模な病が流行するようになった。有名な占い師でも次々と罹っていく。そして、僕の住んでいる町にもその病は訪れた。父さんが罹った。腹痛、嘔吐、微熱の症状で苦しそうだった。僕は父さんに何も恩返し出来ない。僕は自分の無力感をよく感じた...
いや、僕は無力じゃない。こんな人間でも前世は医者だ。前世の知識で父さんを救ってやる。
「これ、もしかして必要?」
20年ぶりにプーカクが目の前に現れた。プーカクは前世で使っていた教科書や参考書を僕の部屋に置いて行った。
「死ぬまで見てるからね!」
プーカクはいなくなった。僕は急いで勉強し直した。
読んでくださりありがとうございます。初めて異世界転生ものを書いてみました。よろしければ、この後の話も引き続き読んでいただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願い致します。




